見出し画像

青海ひな乃と「原色」

 デイブ・フィローニという映画監督をご存じでしょうか?
 「スターウォーズ」ファンの方なら、「クローンウォーズ」でお馴染みの方ですよね。 
 彼は「スターウォーズ」の生みの親であるジョージ・ルーカスの秘蔵っ子としてファンの間では有名です。
 何故でしょう?
 ルーカスに会う若いクリエイターたちが、彼に会うとまず何をするかというと、「スターウォーズ」や彼の作品にどれだけ影響を受けたかという愛を語りだすそうです。しかし、デイブ・フィローニだけは黙ってルーカスの話を聞いたそうです。彼を気に入ったルーカスは、「スターウォーズ」のアイディアの元になった昔の戦争映画や海賊映画を持ってきて、「これのこういうところは、こうだから、これがこうなってるのがスターウォーズなんだ」と解説していったそうです。
 デイブ・フィローニは、ルーカスの教えを忠実に守り、クローンウォーズを素晴らしい作品にしていきました。エピソード2とエピソード3の間にそんなことがあったんかい!という世界を描きました。
 ちなみに、彼が後に作を手掛けた「マンダロリアン」では、ルーカスが頻繁に現場に来ていたそうです。そして、彼が手掛けた「マンダロリアン」の最初に出る「ルーカスフィルム」のロゴの色は、エピソード7~9で使うことが出来なかったルーカス作品と同じ色を使います。
 どっちが正当な「スターウォーズ」か教えてやるよ、という気概を感じます。
  
 色と言えば、先日、幻冬舎編集者の箕輪厚介さんの「怪獣人間の手懐け方」という本を読んでいて、印象的な表現がありました。

 見城さんがよく使う表現だと、オリジナリティのある作家は「原色」を作ることができる人。赤とか黒とか緑とか原色を生み出す。赤と白を混ぜてピンクにするような、何種類かの色を出すのではなく、混じりっけのない「ホリエモン色」、「イーロン色」を作ってしまう。
 原色を作り出せる怪獣人間たちは、圧倒的に大きな仕事を生み出す。
 まったく新しい製品、サービス、価値観はそこから生みだされる。
 頑張って努力して、それなりの成果を出す人もいるものの、到達した地点は、あくまでも過去からの延長線上にある。どんな大きな会社でも創業者のレールを延ばしているだけのサラリーマン社長は怪獣人間ではない。
 怪獣人間は誰も見たことのない「原色」を出すことが出来る人だ。

箕輪厚介 著「怪獣人間の手懐け方」より

 見城さんというのは、幻冬舎の社長の見城徹さんですね。
 箕輪さんは、与沢翼、ホリエモン、ガーシーと飛んでもない人たちと本を作っていることに目が行きがちですが、宇野常寛さんの「遅いインターネット」や前田裕二さんの「メモの魔力」を手掛けたのも彼です。毀誉褒貶のある方ですが、才能を観察して熱狂できる感覚は、本当に素晴らしいと思います。

 さて、この二つのエピソードから、あるメンバーのことを僕は連想しました。
 それはSKE48の9期生、青海ひな乃です。

 彼女が出てきた時、僕は何か違和感を抱きました。
 まず、SKE48メンバーの中でも屈指の明るさを持っていること。しかも、「ちびまる子ちゃん」の山田のような中身のない空虚な明るさではなく、何か心に芯がある上での明るさです。
 それは、彼女だけのものであり、強みだと僕は思います。
 アイドルグループに加入してくるメンバーは後の気になればなるほど、不利になります。名前は書きませんが、「ああ、この子は1期生のあの子と3期生のあの子と要素が凄く似ているせいで比較されてしまうなあ」とか「ああ、この子はSKE48愛が凄いのは嬉しいんだけど、良くも悪くも安心感があるなあ」という気持ちになることがありました。
 ちなみに上記のメンバーたちは、キャリアを積むに連れて、この状態から脱して自分だけの個性を手にしていることも追記しておきます。

