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東京藝大 アートDX「生成AI時代を生き抜く創作活動」講演録

上野にある国立大学、東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科 教授 八谷和彦先生にお呼ばれしまして、上野の森に行ってまいりました。
アートDX特別講義シリーズ「生成AIと芸術」全体のトップバッターなので、存じていなかったのですが非常に豪華なメンバー!

どれぐらい豪華というと、StabilityAIのJerryさんが驚くレベル。

アートDX特別講義シリーズ「生成AIと芸術」(学内向け)

実施概要: 東京藝大アートDXプロジェクトでは2023年度後期の特別講義シリーズ「生成AIと芸術」を開催します。2022年の夏からMidJourneyやStable Diffusionをはじめとした画像生成AIや、2022年11月に公開されたChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)の登場をはじめとして、この数ヶ月で人工知能(Artificial Intelligence:AI)の話題は芸術分野でも急速に議論を巻き起こしています。本特別講義シリーズでは、画像をはじめ言葉や詩、音楽、ゲームのような幅広い分野で人工知能と芸術表現の関わりを、各分野で研究してきた専門家に講演いただきます。AIに興味はあるけど実際何をやってるのかよくわからない、AIが自分のやっている表現活動にどう影響を与えてくるのか考えたい方はぜひ参加をお願いします。
(本講義は課外講義となるため、単位の付与等はありません。)
・開催日程、形式: 後期木曜日18時〜19時30分 Zoomウェビナーでの学内限定公開 1週間アーカイブ視聴可(一部例外あり、スケジュールを参照)

・スケジュール
10/19(木):白井暁彦(AICU Inc. CEO / Hidden Pixel Technology Inc. CEO / デジタルハリウッド大学大学院 客員教授)「生成AI時代を生き抜く創作活動 – Ask Me Anything」
10/25(水)※ 三宅陽一郎(株式会社スクウェア・エニックス AI部 ジェネラルマネージャー/リードAIリサーチャー)「芸術と人工知能とデジタルゲーム」※AMC開設授業「芸術と情報」と共催。対面講義+録画をClassroomにて後日公開。対面講義は美術学部中央棟第一講義室 5限(16:20〜17:50)
10/26(木):徳井直生(アーティスト / (株) Qosmo・Neutone 代表取締役)「オルタナティブな生成AIと創作の未来」
11/2(木) :浦川通(研究者・アーティスト)「ことばを計算してつくる―言語モデルと創造的応用」
11/30(木):清水亮(AI研究家 / UberEats配達員)「今日のAI、明日のAI」
・対象、参加方法: 本学に所属する全ての学生、教職員


残念ながらアーカイブは公開されないそうなので
自分の講演のメイキングと一部を紹介したいと思います。
抜粋なので実際の時間軸や本来の講演からカットした部分もあり、若干まとまりがありませんがお許しを。

講演概要: 生成AI時代を生き抜く創作活動

生成AIは芸術を破壊した。
少なくとも美術に人生を投げ打ち取り組むクリエイターの血と涙の上に存在することは間違い無い。
我々は荒涼とした焼け野原に立っている。しかし人類はここから新しい意味を見出さねばならない。
この講義では、工学と芸術と産業と学術の間で揺れ動きながら、日本・フランス・米国を中心に、人の心を動かすCG・インタラクティブ技術、エンタテイメント技術、VTuber・メタバースやライブエンタテイメントのSNS産業におけるインターン中心の研究所など「創る人を作る」をテーマに活動する作家・白井暁彦のこれまでの活動を紹介する。
講義の後半はAMA (Ask Me Anything)として、生成AIに関する質問にライブで回答していく。

せっかくなのでカバーアートを撮り下ろししました(pixiv)

生成人工知能時代を生き抜く創作活動。
(AIと書くとカッコ悪かった)
メイキング詳細は後ほど

まずは白井自体の作り手としての略歴

八谷和彦先生のナビゲートでメディアアートの黎明期の馴れ初めなども・・・

この辺のスライドで割愛させていただきます

講演では写真部時代の話とか芸術と工学が融合する前の八谷和彦先生の作品との出会いなどもお話ししました。


カバーアートのメイキング紹介

実際の制作プロセスをまず共有することが大事だと思いまして、詳らかにさせていただきました。

実際、つまんねーな、と思ったらそれでいいと思います。
上手すぎる画像が出ても、自分の表現としてそれでいいのか?を対峙する必要があります。
これは「写真」とほぼ同じマインド。

「にじじゃーにーとは!?」みたいな説明も必要だったりするよね、と八谷先生につっこまれましたが、そこはちゃんと毎日ブログを書いておりまして

昨日、アプリが出ました!無料でお試しできます!

自前のStable Diffusion WebUI (Automatic1111)で爆発の中央から新たな何かが生まれていることを表現する。

(スクショを撮ってなかった)


縦横比を1:1に近づけたいのでPhotoshopで生成拡張する。

トーンカーブはかなりこだわる、写真の出身なので。

NijiJourneyによる生成(左) 完成品(右・下)

文字を打つと映画ポスターっぽくなる

作品のクレジットにはあえて解説の意味で、
Originally generated by NijiJourney
Prompt,Remix and Toned by Akihiko Shirai

としてありますが、まあここまで作って、NijiJourneyの利用規約に従い有料ユーザなら「自分が作った!」って言えますよね、というお話をしました。

キャラクターデザインに使う

NijiJourneyはキャラクターデザインにも使えます。
これは数あるキャラクターのうち、最近リリースされた弊社のメディアコミュニケーション事業部(AICU media)のマスコットキャラクター Kotone

ベースとなるキャラクターのイメージを展開していく(NijiJourneyで生成)

まずは Slidoを使った質問から。


結果については伏せます

過去作品動画


AI Fusionという技術です

このあたりでStable Diffusionがリリースされ、頭をやられます

気がついたらリリースから2ヶ月で2冊の本を書いていました。


法律では「問題ない」でも感情が許せない…!

