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#6 雨女丨怪談・怖い話

うちの地元っていうか3駅くらい向こうの地域には「雨女」って呼ばれる幽霊?妖怪?みたいなのがいる。

地元でも知ってる人はほとんど見かけない。同年代で生まれも育ちもそこっていう友達に何人にも聞いてみたけど、「何それ」って言われるくらいドマイナーで、噂にも殆どなってない噂。

ネットで調べたけど、私が知ってる奴じゃない妖怪のwikiくらいしか出てこなかった。

私自身も、その地域にちょっとだけ住んでたことがある父親から何かの弾みで「そういえば〜」みたいな感じで聞かされたから詳しいことはわかんないけど、雨女は雨の日じゃなくて晴れてる日の、人が多いところに出てくるらしい。

父親から聞いた時はこれくらいしか教えてくれなくて(というか父親自体この手の話題に興味なくて知らなかった)、しばらくの間ずっとモヤモヤしてた。

私としてはオカルト的な話題が好きなんで、真相というかそれの正体が知りたかった。

母親にはダメ元で聞いてみたけど、母親は別の県からこっちにきた人な上、その地域は百貨店とかデパート目当てだけでいくくらいしか用がなくてそこに行くことも頻繁ではなかったから「えーお母さんも気になる〜」みたいな参考にならない返事しかもらえなかった。(ちなみに母もオカルト好き)

それ以上の収穫がないってわかると熱が冷めるのは早いもので、もういいやーくらいに興味も失せていた。

ただ、その話を聞いて暫く経ったくらいに身内がやってる飲食店でタダ酒飲みに行った時、店にいた40代と20後半?くらいの男の人二人組と酒が入ったテンションで喋るようになって、その中で怖い話的な流れになって雨女の話題が出てきた。

二人は小さめの建築会社の上司部下らしい。
私は、上司の40代男性の方に「この県ってあんま怖い話聞かないですけどあるんですかねー」って言ったら「ここじゃないんやけど、俺らの本社ある〇〇(例の地域)周辺に出るらしいんやわー」と言われた。

当然食いついて、何ですかそれ!って訊いたら、「雨女っていう幽霊なんやけどー」と父親から聞いた時よりももっと詳しい雨女の話をしてくれた。

雨女は晴れた日の人が多い場所に出る、ってところは父親から聞いた通りだった。

晴れてるのに赤っぽいオレンジの傘差してる人が見えたら、それが雨女。
鮮やかで赤っぽいオレンジの傘で顔は隠れてて見えない。

服は知らんけど、黒いパンプス?を履いてるらしい。
あと髪が長いとかなんとか。

それ聞いた時は「白とかじゃないんだ」みたいな感想を抱いた。
幽霊っていえば白い服とか白いアイテム持ってるっていう勝手なイメージあったから。
髪長いっていうのはなんかそれっぽかったけど。