 話を青海さんに戻しましょう。
 先ほど挙げた彼女のSKE48らしくなさというぼんやりとしたことについて、彼女自身もインタビューで語っています。

 ううむ、この記事を読んでいると、彼女の「SKE48に染まり切っていない世代」という言葉には、新しい選択肢の可能性を僕は感じます。それはこれまでのSKE48を否定する意味で肯定するのではなく、違う道筋で新しい目的地まで連れて行ってくれそうな気がしたからです。
 ちなみに、青海さんとだーすーの関係は、何かフィローニとルーカスのようですね。そういえば、青海さんの「手つな」センター初日には、松井珠理奈さんが来て直接指導したことが彼女の公式ブログでも書かれていましたね。こうみていくと、新しい価値観を持ったままSKE48の英才教育を受けてきた存在だということが分かります。
 また、良い意味で周りの空気に忖度しないところが彼女にはあると思います。
 それはSKE48のチームS新公演のドキュメンタリーでの彼女の姿勢は、先輩後輩、ポジションの前後ろなんて関係なく、自分の求めるチーム像の為に意見を出します。それは過去を知らなくても、きちんと自分の価値観とSKE48が持つ全力のがむしゃらさがリンクしているのではと僕は思います。

 どうしても優等生が多くなっている中で、自分の「原色」を持っている人はやはり魅力的だな、と思います。
 以前、化け物が観たくて48を見ているということを書きましたが、そういう化け物的な凄さではなく、この人だけが持つ芯の強さというのが青海さんの魅力だと思います。それは僕の推しメンだった五十嵐早香さんの新しさとは違うもので、才能と人間性のバランスがバグってしまっているというのではなく( 褒めています。凡人では無理です )、人間性もちゃんとしている上に、スターとしての華もきちんとあります。
 
 そんな彼女だからこそ、今期待していることがあります。
 「スターウォーズ」のシークエル(エピソード7~9)は、エピソード4~6の要素の繰り返し的な要素を入れてしまったせいで、余計に粗が目立ちました( 勿論、良い点もあるんですよ、エピソード7のラストのジェダイマーチとかいまだに何回も聴きます )。
 青海さんが超世代の仲間たちと共に、ナゴヤドームを目指すとしたら、彼女たちの道筋で、今だからこそのセトリで、新しいSKE48の歴史を作って欲しいなと思っています。そういう意味では新公演が揃ったのは、追い風になるかも知れません。まだ先輩たちが足を踏み入れていない会場にどんどん足跡を付けていってほしいです。そして、最後にナゴヤドームでオールドファンの思い出と真っ向からぶつかって欲しいな、と思います。
 そして、僕からの提案ですが、彼女は兼任を解禁しても良いのではと思っています。
 皆さんは金魚鉢理論をご存じでしょうか?
 金魚を飼っている水槽の半分ぐらいのところに、透明の板を入れます。次第に金魚は半分の範囲で泳ぐことに慣れていきます。ある日、透明の板をとります。すると、金魚は半分の範囲でしか泳がなくなってしまうそうです。僕らが生きている社会には、透明の板があることがあります( あるいは、そう思い込んでいることがあります )。
 青海さんはそういう板を壊せる人だと思います。
 そして、水槽が大きければ大きいほど、輝くタイプで、それをチームやSKEに持って帰れる人だと思っています。
 チームS、シングル選抜、それだけではなくどんどん外で勝負するために、関連するグループとの兼任は、僕はありだと思います。松井玲奈さんの乃木坂兼任でファンが坂道を転がって行ったこともあったかも知れません。しかし、その反面、SKE48にも坂道のファンもSKE48を覗いていたはずだと僕は思います。なんで固定客にならなくて( 関係人口的なポジションでも可 )、坂道に戻っていったかの方が考えるべきだと当時思っていました。
 個人的には日向坂46にいる青海さんとか、観てみたいな、と思います。グループのコンセプトの「ハッピーオーラ」と彼女の持つ多幸感も合っていると思います。番組MCはオードリーなんで、若林さんに上手くいじってもらったら、凄くはねるのでは、と僕は思っています。
 あと、彼女が歌う「僕なんか」とか超聴きたいですけどね。

 色々と妄想が広がってしまいましたが、青海ひな乃という「原色」がオレンジのバスのボディに新しい差し色を生んでくれるのではないか、と期待しています。時々バスの速度変わっても、きっとバスの中の温度は変わらずに走っているはずですから。

こんな大変なご時世なので、無理をなさらずに、何か発見や心を動かしたものがあった時、良ければサポートをお願いします。励みになります。