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本業は自然科学です。

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桐壺更衣が背負わされていたもの

源氏物語のテーマは数多あれど、そのうちの1つは、主流から一度外れた貴族が、いかにして天皇の外戚となり、復権するかということのように思う。 桐壺更衣は光源氏の生母で、大納言の娘という、本来ならば低くない身分の女性でありながら、父を亡くし(有力者の養女になることもなく)入内したがために、様々な苦労をすることになってしまった。 女御にすらなれず、立后などできる見込みもないにも拘らず、幸か不幸か帝の寵愛は限りなく深く、帝の第二皇子である光源氏を授かるも、心労故か、光源氏3歳の年に帰

    • 皇后定子の遺詠についての私見

      一条院皇后宮・藤原定子は、長保二(1001)年、産褥にて崩御したが、自身の身体が出産に耐えられない予感があったのか、『栄花物語』によれば3首の遺詠を密かに残していたとされている。 ①夜もすがら契りしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき ②知る人もなき別れ路に今はとて心細くもいそぎ立つかな ③煙とも雲ともならぬ身なりとも草葉の露をそれとながめよ ②は今生に別れを告げなければならない寂しさ心細さがいかにも感じられ、辞世と呼ぶに相応しいと思う。 ③は自らの埋葬方法を、火葬で

      • 門前の小僧、習わぬ和歌を詠む

        私の専門は大雑把に言うと物理である。 物理学に出会ったのは14歳のときで、私にとって、それまでに出会ったどの学問よりも学んでいて楽しく、わからないことに突き当たっても絶対わかるようになりたいと強く思わせてくれるものだった。 そのまま専門に選び、今に至る。 それとは別に、私は7歳のとき、百人一首のかるたに触れることで日本の古典文学に出会った。 私は3年ほどで100首の歌をすべて憶えたようだ(家族談)が、しかしこのとき、歌の意味も何となく理解しながら憶えたが故に、文語文法もぼん

      桐壺更衣が背負わされていたもの