ーミノスの回廊ー

廃坑を再利用した盗賊団のアジトの最奥に、その扉はあった。
薄暗い行き止まりにある扉には大きな閂がかかり、錆び付いてはいるが強固な錠前でがっちりと閉められまるで猛獣か何かを閉じ込めているようであった。
私はそこに、レッドエイプから奪った大振りの鍵を差し込んでみた。
長く放置されていたであろう其れは初めガリガリと音を立て中々入れてくれなかったが、やがて根元まで飲み込むと、遠慮がちにもゆっくりと回り出した。想像に反して「カチッ」っと小気味の良い音を立て錠前は、そのままドスンと大きな音を立てて地面に落ちた。中は一層暗く、ひんやりとした空気が溢れ出し何か薄ら恐ろしい雰囲気を漂わせていた。人知れぬ洞窟や長く閉じられていた坑道などでは、しばしば悪霊のたぐいも現れるとか。私は松明をグッと前に突き出し慎重に中に歩み入った。

内部はここまでとは違い、地下倉庫か城の回廊のように石レンガを積み上げた重厚な作りだった。このアジトは小高い丘の上にある。もしかしたらかつては領主の居城でもあったのだろうか?坑道を掘る内に財を成し、やがて力を持ち始め周囲を統治し、そして没落していった歴史をなんとなく想像してみた。するとやはりここには怨霊がいるような気がして悪寒がしたので、その想像はやめることにした。
回廊は坑道と違い整然とした作りをしていて“こんな世界”で無ければ道に迷うことも無さそうだが、私は用心の為ぼろきれとトカゲでお決まりの「目印」を作っておいた。内部にはいくつか部屋のようなものがあった。「ようなもの」というのは、それはどれも扉が無く(朽ち果てていて)ぽっかりと空いた穴の奥に大きな空間があるという感じだ。ワインを貯蔵する倉庫にも似ていたが、中には家財と思しき残骸もあり謎は深まった。
すると突然、きちんと並べられた石レンガの道が途切れ深い谷が目の前に現れた。道はそこで終わっているというより地震か何かで裂けてしまったようだった。仕方なく踵を返し来た道を戻ろうとしたそのとき、強い衝撃を感じるとともに突然の浮遊感を感じた。私は今落下しているのだ!

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