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誰もいない水彩画

桜花のような心臓爆ぜて
静脈/動脈が織りなす瞬冷の花火は
哀画を柔らかに染めてゆく
彼方の狂った柱時計
歪にひび割れた季節
うしろのしょうめんと匕首
障子濡るる渇ききった春雨
唯、雨にうたれた私には涙すらなく
――色__イロに拐かされた景色は
藍毒と狂った夢を火薬樽に巻きつけて
翠雨に水没せし校庭と遺失物
隠匿されし背景は淡い血痕滲ませて、混迷__
「身を投げた靴音」
屋上と傍観者の飛行機雲
砕け散った白墨の色彩褪せて……
奇数の熱病の始まりは
全ての終末へと導く手がかりだと云うのに
幽かに遊泳する霧は
暁の戦慄と翠緑を抱擁し
彼女らの罪と刃先を掻き消した
拭い去れぬ血と記憶
喪われる自己同一性
なくしてしまった『審判』の最終頁
暁が訪れた時、此処には誰が――

切り裂かれし密は夜の罪を暴く花園と暁の夢中夢に水死体を描く水彩画に誰が潤いを渇望するのか?

誰もいないよ、この水彩画には
だから、そっと蒼き唸りをあげて、世界――

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