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映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』監督日記:117 12年

2023/3/21 晴れ。12年前の 2011年3月11日14時46分18.1秒。自分は何をしていたかというと、東京港区の北青山で撮影をしていた。正確に記すと、揺れが始まったのは国道246号に停めたロケバスからスタッフとキャストが降りた時だった。地下鉄青山一丁目駅の出口から大勢の人が出てきて騒動が始まったと感じたが、自分たちは撮影のためにロケ場所であるレクサスのショールームに入っていった。

不思議なもので、どんな騒動が始まろうが撮影は毎度一刻を争う作業だから次から次へと撮らなければならない。ニュースで津波が押し寄せる映像を見ながらも、モデルさんを美しく撮るために照明やカメラアングルの工夫に集中した。何が起きようとも撮るべき世界に没頭できるとは、振り返って考えると異常な職業のような気がする。

翌日も同じ仕事の撮影をした。一軒家を改造したスタジオでTVのニュースをつけっぱなしにして、余震を感じながらもカットを消化していった。原発がおかしなことになっていると報じていたが、その時の自分は原発の危険性など全く無知だった。

12年後の3月11日には三軒茶屋にある世田谷区の施設で本作の自主上映会が開催された。自分は主催者さんに招かれて舞台挨拶に立ち、100名近く集まったお客様に本作を作った経緯などを話したのだった。

人生は摩訶不思議だ。自分は12年前には想像もしなかった立場に変わっている。変わらないのは映像職人であることだ。

「311が無ければ出会うはずのない仲間たちと上映会を開いたなんて不思議です。」主催してくださった世田谷子ども守る会のママさんたちが言った。その気持ち、わかる。

ところが、いま現在、原発推進を巻き返そうとする日本政府とは一体なんなのだろうか。全くわからない。

2023年2月から始まった自主上映会は3月20日時点で開催数22。動員数2,542名。
これまでの劇場と合わせると10,200名超のみなさんにご覧いただいたことになる。そして上映会のお申込は増え続けている。求められているのだと思う。

<自主上映会お申込・スケジュールサイト>
https://saibancho-movie.com/wp/

<映画公式サイト>
https://saibancho-movie.com


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