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【単巻5冊読書感想⑤】『呪いと日本人』『鬼と日本人』『ことばの地理学』『「助けて」が言えない』『感じる経済学』

 今回は、人文科学系のタイトル5冊です。


【1・2冊目】また日本人シリーズが読み放題に!!『呪いと日本人』『鬼と日本人』

 BOOK・OFFでなんとはなしに買った『神隠しと日本人』が神すぎる論調で小松和彦さんにどハマりしています。

 『異界と日本人』についで、また日本人シリーズがKindle Unlimitedに登場!!

 結論がちょっと飛躍してるんですけれども、そこがいい!!

 テンション爆上がりです!

人を呪うのも、当然の人間心理『呪いと日本人』

 陰陽師、僧侶、呪いに携わっていたことは間違いない。けれど、彼らと彼らの雇い主である権力者は呪いの詳細を表沙汰にしたがらない。
 ただ、呪詛の濡れ衣の着せあいという政治が歴史に残るのみ。

 たまたま民俗学の調査で著者が訪れたのは、呪いが日常にある村。
 権威者の呪いの詳細は不明。だからこそ、現代に残った呪いの日常から、日本の呪いの歴史に迫る一冊。

 呪詛返しの呪文や、蠱毒の詳細などなど、呪いの詳細も。
 呪いの大御所、菅原道真崇徳天皇もバッチリ出てきます

 人を呪う

 科学が普及した現代で、どこか馬鹿らしい響きがありつつも、やはりおどろおどろしいものも残る言葉。

 男を寝とった女を恨む。
 出世争いに勝った奴を恨む。
 社会問題を解決しない政治家を恨む。

 恨み疎み羨む感情だけで本人の意思に関係なく、生霊は人を呪い、家つきの動物は人を害する。
 呪いというのはそういうもの。
 人の当たり前のケガレに分類されるべき感情の発露。そして、それはやがて祓われる。

 死霊となって祟り、調伏できなければ、崇めて神とする。

 だけど、その呪いのシステムは現代に残っていない。
 歴史の中に、あるいはオカルトというイロモノにしか。

 人を呪わずに、その感情を果たそうとするとどうなるのか

 ちゃんとケガレ(=社会問題・不況・格差エトセトラ)を祓えないお上。
 その権力層を呪うこともできない社会。

 間接的に晴らさざるは、直接的になるしかない。
 それが、現代社会だ。

 というのが、この本の結論。
 「呪い」「呪詛」の言葉のように心にさざなみを残す、でも論理展開に興奮せざるを得ない!!

 で。

 これを読んで思い出したのが、元総理の銃撃事件

 じゃぁ、呪いのシステムを現代に復活させるには?
 というのは難題すぎるので、ここでは言及しないことにして……。

 心の安定には、影である呪いも必要なんでしょうね。

 そうなるとやはり、神父への懺悔とか神への祈りとか宗教が生活に根付いているキリスト教圏は「つよい」んでしょうね。
 マイナス感情や行為を宗教というフィルターに通して浄化させられるシステムが残っているってことなので。

 とはいえ、日本で「宗教的」なものを求め出すと、新興宗教でお金を吸いとられて貧困最下層か、似非科学で児童が危険に晒されるか……。
 ケガレの再生産システムだけが稼働しまくって、祓いのシステムが全く作動してない。

 地獄か

 現世が地獄になってるよー……。

 救いがなさすぎるので、「祓い」を担っているシステムに心当たりがある方はぜひコメントを寄せてください……。

日本人にとって鬼とは何か『鬼と日本人』

 鬼。

 誰もが馴染みのある、バケモノ。

 まーあれです。

 日本人シリーズの合本に含まれてず、他と表紙の感じが違う。
 あたりで、KUになっている日本人シリーズの中でも読むのが後回しになってしまったんですよね。

 まぁ、わたしにとっての鬼って、女性向けライトノベル『封殺鬼』のイメージが強くて、日本の鬼の思想史とかあんまり興味ないんですよね。
 実は。

 そういうところもあって読むのが遅くなりました。

 結論が飛躍するのがいい! のですが。
 このタイトルは小論とエッセイを収録している構成なんですよね……。

 ぬぬぬぬ……。
 面白さが半減……。

 「鬼とは、朝廷を中心とする京都、その外の敵」
 「異類婚姻譚の異人と人のハーフを読み解く」

 大体、この二本が含まれた一冊って感じですね。

 面白くないくはないんですが、んー……って感じ?

