【日記】Midsommar見ました。【ネタバレ注意】

(今日は思い立ったのでちょっと長めです)
 こんにちは。最近私は外に出てないので、次に出たときにちゃんと健康でいられるかが心配な今日この頃です。前には自律神経が崩れちゃったので、次はそうならないようにお祈りしています。というか外見てると日光の反射で目が疲れるんですよ。これもう自然災害じゃないですか? 日光のルクス高すぎません? 高すぎてちょっとオレンジ色に見える気さえしますよ。

 さて、私は近日英語しか喋ることの許されない場に行くことになっているのですが、その運びで耳を慣らすために選んだのがMidsommarです。夏至は英語でMidsummerらしいですが、この映画はMidsommarなのでお気を付けください。今調べたらスウェーデン語の綴りらしいですね。紛らわしいぞ。

※ネタバレが思いっきり含まれるので、見たくない人はUターンを!

 結論:怖そうなんだけど怖くなかったです。私のせいな気がします。

1.前提の心意気


 Midsommerを見る前、私が周囲の評判から抱いていたこの映画の印象は

「和ホラーとか洋ホラーとかじゃなく、精神に来る恐怖なんだって。面白そう!」

勝手にハードルを上げる私

といった感じでした。
 あらすじでは主人公ら大学生一行がようわからん村の頭おかしい風習に巻き込まれていくって感じだったので、不安とか鬱とかの要素を用いてSAN値ごっそり削っていく構成の映画なのかな、と。そういう精神的恐怖系の作品は好きである自覚があったので、その欲求を満たしてくれると大変期待しておりました。想定していたのはまどマギとかグリザイアの果実とかの、いわゆる鬱アニメの系譜です。グロテスクとかびっくりとかの恐怖抜きに、ただただ精神負担をかけてくるタイプの作品の良いところは、自分が何か悪いものに巻き込まれた可哀そうな人の気分になれることと、単純に人が絶望しているのが面白いところですかね。

 で、実はちゃんとしたあらすじを見たのは視聴直前です。そこでの新事実は、主人公が精神不安系の病気? (でないにしろ、その方面に敏感である)と。生まれてこのかた精神病にかかったことがない私ですが、創作で映される精神病には理解があるつもりです。というか現実の精神病も。ただ、そうは言ってもかかったことがないのですから、体験した人とそうでない人の大きな壁を想像して、もしかすると共感できない突飛な壊れ方をするのかもしれない覚悟をしました。そうであった場合、私はその「対象者」ではないから、この映画の魅力に気づけないこともあるわけです。

 加えて、私はこの映画をちゃんと視聴するというか、「ひとつ残らず解釈してやるぞ」という心意気はあっても準備はなかったので、カルト問わず宗教への前提知識はありません。もしかすると、カルト的な恐怖というか、民俗信仰? のような部分に深く関わっておいたら感じ方も変わったかな、と軽く反省しております。
 ほんの少しは人より宗教面に詳しいとは思っています。五十歩百歩、で片づけられるくらい。唯心論的なので「宗教なんて馬鹿げてるだろ」というスタンスではなく「宗教もいいよね」辺りの座標にいる人間です。

 そういった私は、いよいよ視聴を始めました。

2.演出面:綺麗で繊細

小さい音響、でも整ってる

 最初に思ったのは、音の小ささです。スマホの目盛りで、普段は2~3でYoutube等を鑑賞している私ですが、この映画については4か5くらいが丁度いいと感じました。登場人物の話し声が小さいだけとか、広い範囲の音量を使って表現しているとか、そういう話ではなく、映画全体の音声出力が他の映画よりも弱いんです。ただ、鑑賞に支障をきたすようなことは特にありませんでした。ただ小さいよってだけです。もしかすると、音響にこだわりすぎてあまり強く出力できなかったのかもしれませんね。元から大きくしちゃうと、どうしてもノイズとか音質の低下とかが起こっちゃうとか。私には想像できない範囲です。

 実際、音が効果的に使われている部分は多かったですね。序盤、警察らしき組織が遺体処理をする際のブザーみたいな不協和音だったり、村の人たちによる声のハモリ、感情共鳴あたりは不気味さがよく出ています。解析すれば不協和音とか不快音とかに当たるような音程で、こちらの緊張……というか胸のざわつきをより増幅させていきます。映画館で聞いたら重低音とサラウンドのスピーカーで更に恐ろしい音を出していたんでしょうね。どうでした、劇場でリアタイ視聴した皆さん?

