見出し画像

わたしたちは薬漬けにされている

なんとしてでも研究費を確保したい大学、医療の過度な専門分化を推し進める厚生労働省、そして新薬を開発する製薬会社。
現行の制度は薬漬け医療を生み出す元凶です。

現在、日本の医療は厚労省の方針によって専門分化が進められています。
大学病院に行くと内科だけでも、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、腎臓内科、糖尿病内科、神経内科と細かく分かれています。
専門分化が進んだことで、それぞれの分野で治療が進化したというのはもちろんあります。しかし最近では、専門分化型医療の弊害の方が目立ってきています。

日本の医者は、学生時代の実習や国家試験、そして2年間の初期臨床実習を通じて、一応は全ての科を経験しているという建前になっています。
しかし実際には、自分の専門以外の分野については十分なトレーニングを積めず、自信を持って全ての疾患に対応できるとは言い難い現状があります。

心臓が専門の医者のところに胃腸炎や喘息を抱えた患者さんが来たら、消化器や呼吸器が専門の医者ほどには詳しく診ることができないというのが実情です。
とは言っても、患者さんに不安を与えるようなことを言う医者はいません。
多くの医者は「今日の治療指針」という研修医必携のハンドブックを用いて治療法を調べ、処方すべき薬を決めたりしています。
このハンドブックには標準的な治療法、薬の名前、用法・用量などが出ていますので、自分の専門外の知識を得るのに非常に心強いのは間違いありません。
しかし標準治療として推奨されている薬は、大概どんな病気に対しても2〜3種類くらいあるものです。
現代は高齢化社会の時代ですから、心臓病の患者さんを診ているときに、「実は骨粗しょう症もあります」「血糖値が高いです」「喘息もあります」「胃潰瘍もあります」などど言われることがザラにあります。
そういうことならと医者もそれらの薬を処方するわけですが、これらひとつひとつの病気や症状に対してそれぞれ3種類ずつ薬を出すとしたら、薬は全部で15種類にもなります。
医者自身も「さすがにちょっと多いよなあ」と思っているはずです。
しかし専門外のため総合的な判断ができず、どうやって薬の量を減らしたらいいのかわかりません。
こうして私たちは薬漬けにされていきます。

最近になって、日本うつ病学会や日本老年医学会など、医療界の様々な学会が「薬はなるべく少なめに出した方がいい」ということを言い出すようになりました。
これには裏があります。
日本製薬工業協会の取り決めによって製薬会社からの接待が禁止になりました。各学会のこのような見解は、そのタイミングで出てきたものです。
またこれと同時期に、学会に所属する大学教授らが製薬会社から研究助成費などの名目でもらった金額を公表しなければならなくなりました。
もし製薬会社からの接待が続き、研究助成費を公表しなくてもいいという状態が続いていたら、学会はこんなことを言い出しはしなかったでしょう。
製薬会社が奢ってくれなくなった途端に手のひらを返し、医者は薬の悪口を言い始めた、というわけです。

開業医が大量に薬を売ることで、薬価差益で儲けを出していると言われています。薬価差益とは、薬価と仕入れ価格の差によって生じる利益のことです。
一方で、大学病院の医者は自分で薬を売るわけではないので、一円も得にならないのに患者さんに薬を出していると思われがちです。
しかし実際には、開業医が出す薬よりも大学病院の医者が出す薬の方がはるかに多いです。しかも大学病院の医者は薬をたくさん使えば使うほど儲かります。
接待は製薬会社側の自主規制によってほとんど姿を消しています。では今、大学病院の医者が薬を出したくなるエサとはなんでしょうか。
実は、製薬会社から渡されるケースシートに副作用の有無を書くことでお金をもらえる仕組みがあります。
「副作用なし」に○を付け、あとは数個の質問にyesかnoと答えるだけで数万円がもらえます。
副作用があったという欄に○を付けると、裏面に詳細を書くようになっています。それを書いていると1時間くらいかかります。副作用があったと書くとお金をくれない製薬会社まであると言われています。
意図的に副作用なしに○を付けさせ、それによって医者はキックバックを得るという仕組みです。

薬の副作用をチェックすることが目的なら、どんな薬であってもケースシートの謝礼金額は同じはずです。しかし実際は、値段が高い薬ほどケースシートの料金が高く設定されています。
高い薬を使ってくれればキックバックも上がりますよ、というわけです。

このように製薬会社と医者の利害関係によって過剰な薬が処方され、私たちの健康は危険にさらされています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?