そっから雨女を見たらどうなる、会ったらどうなるとか聞いてみたけど上司さんは「それは知らんなー」って返すだけだった。なんかガッカリした。

でも上司さんの横で相槌打ってた部下の人が、「見たら運気が下がるって聞いたことある」って言った。

へー何でですかね?ってその部下さんに聞き返すと「晴れてるのに傘差してるのが縁起悪いとか何とか」みたいな微妙な返答。
そこは知らんのかいって思った。

「そんなんいったら日傘とか差してらんないしキリないですよ〜」とか返してたら「ほんとやん!」って笑ってた。

いやでも日傘は日除けだから〜、みたいな言い訳もしてたけど。

これが4ヶ月以上前の話。

で、つい最近なんだけど、所用で雨女の出るって言われてた地域に行く用事があった。

その地域は県庁所在地もあって観光客も多いから、イベントごとがされる時も大体その地域が主体になって行われる。

その日はイベントが重なってて、環境系のイベントと、フリマ系のイベント、もう一つ出店とかがたくさん出てるイベントがその地域で行われてた。

私はそのうち環境系イベントの方に用事があって、その用事が終わってからバス待つついでにふらっとフリマイベントやってるとこに寄った。

でも入場制限というかチケットもらって、ご時世もあって検温チェックとかも通ってからじゃないとその会場には入れなかったから、一気に面倒になった。

だから外側からそのイベントチラ見した後、バス停の座るところでゲームでもしようと思って向かった。

イベントが重なって開催されてるせいか、人がめちゃくちゃ多い。
おまけに快晴だから少し汗ばんだ。

あっつ〜と思いながらバス停に向かって歩いてると、前方の道、そんなに離れてない距離にそこそこの人数が歩いていた。

多分イベントに向かう途中か、帰ってる途中の人たち。

その中に傘を差してる人がいた。
赤っぽいオレンジ色で傘の先端?が黒い。

私は最初、前お酒の場で聞いた雨女の話をすっかり忘れてたから「メッチャどぎつい色の日傘差してる人がいる」としか思わなかった。
でも次第になんか変だなと思い始めた。

日傘って普通裏側の生地ががUVカットかなんかで黒いものが多いし、雨の日に使う傘よりも小ぶりなはずだった。

でも人混みの中に見える傘は、明らかにUVカットの加工がされてなくて太陽の光がガッツリ透けてた。しかも日傘よりもでかい。

雨傘やんあれ、って思った瞬間、鳥肌たった。飲み屋で聞いた雨女の特徴を思い出したから。マジで心臓キュッってなった。

ただ、生まれてこの方はっきり幽霊なんて見えたことないから、「まだ生きてるちょっとおかしい人間説」を信じてた。

でも周りの人はあんな狭い道で傘広げられてるのに全然避けるそぶりも、その明らかに異常な人を一瞥するそぶりもなくて、もしかして見えてるの私だけなんじゃないかとも思い始めていた。

どうしようとは思いつつも、でもあんなはっきり見えるのに人間じゃないなんてことはないやろ、とか思ってノロノロ歩いてたら、周りに歩いてる人たちがどんどん歩いて捌けて行って、人混みにいたはずの傘さしたその人の全身が見えるようになった。

全身といっても、頭と背中の上半分は傘で隠れてけど。

ソレとはそんなに距離が離れてなかったけど、後ろ向いてるってところで安心したのか、なんか逆に冷静になってまじまじとその後ろ姿見てた。

黒いパンプスを履いてる。踵が低いやつでちょっとボロかった。

服はスカートなんかワンピなんかわかんないけど、薄そうな白に近いクリーム色の生地だった。

あと足は色白。血管が透けて見えた。

髪は尻が腰ぐらい。手入れせずに延びっぱなしみたい感じで、毛先がスカスカでチリチリしてたのがめちゃくちゃ印象に残ってる。

顔は見えなかったけど、普通に生きてる人間にしか見えなかった。
ただ、歩いてたら多少傘が上下するはずなのに、全然ブレてなくて気持ち悪かった。

距離縮まらないようにゆっくり歩いて、一分くらいじっと見てたと思う。

そしたら、そいつが急に足を止めてこっちに振り返ろうとした。慌てて手に持ってたスマホの画面に目を向けて「見てないです」風を装った。

地図見てるふりしながらホーム画面スワイプしててだけど、誰かが近づいてくる気配はない。

チラッとスマホから顔を上げると、もう前方にはそのオレンジの雨傘の女の人は居なくなっていた。

信号はそんな近くないから向こうの道路に渡るのは不可能だし、そんな一瞬で目の前からいなくなることってあんのかな?って思うと、さっきまであんなに冷静に観察してたのに我に返ってゾッとした。

そのあと不運が続いた…なんてことはない。
ただ、未だに不気味で、あの日自分が見たのは足がめちゃくちゃ早い様子のおかしい人なのか、噂の雨女だったのかはわからない。

皆さんの中で雨女らしきものを見たことある、って方がいたら情報が欲しいです。
やっぱりアレがなんなのか気になるんで…


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