 昔話の類型をもっと体系的に知りたいなーと思っていたので、それ関連のタイトルが出てきたのが嬉しかったかな。
 まぁ、次につながる読書ではありました。



【3冊目】地理×方言。見えてくるものは……?『ことばの地理学 方言はなぜそこにあるのか』

 方言はなぜそこにあるのか
 それを探求するのが方言学である。

 そう方言学を位置付ける著者。

 使われている方言を日本地図の上に示してみると……?

 ポツリとある「ン」。それは塩の道が運んだものだった。
 だが、交易があっても言葉が似通うとは限らない……。

 大事な相手の言葉を真似る。
 あるいは、合理化と簡略化が進行した結果。

 そこに「その言葉」がある理由が見えてきます。

 そして、最終章では、あの柳田國男の周圏論を否定します。

 周圏論とは、都で生まれた言葉がどんどん伝播していって、その結果、同心円状に言葉の分布が見られようになる。
 という理論です。

 都会だけで言葉が生まれるとは限らない。
 そして、その言葉を無条件で近隣が受け入れるとも限らない。

 一つの言葉それぞれに歴史と背景がある
 統一的な理論を見出そうとするのは無理があるんじゃないか……というのがこのタイトルの結論かな?

 著者の研究を紹介していくスタイルなので、ちょっと途中で集中力が切れかけたけど、全体を通して面白かった。

 このタイトルは地理的な要素を扱っているけど、業界用語やネットスラングも一種の方言かもと思いました。

 昔から職能集団内の言葉はあっただろうし、そういう職業としての階層も一種の距離。隣接するコミュニティがあるという点でも一緒ですよね。

 地理的な距離から伝播を探っているけれど、インターネットの情報化社会でその距離は変化してます。
 そうなると言葉の伝播や変化はそれ以前と違ってくるはず。

 そういう視点からの方言学も見てみたいなと思いました。



【4冊目】「助けて」=援助希求。『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか』

 いろんな分野・支援対象の専門家が、「助けて」=援助希求をテーマに書いたもの。
 雑誌『こころの科学』に掲載された特別企画をまとめたものです。

 福祉や医療に関わっている方にはぜひ読んでほしい一冊。

 かなり専門的な内容になっています。
 けれど、これ、Kindle Unlimitedの対象タイトルなんですよ。
 こういう専門的なタイトルもスコッパーして読んでいきたいですね。

 言葉の習得も難しい知的障害者。
 辛い心を自傷で晴らす若者。

 「助けて」をいえない者を自己責任と断罪する社会。
 支援者にもメシアコンプレックスという側面がある。

 熊谷晋一郎さんの「自立とは依存先を増やすこと」という有名なお話も入っています。
 雑誌の掲載で一章が短いので、気になるトピックだけ読んでみるのもいいと思います。



【5冊目】とっつきにくい経済学を身近に!『感じる経済学』

 経済学

 興味はあるけど……グラフとか数式とか出てきたら拒否反応!
 そこから読み進めることができない。

 なんて、経験はありませんか?

 コンビニでコーヒーは大成功。でも、ドーナツは失敗した。
 それはなぜ?

 「確かにコンビニでコーヒーは当たり前に買うけど、ドーナツ? なんて売ってたことあったけ?」と誰もが覚えのある身近なトピックから経済学を解説してくれます。

 身近なところから出発して、経済学の基本知識をわかりやすく解説。最後には、日本の経済停滞に迫ります。
 経済学の入門にぜひ手に取ってみてください



 それでは最後に。
 皆様の読書ライフの充実を祈って。

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