【単巻5冊読書感想㉞】『鹿と日本人』『超圧縮 地球生物全史』『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。』『ストーカー加害者』『3.11霊性に抱かれて』
久々の単巻5冊です。
長文で綴る、「読書感想小論」の方を書いたりしていて、なかなかこちらはサボってました。
「読書感想小論」の方もよろしくお願いします。
今回、10月末に読んだ本もあったり……。
というわけで、5冊いきましょー。
【1冊目】総括・奈良の鹿『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
奈良の鹿。
あいつら、野生らしいぜ……。
「どうやって生活しているか?」
「いつから保護されているのか?」
「畑の害獣として、森の破壊者として」
神鹿・奈良の鹿について、いろんな角度から調べ尽くしてある本です。
ジャーナリストの方らしく、バランスのいいタイトルになっています。
客観的でありながら、ちゃんと著者の意見も述べてあります。
読んでる読者として、「そうだよね」とか「そこはこうじゃない?」なんて自分の意見も自然と出来上がっていきます。
奈良の鹿を通して、日本の害獣や、動物との向き合い方を深められる一冊です。
【2冊目】詩的に描く、地球誕生から未来まで『超圧縮 地球生物全史』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
ざっくりわかるんですけど、なんというか、かなり詩的です。
想像の余地が結構入っているし、いろんな学説を説明しているわけではない。
流れはわかるけど……科学的にはどうなんだろ?
って感じです。
概説・総論が苦手なので、あんまり自分の中に残ってません……。
【3冊目】アフリカの獣害問題『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。 野生動物と共存するってどんなこと?』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
たまたま1冊目が、日本の獣害問題も考えるタイトルでした。
こちらは、百数ページでアフリカのゾウ、獣害問題を考える一冊になっています。
日本でゾウといえば、絵本『かわいそうなぞう』で描かれる戦中に亡くなった上野のゾウのイメージがあるのかも。
賢い動物で、積極的に殺すなんてもってのほか、みたいな。
でも、「奈良の鹿」と同じく、「アフリカの自然公園のゾウ」は守られているわけ。
そうなると体の差の分、被害もデカくなる。
畑を荒らされれば、作物は一つも残らない。
つーか、暴れたら踏み潰されて人が死ぬ。
そんな、ゾウ自体が引き起こす悲劇もあれば、それ以外の問題もある。
まず、先住民問題。
自然公園ができたあたりは、狩猟民族の生活圏だった。
が、追い出され、貧相な居住地に押し込められ、生活圏はサファリパークという観光資源にされている。
ここら辺は、前に専門的な学術書を読んで知っていたんだ。
でも、この本の方が百ページ少しで、どんなことが起こっているか切実な実感を持って教えてくれる。
そして、密猟問題。
象牙が高値で売れるため、国際的密輸市場がある。
狩猟の実行犯は、「畑を荒らされて作物が取れない」とか「三代前は生きていたはずの土地を追われた」とかゾウがいる自然公園の周辺の村の人たち。
現金を得るために、手を染めてしまう。
外国に密輸される、国際的犯罪なんだから、政府の高官のような立場の人が関わって関わって私腹を肥やしている……。
密猟を止めろ、と国際的圧力はある。
でも、キャンペーンとして逮捕されるのは、狩猟の実行犯。
日本の獣害問題とはスケールが違う。
でも、『鹿と日本人』と同じく、動物の人間の関わりを考えるきっかけになりました。
【4冊目】他に勉強できる本がある『ストーカー加害者 私から、逃げてください』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
ジャーナリストさんが「ストーカー加害者にアプローチしてストーカー被害をなくそう」という趣旨の本を出版することに、意義があると思う。
精神科医さんや臨床師さん、そして実際の被害者さんじゃなくて、ジャーナリストさん。
