見出し画像

健康経営お国の資料まとめ

自己紹介とこれを書いた背景(読み飛ばしてOK)

株式会社iCAREフィールドセールスの柴田さちこです。
ふだんはCarelyのご紹介とともに、お客様から健康経営のご相談も多く受けています。
前職では管理栄養士として特定保健指導に従事し、働く人ひとり一人に向き合っていました。
特定保健指導とは、医療費の適正化のためにメタボ(=生活習慣病のリスクが高い状態)の方に、科学的根拠をもとに適切な行動変容を促すプログラムです。
「特定保健指導」をGoogleでぜひ検索してみてください。
検索すると他のキーワードで「しつこい」と出てきます。
なんでこんな「しつこい」と思われることを国はやっているのか?前職の新入職員研修の際に説明する必要があり、厚生労働省が出している資料を読み漁ったことがあります。
その際、省庁の出している資料を一通り目を通していくことはタメになると感じました。
先月健康経営エキスパートアドバイザーの資格を取得し、お客様によりよいご相談をさせていただくためにも健康経営周りの制度や資料をまとめておこうと思い、このブログを書いてみました。

健康経営に関する制度・資料ざっくり相関図

雑な手書きのメモ

健康経営を知ろうと思うと、ざっくりこれくらいの制度・資料が出てきます。
メインは経産省・日本健康会議の健康経営ですが、厚労省、SDGs/ESGの部分まで知っておけるとより理解が深まりそうです。

  1. 経産省・日本健康会議の健康経営関連の制度・資料

  2. 厚労省関連の取り組みについて

  3. SDGs/ESGの関連について

このような順番でまとめていければと思います。

経産省・日本健康会議の健康経営関連の制度・資料

健康経営とは

健康経営という言葉が生まれたのは最近です。
第二次安倍内閣による日本再興戦略(2013年)でその概念が少し登場し、第三次安倍内閣の未来投資戦略(2017年)で言葉として出てきました。
この辺では医療費の適正化のための「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つという位置づけでした。
最近言われている健康経営の目的は健康寿命というより、経営戦略のためというニュアンスが強いです。

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html#:~:text=%E3%80%8C%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%B5%8C%E5%96%B6%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81,%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%9C%9F%E5%BE%85%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

健康経営優良法人認定制度

健康経営をちゃんとやっているよ!と国のお墨付きがもらえる制度です。
大規模法人部門と中小規模法人部門の2つがあり、上位500社は特別にホワイト500(大規模法人)、ブライト500(中小規模)と認定されます。
健康経営優良法人認定の認定は年々増えており、2021年度は大規模法人部門1,801法人・中小規模法人部門7,934法人でしたが、2022年度では大規模法人部門2299法人・中小規模法人部門1万2255法人となっています。
認定主体は経済団体、医療団体、保険者、自治体からなる日本健康会議、顕彰制度の設計は経産省が行っています。

自治体・健保の健康宣言事業

自治体や健保で健康宣言事業を行なっています。
名称や取り組み内容はそれぞれで異なります。
ちなみに地方自治体での名称は変わったものが多く、わたしの出身の三重県では「三重とこわか健康経営カンパニー(ホワイトみえ)」という名前でした。
健康優良企業「金の認定」「銀の認定」などとたまに聞くやつは、東京の健保たちがやってる健康宣言事業のことです。
日本健康会議では「保険者とともに健康経営に取り組む企業等を10万社以上とする」と宣言していますが、この事業に参加している企業のことを指しているのだと思います。

企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~

企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ ( 経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課平成 28 年 4 月 改訂第1版

健康経営を知りたければまずはこれを読めばOKというガイドブックです。
健康経営の意義・取り組み方・取り組みの評価指標などが記載されています。
健康経営について知りたければまずこれを読んでほしいと思いますが、長いので、わたしがおもしろいとおもった部分を2つくらいピックアップしておきます。

①経営者が健康投資のメリットを理解し、健康経営が組織の中に根ざすように整備すること
「このガイドブックの目指すもの」の中でこんな感じの記載があります。
いろんな健康経営の事例を実際に聞き、あるいはネットや雑誌で情報収集している中で、健康経営が根ざしている会社ってこれができてる企業だよなあと感じます。

②健康経営を広く情報発信すること
これも「このガイドブックの目指すもの」として記載があります。
健康経営のメリットは「株価の安定・向上につながる」「ホワイト企業のイメージがついて採用力が向上する」などありますが、発信しないとこの効果は得られないのだから、そりゃあ大切だよなあと納得しました。
ちなみにそのポイントはざっくり、①トップがやってる感を醸して②事業戦略のストーリーに沿うように③PDCA・定量データで示すことらしいです。

