さあ寝ようとして明かりを消すと、過去がどっと押し寄せてくる。夢の中でも私を追いかけてくる。 ようやく間隙をみつけ、私は進行する汽車の椅子に座った。木製の背…
或る日の午後のことでした。お客様が帰ったあと、私は人目蛙を見ようと井戸に向ったのです。いざ覗こうとするとき、得体の知れないものがかすめた気がしたのです。立ち眩…
おべんとう
2024年7月7日 00:26
さあ寝ようとして明かりを消すと、過去がどっと押し寄せてくる。夢の中でも私を追いかけてくる。 ようやく間隙をみつけ、私は進行する汽車の椅子に座った。木製の背もたれに私は水となり、吸い込まれた。時に人はすべての関係を断って穴に入りたいという表現をする。私も同じ気持だ。私は鉄くずと同じだった。崩れた後自然に還ることなく、その場に延々ととどまる。そんな生き方をしてきた。成長しきったこの日本と生
2024年3月22日 02:04
或る日の午後のことでした。お客様が帰ったあと、私は人目蛙を見ようと井戸に向ったのです。いざ覗こうとするとき、得体の知れないものがかすめた気がしたのです。立ち眩みでも、目眩でもない、不安な気持ちになりました。 日光が届かない井戸にはもうほとんど水はなく、灰深い石、その輪郭を描くかのような深緑に視界が奪われました。底にはむき出しの砂利なのか濃やかな何か。白のような橙のような砂粒がこちらをみ