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20年代の「推し事」

 2020年代も2年目がもうすぐ終わろうとしています。
 僕が応援しているSKE48はセンターも新しくなり、リブランディングの為に劇場公演の新しい公演曲も準備され、新しいスタートを切り始めています。
 そんな中で、ふとアイドルを応援する「推し事」も新しくならないかな、と考えました。

 新しい「推し事」のことをここでは、「推し事Ver3.0」と仮称してみたいと思います。
 じゃあ、「Ver3.0」まではどういう筋道なのかを先に書いてみます。
 

「Ver1.0」2010年代まで

 まず、昭和から10年代までのアイドルに関しては、基本的には1方向的だったと思います。テレビやコンサートでアイドル楽曲を楽しむ。バラエティ番組に出演しているのをチェックする。ラジオ番組に投稿する、といったものだったのではと思います。
 そして、90年代後半から00年代前半におけるネットの復旧により、アイドルにファンの方で徐々に評価していったり、文脈を載せて行くということが加速していきます。
 僕個人としては、まだアイドルを知らない頃ですが、ハロプロファンの方々の影響が非常に強いのではと思っております。
 応援というと、文字通りコンサートで声援を送ったり、グッズを買ったりとかでしょうか。

「Ver2.0」2010年代

 そして、2010年代からはアイドルとファンとの間の双方向性が加速していきます。
 48グループの台頭により、握手会という以前からイベントとしてはあったものの、一気に市民権を得たのがこの辺りではないかと思います。
 また、「総選挙」というイベントも広まり、メンバーにランク付けするという残酷さと未来を自分たちの1票で決められるというゲーム性は、かなりセンセーショナルでした。
 推し事として、コンサートで楽しむだけでなく、自分も関わりを持てる。
 そして、SNSを始めとしたツールの発達で、アイドルの自己プロデュース力も求められるようになっていきました。
 情報のスピードは一気に加速し、毎日のように新しい情報が入ってきて、リアリティショーのように一人のアイドルの成長物語に「課金」しながら楽しめるようになりました。
 僕個人としては、10年代に48グループにハマり、総選挙で推しがランクインして仕事が増えていく喜びを感じたり、握手会でアイドルの活動が「自分事」の一部に変わっていく体験をしました。
 多くの場合が「コト消費」が中心だったのではと思います。
 運営が用意したゲームの中で、自分のお金をベットする。
 それは売り上げも非常に重要で、グループとしてはCDの売り上げ枚数、メンバー個人としては、総選挙の順位・握手券の売り上げ枚数といった数字が物を言うようになりました。
 勿論、総選挙は運営になかなかチャンスが恵まれないメンバーのジャンプアップにもなりましたし、ファンの数を増やして行ったメンバーがグループ内での選抜に選ばれるようになっていきます。
 この10年で応援の選択肢は増えていきました。

「Ver3.0」を考える

 10年代末から世界中に蔓延した新型コロナウイルスの影響で、アイドル業界における「コト消費」はストップします。
 その間に無観客ライブやオンラインサイン会といった新たな試みも沢山されました。
 しかし、無観客ライブだからこそのコンサート演出でいえば、やはり坂道グループのコンサートは工夫が凝らされていましたし、オンラインサイン会というサインを場所代のコストがあまり掛からないアイドルも暴言などを食らう危険がないサービスも素晴らしいと思いました。
 その反面、やはり物足りなさもあります。
 2021年10月17日現在、世界は少しずつ日常生活に戻り始めています。
 しかし、この選択肢が一旦減った状態こそが、新しい選択肢を増やしたり、今ある選択肢を更に深めることが出来ないか、とも思いました。
 その選択肢とは何か?
 それはファンによる「仕事創り」ではないかと思います。

ファンが創ることができるもの

 今、このnoteを読んでいる方がどれぐらいの年代の方か分かりませんが、例えば、社会人の方なら自分の仕事と推しの接続点が何かないだろうか、と考えたことは無いでしょうか。
 或いは、自分の住んでいる町と推しの接続点は何だろうか、と考えたことは無いでしょうか。
「いや、アイドルの可愛い姿を観られれば良いのよ、接触できれば良いのよ」という方からしたら、今から書く内容はとても面倒で現実離れしてきこえるかも知れませんが、良かったらお付き合いください。

