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キャラクターデザインの際に考える事

SNSの隆盛も手伝ってか、キャラクターデザインの仕事の需要が増えたと感じます。

では一体どういうものにしよう?という際、とかく「カワイイorカワイクナイ」の議論に陥るのですが、これが実に不毛です。

キャラクターの外見の重要性に疑いの余地はありませんが、企業やサービス向けにデザインされるものである以上は建設的な理由付けと議論が必要で、逆にこれを軽視、或いは「キャラクターみたいなものに理屈はない」と断じて無いものにしてしまうと、それは「クライアントの最も発言力のある人の趣味に全て委ねる」という結論に外ならず、更にこの単純構造を1度でも受け入れてしまうとその人に「こっちが良い」と言われてしまったものを覆せなくなります。

よってそれが結果として評価を得ようと、適切な説明を放棄するなら、少なくとも「作る仕事」としては不完全です。


更に僕が「作る側の意識」としてより大事だと思うのはむしろ、見た目以上にそこの乗る人格(まさに「キャラクター」部分)と、それを再現・運用し続ける事に割くエネルギーとアイデアであり、これらが噛み合い、継続される事で生まれる魅力を持って初めてビジネス的なキャラクターデザインは成功と呼べると考えており、こういったお話を頂いた時にはいつもまずここを説明するところから始めるようにしています。

これは詳しく話すと長くなる上に自分の手の内を晒しすぎる事になるためここでは割愛ますが、世の中で既に成功しているキャラクターやそれに関わるビジネスには、ちゃんと調べるとそれぞれ相応の理由があり、それが必ずしも外見によるものでない事が分かるもので、僕も独自にそれを繰り返し消化していく中で出した結論でもあります。

ただし勘違いしてはいけないのは、あくまでそれらは「それぞれ」のものであって黄金の必勝ワンパターンは存在しないという事ですが、唯一共通のメソッドと言えそうなものとしては、「生まれた瞬間から人気を決定づけられているキャラクターは存在しない」という理解を持ち、印象深いデビューよりも手塩に掛けた育成に励む事じゃないかと思います。


基本的にビジネス上で作られるキャラクターは、仕上げはイラストレーターであっても、考える、決める、育てる、という段階を1人で行う事はまずなく、クライアントを含めたチームでの協力体制の大切さをキャリアを積む程に感じると共に、その円滑なチームワークを作り・加わり方をコントロールする能力も僕の仕事だと考えています。

チームビルディングという言い方をしてしまうとさすがに大袈裟なのですが、「絵を描く仕事」はイラストレーターのものですが、「描かせる仕事」は案外意識の外にある人も多いため、描いて終わりと思っているとここが疎かになり、結果自分の首が締まる事はこれまでの経験で身に染みているもので。

またこの「チームワーク」意識の共有はイラストレーターにとっての自分の護身術のような側面もありますが、まずはルックスに目が行ってしまいがちなキャラクター作りというクリエイティブを、あくまでビジネス的な「企画である」という事を改めて認識してもらうためにも是非とも必要な工程です。


しかしそのためにはやはり前提となる一定以上の量の知識が自分の血肉になっている事、発言に説得力が備わっている事が不可欠ですが、これを得るに当たってここが日本である事は、学びの材料となる事例集めに不自由しないという点で、とても恵まれた環境だと感じています。