センチメンタル・かめ
「傘」
何処にいったのでせう、私の傘
15年前に百貨店で買った、私の傘
修理して使い続けた、私の傘
どこかに置き忘れても、必ず引き取りに行った、私の傘
所々、穴が開いて、もう少ししたら布まで貼り替えないと使えないほど、くたびれていた、私の傘
持ち主の財布の中身を心配してくれたかのように、または死期を悟った猫のように、消えた、私の傘
どこにいったのでせう、私の傘
とうとうコンビニで、傘を買いました
ジャンプ傘が1000円もしない世の中じゃ、
ポイズン
一ヶ月くらいで、カフェに忘れてしまった、新しい傘
そのことにさえ気付かなかったくらいの、新しい傘
なくなったあの傘は、高価なものだったから、執着していただけだったのでせうか?
心底惚れていたのでせうか
ならなぜ、置き忘れた場所が分からないのでせうか
間違いなく、加齢による、健ぽうでせう
次第に私の顔にはシワやシミが沢山出来て、白髪だらけになり、骨が弱ってくるのでせう
そして何処かに置き去りにされ、忘れられるのでせう
眠らない街から、新しい女を連れてくるのでせう
どこにいったのでせう、
古い私の傘
大切な私の傘
もう戻らない私の傘
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