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20210626 曇天は死に至る病

 曇天は暁の喧騒を掻き消し、私の線香花火はスケートボードに蹂躙された。かつて水煙草であった記憶は瞬く間に火災報知機と裁判の渦中に突き落とし、名も無き誰かは焼けつくようなミントを狂おしいと嘯く。

 然し、テーブル上の鮮やかな殺人と菜食主義者は、どうしても紫の円卓を回すことがない。灰燼と帰したレタス、トマトの血小板。円卓から周回遅れのジョッキは『泡沫の日々』すら忘れて、微笑__片隅に置き忘れられたハウスワインから香る、紅色の家庭崩壊と孤独の兆しを、幽かなグラスの罅から逃れることができなかった十代を、二日酔いのスクリーンは拭えぬモノクロームを伴って映しだす。

――燃えあがる二輪に挟まる猟犬の痕、新緑踏み荒らした猫の無邪気――

 横たわる老爺とセブンスター 灰色の日陰、疲れ切った紫煙、死の足音、瞼の裏に映る世界が奇麗だと8年前に言わなければ、わたしかあなたの青ざめたシーツは汚れることはなかったのにね、心の格子から視た世界はいつも蒼雲……。

 そう、嬉々とする家族連れの幼女が抱く時限爆弾に、私はスヌーピーの睡魔を捧げたい!彼らはすべての夏を黙認して、その熱病に吊られた腐敗すら、希望に充ちたゲームの中盤であるからと笑う。その笑み、空白の空いた日傘の茜色。これが始まりなら、彼らはきっと……花瓶と悲鳴、調剤並ぶ薬局に問われた「あなたのしにむかうべきけんこう」

 絶望に重ねられた4のミルフィーユ。こうして、溶けゆくアイスキャンディたちは、いつかの夢に現れた天使たちの片腕を思いだす度に、あの黒い太陽への憎しみを再燃させる。バスケットボールと首を誤る意味、蟲毒を求める長蛇の列、あまりにも機械的な審判が掻き鳴らす静かな警告に私の瞳は真っ赤に充血した。

 最期に立っていたのは、私の翳すバタフライナイフの揺らめきだったことを、「わたし」は今日も忘れてしまうから――

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