とにかく芸術的な描写

 って思いませんでした? 最初から行われる鏡やガラスの反射による登場人物の撮影とか、画期的とまで言わずとも芸術的です。(三面鏡なんかはホラー映画のドッキリによく使われる道具ですけど、単純にキャラを収めるために使う方式は初めて見ました)あとは部屋への日光の入り方だったり、物の配置も一つ一つ考えられてるんだろうなぁ、と伝わってくる出来でした。特に動かないカットは一枚の写真として売り出せるほどに綺麗な気がします。

 村に入ってもそうです。白夜という仕掛けと(偏見ですが)カルト的な白い布服、それと大自然は一見、明るい印象を与えてくれます。こんな平和そうな村で恐ろしい儀式や風習が行われている、っていうのが皮肉で良いですしょね。それに、ホラー系の映画と銘打っているのに本舞台を白夜に指定する大胆さ、意外性も楽しむには十分です。Godzillaとかpacific rimとか(例が特撮系ばかりですね。趣味ゆえの偏りです)、洋画ってずっと暗い印象があって、劇場ではともかくいざスマホとかパソコンで視聴しようとすると暗すぎることがほとんどで、実際Midsommarの序盤も暗いかなぁと感じていた訳ですが、本編がずっと明るい中での出来事だったので見やすくもあると。やっぱホラーは夏に限りますね(?)

 あとは死体にも触れなくてはなりません。私が洋画見てないこともありますけど、あんなにしっかりグロテスクを見せるのも珍しいですよね。大抵は少しでもアップにすると特殊メイクとか人形であることがバレて観客が白けてしまうので、遠目からのアングルで映すことが多いのです。しかし、Midsommarはしっかりと恐怖を与えるためならアップアングルもいとわない姿勢でした。おじいさんの頭がハンマーで殴られる時なんかは素材の感じが出ちゃってましたけど、リアリティのある死体が続きました。ところで熊の死体は本物なんですかね。熊くらいなら本物の死体見せてきてもR15で収まるような気はしますけど。
 勿論、下品にグロテスクをばらまく映画でもないです。必要最低限、恐怖を与えるための計算された、かつ美しいグロテスク。Beautiful grotesqueです。

3.演技:普通(解釈しきれていない部分)

 先に私、精神病の類にかかったことがないという話をしたんですが、それが演技への感性に影響していますね。主人公の不安症は大泣きする、しょっちゅう連絡する、なんか無理しがち、というような表現のされ方をされていて、リアリティがある雰囲気は汲み取れました。私にはそこまでです。
 外の人のレビューを見た感じは結構リアルで追体験さえ覚える解像度の高さらしいです。私のようなエセ精神病人にはそこまでの理解が及ばないもので、大変心苦しい限り。
 主人公以外についても言うことはないです。この映画、やっていることが不気味すぎるっていうのが主題で登場人物の驚きとか恐怖は最悪、形だけあればいいので評価がしづらいです。信者の皆さんもニコニコしつつ、感情共鳴の際はオーバーにやるだけで雰囲気ができますから。(その自然さを出すためにどれだけの努力が必要かは分かりませんけど。少なくとも私には作れない雰囲気でしょうね)終盤、燃える中で苦しむ演技についても、演技そのものに心を抉られる感情は特にありませんでしたね。

 全体的に、私が演技を詳しく見ていないのが分かると思います。

4.ストーリー:何となく分かるけど刺さらない

人間の尊厳を破壊しようとする監督

 肝心のストーリーなんですけど、上の一言に尽きる印象でした。大衆の感じる性への神秘性に泥を塗るような汚物さだったり、本人の感情に周囲が勝手に共鳴する挙句全く違う形の感情に誘導したり、村の都合だけ考えて外からの供物(大学生らですね)を使い捨てたり。みんな大好き「倫理観」を知り尽くした人が跡形もなくぶっ壊そうとしに来ているのがよく分かります。そういう共通性に依存している人には耐えがたい苦痛を覚えるでしょうね。とにかく人間として気持ち悪さを感じる描写の詰め合わせセットでした。
 性行為シーンの時、私おやつ食べてたんですよ。流石にちょっと吐き気してきてゆっくり食べましたからね。メロンパンは美味しかったです。

 書きながら思った話、この設定は三大欲求とかも消しに来ているのかな、なんて。
性欲:三親等程度での性交、必要に応じて外部と性交して血統補充、風習のために近親で行うことで意図的に障害児を誕生させる、と必要な場合にのみ事務的に行う。
食欲:よく分かんないけど美味しくはなさそう。というか誰かちゃんと間食してたっけ? 飲み物はトリップするための道具として使っている。
睡眠欲:設定が「白夜」なので、寝ようにも寝れなかったりする。一応宿舎があって寝るけど、お昼寝をしたりはしないし、あくまで「死なないために寝る」程度の扱い。
とまぁこんな風に、三大欲求の否定は少し入っているんじゃないかな、と。冒頭の「コミューン」発言も、社会主義的な効率重視の生活を意識させます。
 あとは自殺とかまで含めて、禁忌は沢山あったように思えます。道徳心高い人、正義感の強い人辺りはあてられるかも?

