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【投稿その1 昔のエッセイを放出します  オブさん文芸部エッセイ⑨ 英語で苦しみ、方言調査で汗(上)】

わたしが何とかN大学文理学部に潜り込んでからのお話です。

 アルバイトと音楽に明け暮れていた大学生活でしたが、いくらなんでもそればかりやっていたわけではありません。当然ながら、さまざまな講義を受けて必要な単位を取らなければ、卒業することはできません。大学生なのですから勉強するのはあったり前なことなのですが、何しろ学費も生活費もアパートの家賃もついでに飲み代も楽器代も全部自分で稼がなければならない「苦学生」だったわたしは、ともすると疲労で、特に朝一番の授業などにはなかなか出られないこともありました。
 問題はそれだけではありません。以前書いたとおり、大学受験では英語を捨てて、国語と政治経済に絞って勉強し、うまいこと合格することができましたが、そのツケは入学後に何倍にもなって返ってきたのです。わたしの所属学科は国文学科だったので、授業は全部国語とまでは言わないけれど、まあ大半が国語なのだろう、と勝手に思っていました。ところが、大学の一〜二年生では「一般教養」を学ばなければなりません。そこでは、国語だけでなく、社会科や体育、場合によっては理科や数学なども受講することになります。まあ、それはいいのですが、問題なのは、英語でした。
 日本の大学はどこも、第一外国語と第二外国語を履修しなければなりません。で、第一外国語はほとんどの大学が英語なわけです。それも、N大文系学科の学生は英語Ⅰ〜Ⅴを必ず修得しなければなりませんでした。つまり、英語の単位を落とすと、いつまでたっても卒業できないというわけです。
 ところが、何しろわたしは英語が超苦手。忘れもしない高校三年のとき、英語の授業で指名されて教科書の読みをやらされたのですが、「care」を「チアー」と読んでしまい、クラス中の笑いものになってしまったこともあります(もちろん「ケアー」が正解ですね)。あきれた英語の先生はそれ以来、わたしを一切指名しなくなってしまいました(列ごとに指名するのですが、わたしの前まで来ると、その次はわたしの後ろに跳ぶのです。わたしはそんな仕打ちを受けながら、「こりゃ楽だ」と思っていました。わははは)。
 そんなザマですから、大学の英語など、もちろんハナから全然わかりません。一年生の頃から、英語とついでに第二外国語のフランス語は全く単位を取れませんでした。まあ、フランス語は修得できなくても卒業には関係ないのでよいのですが(そんなことを思っているから単位が取れない)、英語は落としっぱなしにするわけにはいきません。(つづく)

【豊栄高校文芸同好会「凪」第六集(2005年3月発行)顧問エッセイより】


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