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バベルの個性

    「"個性的じゃないと生き残れませんよ"」

この言葉になんとなく聞き覚えのある方が
いらっしゃると思います。

でも直接誰かに言われたわけではありません。

それは電車の中吊り広告に
叩き込まれた言葉かもしれませんし
本屋に積まれていた自己啓発本の
あの煌びやかな売り文句だったかもしれません。
同級生の中でも頭ひとつ抜けて活躍していた
あの子聞こえない囁きだったかもしれません。

そんな言葉が聞こえるような気がして
ある人は資格勉強の本にしがみつき
ある人は数十万のセミナーに通い
ある人は自分の華やかさを
SNSにあげるようになっている。
今となってはほぼ全ての人が
「個性に追い立てられている」
そんな気がするのです。

私たちを突き動かしたその犯人が
誰なのかはわかりません。
それでも困ったことに、やはり私達の頭にはまだ

    「"個性的じゃないと生き残れませんよ"」

この言葉が呪いのようにこびりついている。
そしてその声は次第に大きくなっている。

幼き日の私たちを
無条件に包み込んでくれた共同幻想としての
「かつての個性」「バベルの塔」
一体どこに行ってしまったのでしょうか。

そしてなぜ、私たちの手元にある「今の個性」
こんなにも「呪い」に似ているのでしょうか。

今回のnoteはそんな
今、「個性」に起きている異変
テーマにした内容です。

〜注意〜
これは「絶望のお話」ですが
あくまでも「個人の解釈」という建て付けです。
体力に余裕がある時にお読みください。

それでは目次へどうぞ

・「個性経済社会」という仮説

「あっても良いよね」という「かつての個性」から
「ないとダメだよね」という「今の個性」へ。
そんな真逆の存在へと変わってしまった
「個性」という概念。

実はこの変化の原因が何なのか
「経済」という型に当てはめると
全体の説明がわかりやすくなります。

2023年現在
私やあなたも含め、人類の関心事というのは
「増税」だとか「目を引く商品」だとか
主に「経済活動」に関するものでしょう。

ではなぜ私たちは自分や他人の
「経済活動」に注目するのか。

理由は色々と挙げられますが
「日本のいち個人の関心」という視点に絞れば

それは「自分や他人の
"経済活動"に関心を向けていないと
"恥ずかしくて不安な"生活を送ってしまうから」
こうした理由に絞られるのではないでしょうか。

つまり「日本のいち個人の関心」の核は
「心配」であり、現在の「貨幣経済社会」
「心配」
によって成り立っているのではないか。
私はそう考えているわけです。

さて、ここでようやく「個性」の出番です。

どこに入り込む余地があるんだ?と
思うかもしれません。では手始めに
この「貨幣経済社会」という空間の
「貨幣」の部分を「個性」
置き換えてみるとどうでしょうか。

つまり、
「自分や他人の"個性"に関心を向けていないと
 "恥ずかしくて不安な"生活を送ってしまう」。
そんな社会が仮に存在するとしたら
どうでしょうか。

ある人は資格勉強の本にしがみつくようになり
ある人は数十万のセミナーに通い
ある人は自分の華やかさを
SNSに上げるようになっている。
みんな「個性に追い立てられている」。
そんな気がするのです。

核の部分は違えど
「個性」がきちんと組み上がっている点において
「バベルの塔」は、「かつての個性」は、
一見復活したようにも見えます。

でもその割に
皆さんが辛そうなのは変わりません。
そしてそれは当然のことなのです。

なぜなら僕らの目の前にあるのは
「バベルの塔」でも
「かつての個性」
でもないのです。

それは「心配」から成り立つ社会空間であり
人類の新たな戦場、
「個性経済社会」なのではないでしょうか。

「個性
という概念が現代社会において
競争の指標のように使われており
今まさに新たな社会を形成している

この仮説を土台に置くと今の皆さんが
「個性に追い立てられている」現状にも
ある程度の説明ができるのではないでしょうか。

続いては「個性経済社会」
その実像に踏み込んでいきながら
「今の個性の現在地」を書いていきます。

・「あなた」が「商品」の世界

「個性経済社会」について
踏み込んでいくにあたり
「貨幣経済社会」についても
もう少し書いていきます。

企業の経済活動において
何よりも欠かせないのは「自己投資」でしょう。
投資をするからこそ商品の質が上がり
払ってもらえるお金が増える。

その意味では「株式市場」というものは
「誰がどのくらい投資を受けたのか」
一覧で見ることができる場所となります

もし仮にあなたが企業経営者だとして
競合他社が「1億円」の自己投資を実現すれば
あなたは負けじと「2億円」の自己投資を
するかもしれません。

これと同じことが今まさに
「個性経済社会」で起きているのではないか。
私はそう考えているわけです。

友達や同僚の個性(株価)
職場や学校(市場)
Instagram(証券取引所)
ついつい監視してしまう。そして
競争しなければいけない気がする。

競合"他者"「ブランド品の投稿」を上げれば
競争の基準が上がった気がして自分も負けじと
「楽しそうな遊びの投稿」をしてしまう。

その心理の奥には
上場(SNS投稿やリスキリング)した
 仲間同士でつるみたい。
 上場していない奴はダサい。
 自分はそうなりたくない。そして、
 上場してしまったからには
 個性(株価)を磨かなければ。