同調圧力の「コミューン」

 上で触れたのでそのままこの話も。流石のカルト集団ということで、同調圧力が半端ではありませんでした。「これはちゃんとした儀式だから、参加してくれよな!」という押し売りが随所で行われます。あの人たちって外の世界の一般的な相場は学んでるんですかね。「夏」に学びに行くんでしょうけど、出た当初とか「なんでこいつ80なのにまだ生きてるんだ?」とか戸惑いそうなもんです。それにその常識があったら外の世界の人の扱いももうちょっと考えてほしいですよね。突然自殺見せるとか、供物だと思ってるにしても刺激が強すぎます。考えたらもっとスムーズに供物を供物にできるでしょうに、あくまで村の風習を常識としているあたり、本人らはスタンダードだと考えているんでしょうね。
 同調圧力に関しては日本人の右に出る者はいませんから(多分)、あるあるというか「あーこういう奴らいるよなぁ」って受け止め方でした。共食とかパーソナルスペースなしとか、うーん、考えるとイライラしてくるな。死ぬ死なないに関わらず、コミュ障体質の私はあの村で上手くやっていけそうにありません。

倫理的な怖さ?

 結局、私はこの作品の恐ろしさというか、皆の感じている不気味さに触れられませんでした。ただ、もしかすると感じたのは「倫理的恐怖」だったんじゃないかな、と。自分が常識だと思っていることが通じない、ありえない風習を押し付けられて逃げる術もない、という状況で二時間耐えられない人がいるのだと、勝手に考えております。
 だから、恐怖というよりストレスに近いですよね。ストレスの副産物として、理解できないように脳が処理すると結果的に不安で恐怖に変わる、とか。胸糞の悪さみたいな部分がこの作品の恐怖の根源なのかな、と。

 そう考えると、私に刺さらなかったのもうなずけます。
(ここからは私が中二病だと思って読み進めてくださいね)
 私自身、あんまり人間の倫理観というか、共通意識みたいなのが好きになれない体質だもんで、既にこの映画の提供してくれる倫理的恐怖に耐性ができてたんじゃないかな、と思います。知らん奴と動物的に性行為することとかも、別に種の保存という観点からすれば至極論理的な行為ですし。都合が悪かったら殺すとか、自分らのために利用するとかも(流石にかなり柔らかいものにはなりますが)結構横行している行為ですからね。その考え方で行くと、私は現実世界全体がホルガ村だった、みたいな。そういう解釈をするなら結構腑に落ちる部分があります。
(中二病終わり)
 まぁどうであれ、私にこの映画を「怖い」と思える素晴らしい感性がなかったことが、今は結構悲しいです。あ、そういう意味では心が傷つけられたので、恐怖ではありますね。

5.総評:一般人には滅茶苦茶怖そうな映画

 私は感じた側の人間ではないので何も断言できない節はありますが、Midsommarは村の異常性とか特異性を売りにしている映画のような気がするので、平常な人ほどストレスとか違和感を感じやすいのかな、と想像しています。あんななりしてますけど、狙ったのは案外「大衆受けのいい映画」だったのかも。

 レビューも見た感じでは分かれてて、「一生見たくない」と感じる人と「ノーダメージです」と感じる人がいて、結構面白いです。この映画を材料に用いて国ごととか性格ごとにリアクションを推計すれば、一般人の出現する偏りとかが分かってきそう。
 あと、私の評価は全体的に「へぇ」みたいな、ある種の客観性をもって行っているのも要因の一つの可能性はあります。もし主観的に、映画にのめりこめる、主人公への感情移入性が高い、みたいな人は心がズタボロになる内容です。(私もそういう人だと思っていたんですけど……悲しいです)そういう人は気を付けて視聴しましょう。ここまで読んでいる時点で大体は視聴済みだと思いますけど。

 見て損のある映画ではないと感じます。私もこの映画を教訓にカルト宗教に……ハマるときは他の人にあんまり迷惑かけないようにしようと思います。別に同士が集落でこぢんまりとやっている分には問題ないですからね。
 以上!

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