健康経営の推進について

健康経営の推進について (令和3年10月 経済産業省ヘルスケア産業課)

先ほどの健康経営ガイドブックの内容を補強するデータに加え、健康経営の最新の動向が記載されています。
ガイドブックは平成28年に出ているので、令和3年に出ているこちらはコロナ関連の情報がプラスで載っていたりします。(弊社iCAREが出典のデータもあります!)
ここでもまたシバタ的ピックアップとして「健康経営の今後」についてメモっておきます。

①情報開示の促進
3月15日にフィードバックシートが公表されてましたね。
(令和3年度健康経営度調査に基づく2,000社分の評価結果を公開しました)
健康経営はESG投資の観点から投資家も気にする部分ですが、取り組み内容が企業独自バラバラに書かれていると、比較できないよ!となるなってしまいます。
フィードバックシートが公表されると、1つの画一された評価基準になるから、投資家も社員も求職者も、みんなが分かりやすくなるからいいですよね。
ESG投資というのを考えたとき、これは日本独自のものだから世界比較はできないわけなのですが。

②業務パフォーマンスの評価・分析
「アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム、ワークエンゲイジメントを測ってますか?」という設問が加わっています。
評価項目にはしないらしいのですが、健康経営の目指すものの1つに業務パフォーマンスの向上があり、今後それを定量的に示していく必要があるのでしょうか。
なぜこれが追加されたのか調べてみたのですが、根拠となりそうな資料が見つからなかったので、どなたかわかる方教えてほしいです。

③スコープの拡大
ESGの”環境” のように、健康経営のスコープを自社だけでなく「サプライチェーン」や「社会全体」に広げる動きを促進するらしいです。
実際お客さんと話していて、元請から健康経営についての要請があったという事例に遭遇しました。

健康投資管理会計ガイドライン

健康投資管理会計ガイドライン(令和2年6月12日 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課)

健康投資管理会計とは、健康経営をするための費用とその効果を量的・金銭的指標にすることらしいです。
これにより従業員・事業主・地域社会・株主などと対話するための枠組みができます。
健康経営の費用対効果を示すのはなかなか難しく、あまり普及していない印象です。
こういうのがあるんだ〜と存在だけ知っておければいいのだと思います。
詳細はこの解説記事をみると良いと思います。

厚労省関連の取り組みについて

データヘルス計画

データヘルス計画作成の手引き(厚生労働省 保険局 健康保険組合連合会 平成29年9月

データヘルス計画とは、健保はデータを使って効率的・効果的に保健事業をやろうよ、というものです。
使用するデータの1つにはレセプト(病院が健保にお金請求するやつ)があり、昔に比べて電子化したことで健保は健康関連のデータを得やすくなりました。
じゃあこれ企業関係なくない?健保がやることじゃない?と思うのですが、お国の制度の複雑な絡み合った厄介なデータがあるのです。
それが健診データ。
健診は企業が従業員に受けさせる義務があるのですが、健保としても40歳以上の加入者に特定健康診査というのを受けさせる義務があるのです。
健保と企業で被っとるやないかい。
協会けんぽでは提携医療機関で健診を受診すると自動的に健保へデータがシェアされるようになっています。
というわけで、健保はレセプトや企業などから得た健診データを用いて、医療費適正化のためにデータヘルス計画に基づいて保健事業を進めていくわけです。

コラボヘルス

コラボヘルスガイドライン(厚生労働省保険局平成29年7月)

健保も健康経営を進める企業もやりたいことは一緒。
じゃあ協業しようよ、というのがコラボヘルスというものです。
ちなみにこの中のメイントピックスがわたしが前職で関わっていた特定健康診査・特定保健指導です。

地域・職域連携推進ガイドライン

地域・職域連携推進ガイドライン(令和元年9月これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会)

企業と健保のやっている健康管理の領域だけでも十分ややこしいのですが、これを地域にまで拡大するとさらにややこしいです。
法律でいうと、健康保険法、国民健康保険法、労働安全衛生法、高齢者の医療の確保に関する法律等と、いっぱいあります。
その目的、対象者、実施主体、事業内容等もそれぞれ異なっています。
これだけ複雑だと制度間のつながりも十分じゃないし、ライフステージに応じた保健事業の継続性が途絶えちゃうし、地域全体の健康課題が正確に見えにくいということで策定されたガイドラインです。

SDGs・ESGの関連

SDGs経営ガイド

SDGs経営ガイド(2019 年 5 月 経済産業省)

これを取り組みたい中小企業の社長さん向けに書かれたのかな?という感じの手引き。
意義・事例などが紹介されています。

通商白書2021

通商白書2021(令和3年6月 経済産業省通商政策局)

