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おすすめの本「ずぶ濡れSKE48 TeamKⅡ」

はじめに


 後から振り返ると、あそこが人生の転機だったな、ということってあるでしょうか?
 進学や転職、結婚やゴジラの襲撃など、人によって様々だと思いますが、アイドルの場合は何が考えられるでしょう?
 日々の活動の中で気づけば、グループやチームの中での自分の立ち位置が定まってきて、先輩と後輩の間での固まりや話しやすい人、話しにくい人の差も出来てくるでしょう。
 しかし、そんな静かに自分の物語の流れを停滞させるものを壊すイベントがあります。
 それが新公演です。

 2023年10月23日に発売された「ずぶ濡れSKE48 TeamKⅡ」は、写真集としても素敵なんですが、実は新公演を巡る読み物としても素晴らしくてですね。
 一人一人のメンバーの証言や対談集から見えてきたのは、新公演という大きな課題にチーム全員で立ち向かう中で、アイドルとしての転機を迎えたメンバーが沢山いると思います。

水野愛理の再評価

 

 まず、読み終わって感じたのが、水野愛理というアイドルの潜在的な実力です。
 アイドルファンと音楽家の人って、評価軸が違うと思うんですよね。やっぱり常に音楽と向き合ってらっしゃるクリエイターの方が聴いた時に、惹かれる声がある。この本の中で一番興味深かったのがNight Tempoさんと北野瑠華さんと水野愛理さんとの対談です。
 二人の声についてのNight Tempoさんの評価だけでも勉強になるんですが、水野愛理さんの「歌手として歌う」ということについての部分が凄くてですね。誰でも歌えるカラオケ的な曲や歌い方は、アニソンなどでは成立するけれど、歌手として歌う高難度の歌い方が出来る人である、というところは、長いこと感じていたアイドルソングやアニメソングの「うまい」への違和感が言語化されて、「そういうことだったのか!」と目から鱗が落ちました。
 さて、彼女の凄さは、プロデューサーであるNight Tempoさんだけでなく、周りのメンバーの証言からも分かります。
 チームKⅡで公演のリハーサルをしている際に、彼女がこぼした言葉がメンバーたちが本音を出していくきっかけを作ったのではないか、と僕は思っています。

「私はみんながどんな思いでやろうとしているのかわからないから、知りたい。愛理みたいに、辞めようと思ってたけど、新公演が発表されたからやってる人もいるはず」

 この言葉は非常に重いものがあります。この言葉から中野愛理さんも内に秘めていた熱い思いを語り始めます。チームにはそのチームの空気を変えるゲームチェンジャーが必要だと僕は思っています。たとえば、チームSでは、青海ひな乃さんがそういう存在だったと思います。今、水野愛理というアイドルの何回目かのチャンスがまた来ていると僕は思っています。紆余曲折がありながらも成長していく彼女は「スラムダンク」の桜木花道のように僕らに未来を期待させます。ドラフト2期という決して若い期ではないのに、様々な未来を想像させるのは、やはり、彼女のアイドルとしての潜在能力の高さからだと思います。
 

負けず嫌いを放出していく

 
 さて、先輩と後輩たちの風通しがよくなったことで、チームに活性化が生まれていきますが、これまでは「私なんかが…」と少し遠慮していた後輩たちがこれからどんどん前に出ていくのも楽しみです。
 何人か挙げていくと、Night Tempoさんからも歌を評価された伊藤実希さんは、MCに関してもこれから本領を発揮していくのではないでしょうか。
 そして、ポジションが空いたら自分が前に行きたいと宣言した入内嶋涼さん。彼女もまだまだ前に出るべき才能だと思っています。個人的には、是非、文章を沢山書いてほしい方です。彼女の書く文章が好きな人間としての願望ですが。また年齢が同じ青木さんが選抜に入っていることに関する対談でのコメントも良くて、そうか、意識する部分があるよね、と発見がありました。
 最後に歌詞と心情がレッスンから初日へと経過していくうちにリンクし、負けず嫌いを前面に出していくと宣言した中野愛理さん。彼女の逆襲がこれからの公演や選抜争い、外仕事でも見られるようになると、またSKE48の違う色が生まれるかも知れません。

あの時の優しさを誰かに


 この本を読んでいて感じるのは、公演という大きな課題の前に心が揺らいだ時に支えてくれたり、より決意を強くしてくれる6期生たちの存在です。たとえば、伊藤実希さんと青木詩織さんの関係。入内嶋涼さんと北野瑠華さんの関係。それぞれ後輩たちに良い影響を与えていますね。特に北野さんの行動は、なかなか出来るものではありません。
 彼女の人間性の素晴らしさを感じます。
 そして、ふと6期生たちが研究生だった頃に居た先輩たちのことも思い出しました。完全に想像の域を出ませんが、彼女たちが「もうだめだ」と思った時に支えてくれた言葉や行動があったのかも知れませんね。それが今度は彼女たちによって、次の世代に優しさを渡していくというのは、キャリアの長いグループだからこそだと思います。ただ、キャリアが長くなればなるほど、同期や先輩がいなくなっていきます。是非、スタッフの方々はキャリアが長いメンバーのモチベーション維持もこまめにしてほしいなと読みながら思いました。だって、おしりんとか辞めようと思ってたわけでしょう?
 新公演があって良かった。そして、新公演を披露する場である常設の劇場があって良かったと思います。
 