こういった思惑があるのではないでしょうか。

   「"個性的じゃないと生き残れませんよ"」

かつての「貨幣経済社会」の中に見出した
「心配」の精神が「個性経済社会」にも
同じく芽生えていることを
私は強く感じています。

もっと残酷な描写をするならば
私達は自分自身がひとつの「商品」になり
「消費」の中で自分の「個性」を示していく。
そうして「お互いの個性を値踏みしていく」
そういう存在になったのではないでしょうか。

ここまで語ればお気付きの方もいると思いますが
「個性」はもうすでに
「競争の指標」となり果ててしまいました。

私たちが手にしている「今の個性」
「ありのままを受け入れてくれる」
「かつての個性」とは別物なのです。

もう「かつての個性」「バベルの塔」
元に戻ることはないでしょう。

私たちは「ありのままの相手」
評価できるほどお人好しになれるわけでも
「ありのままの自分」をさらけ出せるほど
能天気なあの頃には戻れるわけでもありません。

それは私から言わせれば
「呪い」と呼んだ方がお似合いではないかと
思ってしまうほどです。

「思う存分呪い合おうじゃないか」

・受け継がれてきた「呪い」

一方で私たちは「呪い」から逃げられない
宿命を負っているのもまた事実です。

それはかつての
「戦争」という「呪い」
反逆者に「非国民」という蔑称を付け
「稼ぐ」
という「呪い」
反逆者に「ニート」という蔑称を付けたように

「個性」という「呪い」もまた
反逆者に対して「イタイ奴」という
蔑称を付けるのは想像に難くありません。

その上、皮肉なことですが
「呪い」
は文明を作る
「豊かさの親」でもあります。

だからこそ、私は安易に
「呪いを解け」などとは言いません。
それはとても過酷な道です。

ですがそのままあなたを暗闇の中に
放っておくほど私も悪魔にはなれません。

ここまでは胃に何かが沈澱し続けるような
重々しい話を書いてきましたが
最後はそんな呪いの渦中においても
唯一希望的な話、

あらゆる「呪い」には共通して
「バックドア」「抜け道」が存在する。

という内容を話そうと思います。

最後です。「呪いが縛れないもの」について。

・「呪いが縛れないもの」

「呪い」という存在は要求の的確さ
どこまでも付いてくるその身軽さから
成す術がないと思われがちな存在です。

もちろん、
「戦え」という呪いに対して
「戦いません」。
「稼げ」という呪いに対して
「稼ぎません」。
「個性的であれ」という呪いに対して
「無視します」。

こういった「逆張り」はあまり
賢明な判断とは言えません。
それは歴史や世間を見ていれば
よく分かることですよね。

でもここで注目頂きたいのが
「呪いとどう向き合うか」
いくら「呪い」と言えども
縛ることはできないのです。

「どんな戦い方をするか」。
「どんな稼ぎ方をするか」。
「どんな個性の磨き方をするか」。

この思考空間は他の誰でもない
あなただけの空間なのです。

そうして考えていくと
同じ「稼ぐ」の中にも
「大変で楽しくて高収入」から
「楽でつまらなく低収入」まで
グラデーションがあるように

「個性を磨く」という呪いの中にも
グラデーションがあることが
分かってくると思います。

だからこそ、ありきたりではありますが
考えることを諦めないでください

「バックドア」を開くためには
「思考」が欠かせないのです。

・終わりに

これから「個性経済社会」
ますます成長を遂げていき
それに合わせて私達に求められる
「個性」の水準も上がっていきます。

「個性経済社会」においては
全員が上場企業社長のようなものです。
「かつての個性」「バベルの塔」
崩れ落ちた私達では真の意味での「思いやり」
だんだんと難しくなっていくことでしょう。

「思いやり」すらも「個性」のための
手段になり得るのですから。

だからせめて今のうちに、
この思いが「個性」になってしまう前に
言わせてください。

新しい時代、個性経済社会おける
あなたの健闘を心より祈っております。
どうかお元気で。

お読み頂きありがとうございました。

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