客観的に世間一般へ、社会問題をさらに周知する力があると思うから。
でも、ジャーナリストさんの欠点ももちろんあって、それが悪いように出ている一冊でもあった。
急に、「今時の若い子は、SNSのせいでストーカー予備軍になっている」っていう話を始めるとか。
それに、ストーカーの加害者とみなされた方にインタビューされてるんだけど、畳み掛けるような質問をしました、とか書いちゃってるとことか、ジャーナリストのエゴを感じてしまったり。
ストーカー問題を扱ったものとしては、被害にあったライターさんが赤裸々に綴った『ストーカーとの七〇〇日戦争』の方が勉強になりました。
【5冊目】震災テーマを不誠実に、商業化しないでほしい『3.11霊性に抱かれて 魂といのちの生かされ方』
※このタイトルはKindle Unlimited対象ではありません
以前、学部生が中心となった『呼び覚まされる 霊性の震災学』を読んだんですよね。
で、「○○の人は閉鎖的だから〜」という偏見で論を展開してて、「おいおい」ってなったり。
というわけで、ちゃんとした学術的な本を読みたいなーって借りてきたら、同じゼミの学部生の本だった。
あのさー……。
自分の意見という終点に向かって、事実と引用を並べてるって感じ。
数十ページだからこそ、事実や、そこに潜んでいるものを感じとって言語化することに全力を注いでほしい。
結論はそこから見出して、それから参考文献や引用文献を探す。
っていうのが、こういう学問での手順だと思ってる。
そもそも、大事なところがちゃんとしてない。
どうやって調査・インタビューをしたかをちゃんと書く。
論じる上で、キーワードは、既存の使われ方などをまとめつつ、この論での定義を決める。
ここまでをちゃんとしたら、慣れていれば3ページくらいで納められるけど、6ページくらいは使っていもいい。
議論の土台になるから、絶対に手を抜いちゃいけない。
インタビューをしていたら、ちょっとこのパートで10ページ近くなるかも。
どんな選定理由でインタビュイーを決めたか。
インタビュイーの簡潔なプロフィール。
どんな状況で聞いたか。
どんな方法で行ったか(質問を決めていたか、質問を決めていたが順番などはその場で決めたか、特定の質問は決めず傾聴に徹したか)。
ここら辺の情報がないと、読んでいても「え、このかた誰?」「なんで話を聞いてるのかわからない」ってなる。
状況や方法はちゃんと書くことは、社会科学的に正確なアプローチかという保証になる。
誘導尋問になっていません、ってある程度証明しないと学術的に信頼がおけるか、ってのがわからないんですよ。
学部生のレポート課題でも同じで、800文字だろうが、400文字だろうが、これを怠ったらいけない。
400文字はちょっときついんですけどね。既存の議論をまとめて、定義を決めたら半分くらい使っちゃうので、どれくらい短い言葉に代替して、削って……みたいな作業になりがちです。
話がそれました。
卒論のテーマを決めるためって、あとがきにも書いてあるんですよねぇ……。
学術的に足りないところは卒論までに直したらいい、ってことなのかもしれないけど。
震災ってテーマでそれやるの、ちょっとどうなのって。
震災以外だと書籍化しないのかもしれないけど。
本出しましたって就活とかのガクチカのネタになるしさ。
それでいいってことなのかもしれないけど。
民俗学・文化人類学は、あんなに人文科学で科学的には割り切れないってことに向き合ってるのに。
だから社会学は……って言われても仕方ないですよ、これは。
なんかね……。
最低限さ……。
書籍化するなら、最低限、参考引用文献のタイトルが間違ってないかくらいはチェックしておいた方がいいんじゃないですか?
編集者さんも校閲者さんも、「誰かがチェックしてるだろう」で気づかなかったのかもしれないけど。
まぁ、多いんですけどね、この手の間違い。
特に、平仮名・片仮名・漢字、どれでも掛ける場合。
だからといって、著者があえてそうした、ってことだから間違えるのはいけないんです。
そういうところばっか目立つんですよ。
学生さんや、ゆえあって論文を書かないといけないような方は、本当に重々気をつけてください。
それでは最後に。
皆様の読書ライフの充実を祈って。
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