見出し画像

映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督日記:118 伊方原発抗告審

2023/3/24 広島は曇天。 映画のクライマックスで残念ながら却下となった伊方原発差止仮処分。その即時抗告審の結果が3月24日に出ると樋口さんからお知らせいただいたのは、ひと月ほど前。これは撮りに行かねばと、ひとり機材を背負って広島へ向かった。
裁判所前には早々とメディア陣が集まっていた。原告団の方に結果発表後の段取りを訊く主要メディアの記者は、どこも20代と思しき若い人が多かった。あとで原告の哲野さんに聞いたところ、若い記者ほど熱心に取材してくれるらしい。

樋口さんが到着、「判決出すほうが気が楽ですね」と開口一番。いくら元裁判官でも結果を推し測るヤキモキする気持ちは自分と同じ、いや自分の100倍以上だろう。

樋口さんが初めて横断幕とともに行進


14時の発表前に抗告人と原告団、弁護団が横断幕とともに行進する。河合弁護士の隣に樋口さんが立った。元裁判官の樋口さんが初めて裁判所前の行進に参加するという記念すべき瞬間を撮って感慨深い気持ちになる。
入場の前に樋口さんと河合弁護士の演説があった。理路整然としてわかりやすいお二人の話しは、若い記者たちにはよい記事の材料になると思った。

決定要旨を読み込んで記者会見にそなえる弁護士さんたちと樋口さん

そして、どう考えてもおかしな結果となり、この抗告は棄却された。河合弁護士と共に脱原発弁護団全国連絡会の代表を務める海渡雄一弁護士から以前に”司法犯罪”という言葉を教わったが、それはこのような誤った判断から起こるのだろう。
伊方原発の耐震性が極めて低く、危険だから直ちに運転を差止めてほしいという訴えに対して広島高裁の脇由紀裁判長は、原子力規制委員会の規制基準を満たしているから訴えを退ける。さらに、危険性を訴えるのであれば、地震で起こる事故の全ての事象を抗告する側が証明するべきだと判断した。

これは、地裁での却下の理由を上塗りする非常識な判断だ。原告団の哲野さんは「この判断は、原発推進側が住民側の理論に追い詰められていることの表れ」だと言った。なるほど!いくら原発を推進しようとしても、多くの人がおかしいと思う理論を前にすれば、出てくるものはもう、破れかぶれな屁理屈しかなくなったのだ。

いつも河合弁護士は言っている「裁判だけじゃ原発はとまらない。反対する人たちが集会を開いたりデモをしたり、選挙で脱原発を掲げる候補者に投票したりすることで、社会の気運を高めることが必要不可欠だ」と。

そして自分は思う。『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』という映画の役割は一層大きくなった。もっと多くの方々に観てもらわなければならない。

<自主上映会お申込・スケジュールサイト>
https://saibancho-movie.com/wp/

<映画公式サイト>
https://saibancho-movie.com


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?