 10年代に加速したアイドルの将来へファンが介入できる割合は先ほども書いた通り、20年代の始まりに減速しました。
 じゃあ、違う文脈でアイドルを推せないか。
 たとえば、総選挙、握手、以外にもアイドルが活躍できることとして、「外仕事」があります。
 「外仕事」というとテレビ出演やCM出演がパッと思い浮かびますが、それはなかなかファン単独の力では難しいです。時々、関連するスマホゲームで出演権をかけたイベントがあったりはしますが、これはあくまでも運営側が用意したゲームに乗っ取っての推し事です。
 しかし、「外仕事」はそれだけではありません。
 たとえば、地方の親善大使や商品のアピール大使の仕事もあります。SKE48では、一時期メンバーが生まれたり関わりのある市町村との仕事が多かった時期がありました。しかも、親善大使のメンバーがそれぞれ連動イベントをすることで、全く関連のなかった市町村同士に繋がりが生まれて行きます。
 メンバーの出身地で、今親善大使の募集はしていないでしょうか?
 もしくは、市の広報課のページに情報は無いでしょうか?
 いや、親善大使とか観光大使とか大したことないでしょ、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、一度親善大使になると徐々にその地方で認知されていき、アイドルを卒業した後でも「ホーム」として活躍できる場が出来るかも知れません。
 僕個人の体験になりますが、自分の生まれ故郷である愛媛県宇和島市に帰郷して、毎日が退屈で仕方ありませんでした。しかし、同じく愛媛県宇和島市出身のSTU48の兵頭葵さんが発信する宇和島市の場所を巡る度に様々な発見があり、それをnoteに書くようになりました。
 最初はSTU48の兵頭葵さんファンの方が面白がってくださっていたのが嬉しくて、毎週のように様々な名所を周り続けていましたが、ここまで地元を楽しませてくれた兵頭さんに何か恩返しが出来ないか、と考えて色々と調べていると「宇和島アンバサダー」という観光大使の仕事を宇和島市の市長公室のシティセールス推進係がやっていることを知りました。
 そこで、仕事の関係で市役所に行くことが多いので、色々と市役所の方に次のアンバサダーのことや兵頭さんがしていることについてお話をしたり、逆に伺ったりもしました。
 兵頭葵さん自体は、STU48の中で選抜に入っているわけでも握手の売り上げが特別凄いメンバーではありません。モデルの仕事やメディア仕事が充実しているわけでもありません。
 でも、幼少期から続けてきたピアノの腕は素晴らしいですし、大事な武道館でのコンサートで音響が切れた時に、即興で演奏をしてみせた判断力とスキルも素晴らしいです。彼女をアイドルグループによくある「便利屋」で終わらせるのではなく、次の文脈を重ねることで仕事の枠が広がっていくのではないか、と思っています。
 そして、それが出来るのは、ファンではないかと。
 企業や自治体の広報担当の方は、自分の企業名や商品名、地方自治体の名前でエゴサーチをするそうです。かくいう僕も兵頭葵さんのことを書いていることを宇和島市の方に発見されました。なんなら、宇和島在住のアーティストの方や経営者の方にも兵頭さんの名前は広がっていることをSNSから、ここ数か月で感じます。
 いきなり、市にアピールするのは難しくても自治体や商品と合わせて発信するだけできっかけが生まれてくるかもしれません。
 いや、運営が推すでしょ、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、待てますか?
 あなたの応援しているグループの運営の方がガンガン仕事を持ってくる方々ならそれで良いと思うんですが、そうでないならファンが推す時期が来ているのではと思います。
 

 僕がこの考えを一気に加速させたのは、自分が今応援しているSKE48の10期生、五十嵐早香の公式ブログが何度かボツになっていることからです。
 彼女は公式ブログで小説や詩、エッセイを創作します。
 しかし、アイドルとしてはいかがなものか、という理由でボツになります。ここでの運営の方々の判断を僕は否定しません。何故ならアイドルという枠の中で載せて良いものと悪いものの線引きは必要だと思います。
 じゃあ、ボツになった創作物たちは、誰にも読まれないままずっと眠って行くのか。勿論、アイドルとしての発信のチューニングも合わせて欲しいんですが、その反面、表現者として萎縮して欲しくもない。
 じゃあ、どうするか?
 発表する場を作れないか、と思いましてね。
 いやいや、出版社でもないのに、お前、無理だろと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、出版技術は多種多様ですし、資金に関してもクラウドファンディング等を利用してファン有志でお金を出し合って運営に掛け合うことも出来ます。彼女が好きなオカルト雑誌「ムー」等の媒体に、SNSを通してアピールすることも出来ます。昔と比べて才能を死なせない場を提供できるようになっていると思います。

ファンが選択肢を作れる時代へ

 上記の二つの例から僕が導き出したい答えとしては、ファンが推しの仕事を作ることが出来る時代に来ているのでは、ということです。
 運営の方々だって、全ての仕事が得意分野ということは少ないと思います。あまり開拓していなかったり、まだ視野に入っていなかったりする分野もある。だったら、ファンの方でも可能性を提示する、文句を言うだけでなくお金や時間も出していく。そうすることで、推しの可能性が広がるならば、WinWinかなと思います。

 この考えというか運動を僕は、このnote上だけで終わらせずに実行に移していきたいと思っています。兵頭葵さんの「宇和島アンバサダー」と五十嵐早香さんの「発表する場所」。
 どちらも、一人一人の「推し事」で可能性が広がると考えています。握手会の会場で列を作るのとは、違った可能性が生まれそうな気がしています。

 物凄くフラッシュなアイディアですが、もし、お前の考え、分かるよという方がいたら、一緒に考えていただけたらありがたいです。

 次のゲームは運営やメンバーと一緒にファンが創っていく。

※この記事を書くきっかけになった「五十嵐早香にSKE48は狭すぎる」も合わせてお読みいただくと、ありがたいです。

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