見出し画像

きもつき熱中小学校


 先日、肝付町で行われた「きもつき熱中小学校」にスタッフとして参加してきた。今回は帯広畜産大学の学長、長澤秀行先生と、日本司法支援センター本部国際室長かつ常勤弁護士の冨田さとこ先生の授業を受けることができた。
 
 1時限目は、鹿児島から遠く離れた北海道の、東京ドーム40個分の広さを持つ、日本で有数の畜産大学の学長の長澤先生から、じきじきに免疫や寄生虫から細菌、ウィルスの話まで1時間以上聞くことができた。今もまだ終わる気配のない新型コロナウィルスに関する先生の知見は、改めて、「専門家の話には”絶対”は無い」と感じさせられた。なんせ、長澤先生のパワーポイントの1枚目は「人の話をよく聞く」と「人の話を鵜呑みにしない」の二つの言葉が並んでいたからだ。新型コロナウィルスワクチンに対しても、絶対ではないが、天然痘に対して牛痘を接種させて、免疫を獲得させたジェンナーや破傷風に対する血清療法を発見した北里柴三郎の例を挙げて、絶対ではないが有効であるという言い方をされていた。
 
 常々、トンデモ医学を持ち出す医者は「絶対」という言葉を使う傾向があると思っていた。やはり専門の研究者の方というのは、いつでも「反証」や、疑う目線を持つからこそ、未来に向けた発見や発達があるのだなと感じられた。先に書いた「人の話をよく聞く」と「人の話を鵜呑みにしない」は実に哲学的でもある。
 
 そして、長澤先生はとてもユーモアのある方で、寄生虫の話の時の時に、人糞を使った自然農法をしていた男性がお腹が痛くてたまらないというので、開胸してみると、どんぶり一杯分の回虫が入っていたという。その時のパワポのイラストが、どんぶりに入ったカレーうどんであった。しばらくうどんが食べられそうにない(笑)。
 
 続いて2時限目は冨田さとこ先生。日本司法支援センター本部国際室長かつ常勤弁護士と聞くと、どんなクールな女性が表れるのだろうと思いきや、冨田先生もぶっ飛んで面白い方だった。今回は外国人労働者の様々な相談について事案を交えてお話をしてくださったのだが、堅苦しい、難しい専門用語を使わずして、私たちに、これからの日本のあり方をどう思うのか?という問題提起をしてくれた。日本は少子高齢化が進み、労働者がすでに足りなくなっている。だが、日本はほぼ難民を受け入れないし、技能実習生という名の期限付きの労働者を使い捨てている。すでに円安はすすみ、中間所得層の収入が30年間上がっていない。こんな国には、もう来てくれる外国人労働者はいなくなるのではないか?
 
 そこで、日本は小国として、自分の国の人間だけで粛々とやっていくしかないのか?それとももっと開かれた国になり、外国人と共に多様性を持った国として更なる発展を目指すのか?いささか極端な例ではあるが、こんな2択になるのではないか?最悪、お金を持った日本人の多くが海外に移住してしまい、ただの農業を捨てすぎた上に資源のない貧国になるのかもしれない。
 
 冨田先生への相談事案に、外国人技能実習生に対しろくでもない要求をする日本人経営者が出てくる。最近の愛知県のウィシュマさん事件や、熊本県のベトナム人女性が一人で出産し、死産だった双子を箱に入れただけで死体遺棄として逮捕され有罪とされた話を彷彿とさせる。宮台真司氏の言う「日本人の劣等性」とはこれなのか?と絶望的な気分になっていたがしかし、冨田先生が様々な高いハードルを超えながら解決していく話を聞くと、少し救われた。こんな冨田先生の様な明るくて、強い、人の気持ちの分かる方達が、私が知らないところに沢山いらっしゃって、表から見えないところで尽力されているのだ。やはり、「絶対」というものは「死」以外ないのだなと逆にポジティブになれた気がした。
 
 しかし、こんな滅多にお目にかかれない方の滅多に聞けない話がフリーで聞くことができるのに、なぜお客様があまり多くなかったのかが不思議でならない。次回は1月21日土曜日です。ぜひいらしてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?