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「天才激突! 黒澤明VS勝新太郎」 (アナザーストーリーズ)

1980年に公開された日本映画「影武者」。主演を降板した勝新太郎と黒澤明監督の間に何があったのか、というドキュメンタリー。

当時幼かった私はこの出来事に興味はなかった。が、これを見て驚いたのは外国語版プロデューサーにコッポラとルーカスの名があったこと!黒沢監督の名声もあり、世界的にもさぞかし期待された大作だったのだろう。

そんな名誉ある大作の主演。まさに千載一遇の機会にもかかわらず、なぜ勝新は降りたのか。正確には降ろされたのだが、本人は降ろされるとは思っていなかったんだろうなと推測される。

「両雄並び立たず」とは良く言ったものだ。黒沢監督も勝新も、共に良い作品を作りたい熱意は同じだった。が、性格も立場も違う上に、アプローチがそれぞれ独特だから、折り合う事ができなかった。せめて両者を上手く御せる中間者がいてくれたら、この映画は更に伝説的な作品になっただろうと思わずにはいられない。

勝新といえば「座頭市」など素晴らしい作品もあるのだが、下着にコカインのイメージが強烈で、晩年は不遇な印象しかない。意地悪な見方だが、おとなしく「影武者」に主演していれば、活躍の場も海外まで広がり、もう少し長生きできたのではないだろうか。

いや、我を張って降板させられたからこそ、勝新なのだ。そんな大それたエピソードを持つ俳優も、ある意味伝説なのだから。

それくらい自我をアピールし、失敗しても前に進んで生きていく。それくらいの図太さがあってこそ、真のスターといえるのかもしれない。勝新にはそれがあった。失敗も醜聞も自分のアクセサリーにする逞しさがあった。

そんな勝新をみていると、やはり彼を思わずにはいられない。恵まれた素質と華、努力する才能でいろんな顔を見せてくれていたかのひと。そこに泥臭い執念と自我さえあれば、長生きして大輪の花が咲いていたかもしれない。本当に残念である。

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