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営業ゼロで書く仕事を受けるためにしていること

私が新卒で入社したのは、全国にリラクゼーション店を展開する会社だった。
そこは社員を完全歩合制で働かせる会社で、例えば60分6,000円で、マッサージの仕事をしても、もらえるお金は3割程度の2,000円だった。

マッサージの予約があるときはまだいいが、一度だけお客さんが誰も来なかった日があって、あの日は交通費を差し引くと赤字だった。
このように普通の会社と違ってお客さんが来ないとお給料がないので、平日は必死でビラを巻いたりポスティングしたり、店舗の近くで疲れてそうなお客さんに営業をかけたりした。

生まれて初めて就職する新卒入社の会社というのは、その人の思考に絶大な影響を与えるらしい。その後10年近く私は「仕事=必死でお願いして何とか頂けるもの」というメガネでしか世の中を見ることができなかった。

ところが、数年前からライティングのお仕事を細々とさせて頂いているのだが、一度も営業をしたことがない。これは私の仕事観を大きく変えることとなった。
決して書くだけで食べていけるほど稼げてはいないのだが、営業をしなくても仕事のご依頼を頂くコツの一つが「開催報告をこまめにすること」だと思っている。

よく「こんなセッションを始めました」「こんなワークショップをやります」といった募集のSNS発信は見かけるが「こんなセッション(ワークショップ)をやりました」という開催報告の発信は、募集に比べてあまり見ない。

参加しなかった人・申し込みしなかった人たちの中には「今回は日程が合わなかったけど、いつかこの人に仕事をお願いしたい」とか「今じゃないけど次回タイミングが合えば行きたい」と思ってくれている人は、自分が予想するよりたくさんいる。

完了した仕事のことを発信するのは、そうした気に掛けてくれていた人たちへ「おかげさまでうまくいきました」という感謝のメッセージでもある。顔が見えると安心するので、できれば参加してくれたクライアントさんや参加してくれた人との写真付きで発信するとなおよい。
誰もいないパン屋さんより、賑わってるパン屋さんの方が入りやすいように、人はやはり人がいるところに行くものである。

集客の発信ばかりしていると「あの人いつも呼び込んでるなあ。よっぽどお客さんいないのかな」という印象になるが、開催報告まですると「ちゃんと行動してるんだな」という安心材料になる。前者の印象で終わってしまうのはもったいないし、こうした安心感をまとっておくことは、自分の名前で仕事をする上で何より大切なことだ。
ちょっとしたことだが、商いというのはちょっとしたお客さんの不安要素を丁寧に取り除くことも大事な気がしている。

マッサージ時代はお客さんに値切り交渉をされるのが何より嫌だった。だからこそいつか「値段とか関係ないよ。仁美さんの人間性で、仕事をお願いしたいと思った」と言ってもらえることを夢見て、これからも頑張りたい。