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【マガジン・エイトデイ】高校生の頃、クラス全体で彼氏用にマフラーを編むというのが流行った。



今、思うと、クラス全体は
仲良かったわけではないのに
なぜか、各グループで編む子が
それぞれにいた。

グループ自体の境界線が
わりと曖昧で、ひとりでいても
グループでいても、また
違うグループと話していても、
そんなにとがめられない
クラスだったので、わりと
浸透しやすかったのかもしれない。

ギャルもヤンキーも
オタクも、普通の子も
そのグラデーションさまざまな
ヒエラルキー関係なく

彼女たちのソワソワ、ウキウキは
とても可愛くて純粋で、編むという
イベントを面白がっていた。

「やばい、クリプレ間に合わない。」
授業中の机の下でせっせと編む
彼氏持ちの必死さにほほえむ。

かわいいなあと、眺めていたら
彼氏など全く疎遠の私ですら
やってみたくなり、
教わることになった。

まずは、本屋さんへいく。
編み物カタログ本を見て
男性が巻いてるマフラーを眺める。
まだ毛糸と道具だけでは作れないので
編み方の図案が載っている
この本の中から、デザインを選ぶ。

目についたのは
灰色と白と紺の霜降りの毛糸。
(霜降りに時代を感じるなあ)
いちばんかっこいいモデルが
巻いていたから。

「自分用やしかわいい色でいいんちゃうん?
バーバリーぽい色とか。」

当時はバーバリーのマフラーに
プラダのリュック、ルーズソックスが
いわゆる女子高生憧れの神器であった。

編み物先生の子に言われるも
「私の性格上多分ダレるから、
架空の彼氏に編む。」と返事する。

「....そっか。出来る頃に
彼氏いてるかもやしなあ。」
まったく優しい編み物先生である。

私が架空の彼氏に編み始める頃には
彼氏いない族にナイスアイディア
と讃えられ、いつの間にか
みんなも、流行りに乗っかっていた。

そこからの女子高生
彼氏妄想大爆発である。

マフラーを編むには、設定が大事である。
どんな人に巻いてもらうかで、
編むポテンシャルが変わる。
予算も変わる。

稲葉さんだ、木村くんだ
慎吾くんか剛くんどっちにしよう。
いやいや、民生っしょ。
いやここは二次元でしょう。
流川楓一択!!!!
ドラちゃんー(え?)

クラスの妄想に豪華メンバー集結。
そこから妄想彼氏の惚気もブーム。
(時代の香り)

実際彼氏持ち族は現実的に
シンプルな編み地を選び
妄想大爆発族は入り組んだ
編み地に果敢に攻める。

初心者なのに。
仕組みも成り立ちも
手も慣れていないのに。

高尾山と
南アルプス
登山で言うと
そのくらいの差があるにも
かかわらず。


編み物の平面図とにらめっこして
無駄な力に肩こりながら
やればやるだけカタチになる
編み物がとても面白かった。

やってもやっても
報われない家庭環境に
辟易していたから
やれば進むって快感の
トリコになった。

(勉強に
それを求めればよかったのにね、私よ。)

クリスマス前
テスト勉強を理由に
ほとんどの編み物は断念されていた。

私は勉強もせず、ただひたすら
編み物を進めていた。
通学の電車でも
ウォークマンを聴きながら
ラジオを聴きながら。

側から見ると微笑ましい
穏やかな光景だけれど、
聴いてる音楽は
ブルーハーツや
マイケルジャクソン、
スティービーワンダー
シャンプーなどなど

編み物をする高校生の私は
ガンガン行こうぜモードだった。

飽き性というか
なぜか終わりが近づくと
全部諦めてしまう癖がある
私からすると
自分からやりたいと思って
やりきった体験は
読書以外
初めてだったかもしれない。

もちろんクリスマスには
間に合わず、2月頃にやっと
完成した記憶がある。

ちなみに、彼氏ができた記憶はない。

これは1回だけでは、絶対忘れる。
毎年なんでもいいからひとつ編む。
そう決めていた編み物。

帽子
セーター
ベスト
レッグウォーマー
アームウォーマー
靴下


ここ7年ほどできておらず
ずっと冬になるたび気になっていて
この冬、久しぶりに
ようやく編むことになった。

うきうきワクワク毛糸を選ぶ。
今の霜降り人気は棚の隅っこだった。

もう忘れているかもしれないと
手に取ると、するする動く。
手が覚えていてくれた。

継続するという方法は
自分のことを、ちょっとだけ
信頼してもいいやつだなあと
思えるから、割と気に入っている。

新しく始めるはいつでもできるけれど
コツコツ積み上げるには、
インスタントでは
まかなえない。

高校生の頃の私のように
イヤホンからは、ノリの良い音楽
少し変わったのは
モータウンやジャズ
ドゥーワップも含まれる。
YouTubeや
Spotifyにも踏み入れる。
相変わらず好きなラジオ。

歴代の彼氏で
編み物を、喜んで使う人には
出会えなかったけれど
それでも私は編む。
結局、編みたいだけなんだよなあ。

さて。5歳は帽子とマフラー
使ってくれるでしょうか。
まもなく完成。

では、また。

果歩

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