the cabsというバンドの話をしたい。

the cabsというバンドがいた。

みなさんはご存じだろうか、the cabs。
ジャンルで言うといわゆるマスロックと呼ばれる音楽をやっていたバンドである。名前も知らないという人も多いだろうから、まずは代表曲を聞いてみてほしい。

どんな感想を持つだろうか。「変拍子のオンパレードでよくわからない」「ドラムがうるせえ」「突然のシャウトにびっくりした」などなど各々思うところはあるだろう。cabsの音楽への好き嫌いも別れるところだと思う。僕は好きです。このバンドが。

もしかしたらボーカルの声に聞き覚えのある人もいるかもしれない。cabsのメインボーカルはKEYTALKというバンドのベースボーカルも担当している首藤義勝である。曲の方向性があまりにも違うのでKEYTALKファンでもcabsを聞いたことがない人も多いのではなかろうか。
ドラムは現plentyのドラマー中村一太。変拍子と邦楽ロックバンドとは思えないほどの手数。フュージョンかよ。でもこの人のドラムがないとcabsはcabsじゃなかったと思うのです。
そしてギターは高橋國光。作詞と作曲を担当しているのが彼だ。この世界観を作り出している張本人。ギターもびっくりするくらい上手く、自分の頭の中にあるイメージを音としてアウトプットする技術、感覚に長けていると感じる。


このバンドの魅力は世界観にある。
抽象的だが確かに文学的で美しい歌詞、同じく抽象的でどこか掴みどころが無く空間的だがしっかりと芯の通っている曲。爆撃機のようなドラムサウンド、カミソリのようなギター、泣き声のようなシャウト、それを包み込みまとめる優しい義勝の歌声。
雰囲気で酔える音楽だ。僕はcabsをずっと聞いていると不思議と中世ヨーロッパに迷い込んだ感覚を覚える。みなさんはどうだろうか。



このバンドには16歳のときに出会った。そのときにハマっていたのはハヌマーンや東京事変やモーモールルギャバンだったと記憶している。友人におすすめされてCDを借りて聞いてみたが最初は全くピンと来なかった。「うるさいな」と感想を持ったことを強く覚えているので、初めて聞くような音楽に良くも悪くも衝撃を受けたことは確かなのだろう。
その後月日が流れて、少し心が不健康だった時期があった。自室の本棚を漁っても、好きな映画を見ても心は癒されなかった。そんなときにふとcabsをもう一度聞いてみた。ぴったりとハマった。國光の書く曲で少し日々が楽になった気がした。
僕にとってはそういうバンドです。皆さんも日々に疲れたとき、the cabs、思い出してみてください。

残念ながらthe cabsは2013年に解散している。
今は3人もそれぞれの音楽活動を続けている。それぞれを応援してはいるが、ファンとしてまた3人でやってほしいという気持ちもある。
もうライブで彼らを見ることはできないが、音源はこの世に残り続ける。もしもcabsに興味を持った方がいれば是非アルバムを聴いてみてほしい。



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