おべんとう

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我れ地

さあ寝ようとして明かりを消すと、過去がどっと押し寄せてくる。夢の中でも私を追いかけてくる。 ようやく間隙をみつけ、私は進行する汽車の椅子に座った。木製の背もたれに私は水となり、吸い込まれた。時に人はすべての関係を断って穴に入りたいという表現をする。私も同じ気持だ。私は鉄くずと同じだった。崩れた後自然に還ることなく、その場に延々ととどまる。そんな生き方をしてきた。成長しきったこの日本と生を共にしているが、私の成したことは我々がまだ木の上で生活していた時とまるでおなじな

    • 井の中の蛙

      或る日の午後のことでした。お客様が帰ったあと、私は人目蛙を見ようと井戸に向ったのです。いざ覗こうとするとき、得体の知れないものがかすめた気がしたのです。立ち眩みでも、目眩でもない、不安な気持ちになりました。 日光が届かない井戸にはもうほとんど水はなく、灰深い石、その輪郭を描くかのような深緑に視界が奪われました。底にはむき出しの砂利なのか濃やかな何か。白のような橙のような砂粒がこちらをみているようでした。 列記に井戸といいますが、ただ人一人分を掘って雨水がたまに溜まっているだけ

      • おはぎ

        爆速ルームランナーおばあちゃんのおはぎを食べたい。 明日 霧に霞むような 戸口に手をかけて 一人さまよう お化けのポツリポツリ 「助けに来たよ」 ルームランナーを脚に おばあちゃんがこちらに向かってくる。 速度があがる。 コリジョンランプがピカピカ光る。 どかん。 鈍い音をたて、ルームランナーおばあとお化けがぶつかる。 ルームランナーは粉々に、 でも、おばあちゃんは無傷。 すごいよね、おばあちゃん。