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尿は健康診断装置(1)

毎日、日中に8回以上トイレに行く頻尿。毎晩夜中に1回以上排尿のために起きる夜間頻尿。
実はさまざまな生活習慣病と密接に関わっています。

膀胱のしなやかさが失われると頻尿になります。膀胱がしなやかに伸び縮みできないため、たくさんおしっこを溜めることができなくなるからです。
膀胱のしなやかさは血管のしなやかさと密接な関係があります。
加齢によって動脈硬化が進むと膀胱への血流が悪くなり、結果として膀胱が硬くなります。
頻尿や夜間頻尿が起こり始めたときに、膀胱だけに動脈硬化や血流悪化が起こっているとは考えにくいです。頻尿や夜間頻尿は全身の血管が硬くなっていることを物語っています。

尿の異常チェックのために注目すべきわかりやすいポイントは、排尿回数と排尿時間です。

体重3kg以上の哺乳類は全て、排尿時間が平均約21秒になります。
これらの動物は、尿道の直径と長さの比率がおよそ1:18で共通しています。
心拍数や寿命、酸素消費量などは動物の種類によって異なるのに、排尿時間は21秒で一致しているという、興味深いデータです。

排尿時間はおしっこ年齢の重要なバロメーターになります。
年齢を重ねていくと膀胱の筋力が落ちます。男性は前立腺肥大症にもなります。こういったいくつかの要因によって排尿時間は加齢で長くなる傾向があります。
21歳から94歳の男女に対して行った調査では、排尿時間は生殖年齢内で21秒前後になります。そして年齢が上がるにるれて排尿時間は長くなる傾向が見られました。
約21秒で尿が出きらずチョロチョロと出るようになったら、おしっこ年齢が高齢になりつつあるサインです。
おしっこ年齢は、尿に関わる膀胱や腎臓をはじめ、全身の健康状態を映し出します。老化にまつわる不調が出始めているサインです。
ぜひ一度、自分の排尿時間を計測してみましょう。

1日8回以上排尿していたら頻尿です。
一般的に、正常な排尿は1日に5〜7回です。
逆に頻度が少なすぎるのも、低活動膀胱といい、危険なサインです。むしろ頻尿よりも危険度が高いです。

頻尿の中でもより注意が必要なのは、我慢できないような強い尿意が夜間の就寝時も含めて1日のうちにたびたび起こる、過活動膀胱という疾患です。
過活動膀胱は、膀胱の血流が低下し、膀胱の神経が傷ついたり筋肉が硬くなったりすることです。
膀胱の柔軟性が失われ、尿を十分に溜めることができなくなります。そして傷んだ神経から分泌される物質により、ちょっとした刺激で膀胱が収縮するようになります。
これが我慢できないような強い尿意の正体です。

過活動膀胱の原因は、膀胱の血流が低下する以外にも2つあります。
ひとつは活性酸素です。
活性酸素は、食べ物を代謝してエネルギーを作るときに副産物として必ず生じる物質です。
人体には有害ですが、絶えず必然的に生じる物質であるだけに、活性酸素を処理する機能が体には備わっています。
しかし、活性酸素が体の許容量を超えて生じ続けたり、処理能力そのものが落ちてしまうと、有毒な活性酸素を処理しきれなくなります。
加齢現象と言われるものの多くは活性酸素が原因です。
活性酸素が多くなると酸化ストレスが強まります。血管をはじめ体内のあらゆる組織の細胞が錆びたような状態になります。膀胱の柔軟性も失われてしまいます。

膀胱では一酸化窒素というガスが作られます。一酸化窒素には、膀胱や膀胱の出口の筋肉に柔軟性を与える作用があります。
高血圧や糖尿病、高脂血症、動脈硬化など、いわゆる生活習慣病にかかると、この一酸化窒素が十分に作られなくなります。
一酸化窒素が足りず、膀胱の柔軟性が損なわれると、膀胱が硬くなり尿が溜まる量も減って、通常より早く一杯になってしまいます。
一酸化窒素の不足によって膀胱の出口も緩みにくくなるため、トイレに行っても尿が詰まった感じがする、スムーズに出きらない、だから何度もトイレに行きたくなるという悪循環が生じます。

このことから、頻尿は生活習慣病に気がつくきっかけになります。

もうひとつの原因は男性ホルモンの低下です。
男性ホルモンであるテストステロンにも膀胱の筋肉を柔らかくする作用があります。
加齢やストレスによって男性ホルモンの分泌が減ることがあります。すると体重の増加、仕事への意欲の低下、性欲減退、ED、うつ症状、全身の倦怠感、ほてりや発汗、そして頻尿が見られるようになります。
頻尿は体型とも分かち難い関係があります。太っている人ほどトイレが近くなります。
食べ過ぎによって活性酸素が増えることが大きな原因だと考えられています。

尿は健康診断装置(2)に続きます。


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