青木莉華の覚悟


 10期生で選抜メンバーである青木莉華さんのシングル曲の振り入れについての話も興味深くてですね。江籠さんと日高さんが卒業するとチームKⅡの選抜メンバーは彼女とあやめろさんだけになります。自分がしっかりしないとリーダーであるあやめろさんの負担が増えてしまう。
 彼女は新公演のユニットである「空の青さに理由は無い」でも活躍しています。次は楽器が出来るメンバーでバンドを組みたいと語っていましたね。STU48では「青い向日葵」というバンドのユニットがありました。このユニットはバンドで単独ライブを行うまで活動の幅を広げました。
 ぜひ、青木さんたちのバンドも単独でやって欲しいですし、彼女たちが演奏する「青春各駅停車」も聴いてみたいなと青木さんのページを読みながら感じました。

 

「クセ」や「崩れ」の先に進化がある


 さて、今回の新公演、ダンスメンバーたちはどう感じているのでしょう?
 先ほど挙げた伊藤さんもダンスメンバーだと思っているんですが、さっき挙げたので違う方をピックアップしたいと思います。
 まずは岡本彩夏さん。
 冷静にパフォーマンスが一番揃っていたのは初日だったと分析した上で、みんながアレンジを加えていくことで、ユニットも良くなっていることを語っています。ちなみに彼女の初日のパフォーマンスの表現は、その通りだと感じたので、あーーや推しではない方も必読です。
 次は西井美桜さんです。
 「特技 画伯」というそれは、技ではなく通称とかじゃないのか、というプロフィールのページと完成した作品の凄さに度肝を抜かれましたが、KⅡだけでなくSKE48が誇るダンスメンバーの一人だと僕は思っています。振り入れで苦しんだことを明かしつつ、本番一週間前のギリギリで感情を中心にした表現でステージに立つイメージが持てた、という話も新しい表現方法をラーニングするための苦しみを感じました。公演では揃えるところは揃えて崩すところは崩すことで個性を出していくというのは、先ほどのあーーやのインタビューで言うところの「クセ」の部分なのかな、と想像しました。
 また、荒井優希さんのインタビューの中のCRE8BOYさんの「SKE48は頑張ることがクセになってしまっている」という言葉も凄く印象的です。全力のがむしゃらのパフォーマンスが全ての楽曲に有効ではなく、新しい表現方法を獲得する必要がある。それが先ほど西井さんのインタビューに出てきた「感情を中心にした表現」なのかな、と思います。良い意味で新しいSKE48を見せてくれる公演であり、まだまだ成長途中の公演でもあることがダンスメンバー二人のインタビューからは分かります。
 舞台やミュージカルでも初日とツアー最終日では、変化を感じることがありますよね。まさにこの「時間がない」公演でもそれが始まっているのではないかと思います。初日から観ていない人も久しぶりに観ると新たな発見があるかも知れません。

写真集としても素晴らしい


 さて、ここまでは文章としての読みどころを書いてきましたが、写真集としてはどうなんだ、というところもありますよね。
 確かに、「は、果たして、こ、これで汗が出まくるのか…」というものもあるのはあるんですが、メンバーたちの頑張っている姿が良いですね。
 それでは、僕の好きなページを順位別に発表したいと思います。
 


第3位 102ページ( 水野愛理 )

 彼女の表情の豊かさが分かる1ページ。
 言葉がつかえないグラビアでも、何故かセリフが浮かんできそうな表情が良いですね。そう考えると、彼女はグラビアメンバーなのでは、と思いました。水着云々ではなく表情だけで読者に想像させたり伝えたりするのが得意そうでは、という意味です。

第2位 61ページ( 川嶋美晴 )

 麻雀知識が全くない僕ですが、このみはるんの見上げるような視線には、「この人、こんな顔もあるのか!」という新鮮な驚きがありました。おとなりの60ページと迷いましたが、こちらの方が肌の白さが際立っている感じがしたので。

第1位 55ページ(岡本彩夏)


 初めてこのページをみた時、「身体のラインの美しさ」という言葉は、実はこういうポーズの時に使うのでは、と思いました。そして、思わずプロフィールの身長のページに戻りました。実際の身長以上に長身に見えました。「えっ、あーーやは水着のページじゃないのか?本当にそれでいいのか?自分に正直になれ。痛みを知るただ一人であれ」と思ったあなた。確かに水着のページも綺麗ですけど、僕は新鮮な発見があったこちらのページを1位にびました。

終わりに


 色々と書いてきましたが、最近、SKE48を好きになった人には勿論、見るチームは推しがいるチームだけ、という方や楽曲やパフォーマンス好きの方にも読んで欲しい1冊になっていると思います。
 ぜひぜひ、チェックしてみてください。

 
 

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