特定保健指導を取り巻く全体的な動向を知りたいと思ったときに厚生労働白書を読み参考になった経験があり、SDGs周りでそれに類するものがないか探したのがコレでした。
この白書の目的は「国際経済動向や通商に影響する諸外国の政策の分析を通じて、通商政策の形成に貢献するとともに、国民等に対して通商政策を基礎づける考え方や方向性を示す」らしいです。
この中で「潮流3:国際経済活動における共通価値への関心の高まり」としてSDGs周りのことが言及されています。
健康経営ガイドブックなどに記載されていることと被ってるのも多いのですが、知らないことばかりで読み込むのに苦労したので、そのメモとしてつらつらまとめておきます。

①ESG投資がめっちゃ増えてる

そもそもESG投資というのは……

従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。

https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

ESG投資がめっちゃ増えている背景として、ESGマストな国際的ルールが整備されていっているからです。
難しいカタカナと漢字ばかりで脳みそパンクしそうだったので、全部メモってみました。

国連責任投資原則(PRI)
投資にESGの視点を組み入れることなどからなる機関投資家の投資原則。日本でも世界でもこれに署名している投資機関はギューンと増えてる。
<PRIの6つの原則>
1.投資分析と意思決定のプロセスにESGの視点を組み入れる
2.株式の所有方針と所有監修にESGの視点を組み入れる
3.投資対象に対し、ESGに関する情報開示を求める
4.資産運用業界において本原則が広まるよう、働きかけを行う
5.本原則の実施効果を高めるために協働する
6.本原則に関する活動状況や進捗状況を報告する

・コーポレートガバナンス・コード
コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(2021 年 6 月 11 日株式会社東京証券取引所)
「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」とは会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための文章。
2015年に金融庁と東京証券取引所が共同で策定し、2021年6月に改訂。
取締役会にジェンダーや国際性を含む多様性を求めること、開示及びプライム市場へのTCFD開示、サステナビリティへの取組方針を策定した。

・スチュワードシップ・コード
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫ ~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~(2020 年 3 月 24 日再改定)
機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG 要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を文章にしたもの。

・TCFD
「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)」とは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため機関。

企業行動憲章 実行の手引き(第8版)(経団連)
Society5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱とする。

②若者がSDGsを求めている

通商白書2021より

世界中のミレニアル世代・Z世代が懸念する社会課題としてSDGsがあるというアンケート結果があります。
つまり、SDGsに取り組むことは将来の消費者のニーズ対応力や人材確保にもプラスの影響が見込めます。

③無形資産への投資が増えてる

経済のデジタル化等にともない、価値創造の源泉が無形資産にシフトし、株価も無形資産の評価が大きく影響。
日本企業は、技術・ノウハウ(研究開発・情報化投資等により取得し、人的資産にもなる)、さらには内外の取引先との信頼やネットワークといった関係資産も含めた幅広い無形資産に投資することがより重要に。

通商白書2021より

無形資産に人的資産(ノウハウ、技術など)や構造資産 (組織文化など)も含むらしく、健康経営と遠からずな感じかとわたしは理解しています。

④共通価値が高まっている
共通価値ってなんやねんと思い調べてみると、環境や人権のことらしいです。
通商白書2021 第Ⅱ部 第3章 信頼あるグローバルバリューチェーンの構築に向けた対応に書いていました。)
①グリーン:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
②人権:「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020ー2025)
政府としては、ビジネスと人権の国際的フレームワークとしての、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」や「OECD多国籍企業行動指針」等をふまえ、「行動計画(NAP)」を昨年10月に策定し、関係省庁と連携しつつ、産業界への普及啓発に取り組んでいるらしいです。
人権の部分が健康経営と遠からず……と感じたので一応メモっておきます。

さいごに

「これ違うよ」「このへんも押さえておくべきだよ」というのがあればぜひ教えてください。
資料を読み漁ってみて、健康経営は取り組むことが当たり前になっていると感じました。
特定保健指導をしていたとき「健康になろうと思ったら、仕事やめなきゃ無理だよ」と言われたことが何度もあります。
令和元年国民健康・栄養調査では健康な食習慣の妨げとなる点の理由のトップが「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がないこと」でした。
特定保健指導は対症療法であり、原因療法の一つが健康経営だと考えます。
企業でも個人の人間としても「健康」って大事だと分かりながら後回しにされがちなものです。
それが社会の風潮として優先すべき事項となっていることは、個人的には歓迎すべきことだと思っています。
iCAREのパーパスは「働くひとの健康を世界中に創る」です。
Carelyを通して健康経営が当たり前になることを支援できればと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?