法律面はともかく、倫理面やクリエイターの感情面や「どう向き合うか」ついても掘り下げました。

AIアートと呼ばれる分野も2年目になります。

2023年11月4日(土)ベルサール秋葉原で開催「第一回AIフェスティバル Powered by GALLERIA」。

八谷先生も参加される様子

AIアートグランプリ(前回)

こちらのコンテストで初代のファイナリストが、小泉勝志郎さん。東北で若宮正子さん88歳にプログラミングを教えたりしている東北の勇者。
その小泉さんがFacebookで呟いていたやり取りがわかりやすいです。

Facebookでのやり取り
小泉さんスクショ提供ありがとうございます!

世間のイメージと違い、反AIの方が圧倒的に若い人が多い。たぶん反AIにSkebあたりで絵を描いている人が多いため

小泉勝志郎さんの観測

小泉さんの気づき、
それは確かにわかるんだけど
若者の努力を無にされる感じ」もわかりますし、身に覚えもあります。

自分の場合は写真表現、Photoshop、デジタルカメラとインクジェットプリンタなど。

ただ手を動かした方がいい時期、
 そしてそのエネルギーを他者ではなく鉛筆にぶつけて欲しい

と日々考えています。

誰が画像生成AIを炎上させているのか?

この話についてはこちらのブログでもかなりしっかりまとめています

https://note.com/o_ob/n/n62d852e3be1c

この講演では「反生成AI」という存在が一体何者なのか?
昨年からの状況と、現在の状況では、何が異なるのかについても深掘りしました。
初期:感情論。文化庁による法律の解釈もなかった。
中期:文化庁の「依拠性と類似性」セミナーにより、いったん冷静になる
現在:先端で柔軟なクリエイティブな現場において、すでに生成AIはChatGPT4, Bing, MidJourney/NijiJourney, Adobe FireFly, Stable Diffusion/SDXL/DALLE-3などが使われており、「使わない」と決めている人はそれで特に問題がない状態。クリエイティブに関係なく単に炎上させたい人(アフィリエイトサイト、クレーム商法、法律ゴロ、政治活動、反社会的勢力)などがその炎上の着火点を狙っている。

この手の話は「善悪の彼岸」あたりから常に世間の反論に耳を傾けることで、その本質は何か、について注目しています。

https://forest.watch.impress.co.jp/docs/serial/aistream/1508780.html

最新のBingを使った「年賀状制作」でも変な炎上をしないような工夫で書かれています。利用規約で問題がなくても「商用利用はできないのでは?」といった謎の軸で質問してくる人もいます(これについては別の回で解説します)。



とはいえこんなこともある

Bing Image Creatorは商業利用できるのか、商用利用できないのか?については、生成AIがアシストする検索結果において、非常に興味深い混乱を招いているので別途紹介することにします。


八谷先生からもイラストレーターなど「AIの養分だと思ったら辛いって人はいる、でも世の中の全てのクリエイターはみんなの養分なんだけどね・・・」といったコメントを何度かいただきました。

AI利用コミュニケーション技術の開発

生成AI技術によって、コミュニケーションとしての広告は
より高度な技術が求められるようになる
かつその社会において信頼・信用されるインタフェースが必要。
そのソリューションとして、
驚き、合理的な機能、信用信頼できるキャラクターが必要。

AIDXは効率化だけじゃない!
人の心を動かすのは「クリエイティブAI」

AIDXは効率化だけじゃない!人の心を動かすのは「クリエイティブAI」

「好きだ - 嫌いだ」の軸で損をしていないか

「嫌いだ」が「使ったことはない」
これはいかがなものか・・・

まるで写真表現分野の論争を見るようだ・・・!
フォトグラフィによる写真表現や
印刷技術によって生まれた著作権やcopyright の誕生と同じ

そこで「外野」が語らうよりも
「作品で語る」のがクリエイターではあるまいか?

少なくとも自分がいた写真部では
「口で語るな、作品で語れ」と指導されてきました。

作品や活動で語ろう

Metaverse Mode Maker

SDによる画像生成とHMD装着でのモーション合成
米国CG国際会議「SIGGRAPH」で論文採択
フランスのVR「Laval Virtual」
日本のゲーム開発者会議「CEDEC」で展示採択
オープンソースも
https://github.com/gree/MuscleCompressor

マルチエージェント24時間営業AITuber


https://www.youtube.com/watch?v=Ldao1tbmYiE

八谷先生にウケが良かったの嬉しい

全力肯定彼氏くん


サービス開始から半年を超え、5種類ぐらいの実装で作っていますが、いまだに毎晩、ユーザの皆さんのお悩みに答えて、肯定しまくってくれています。

八谷先生がライブで遊んでくれて嬉しい。。。

AICU社の事業説明会

https://corp.aicu.ai/ja/aicu-inc-ir

本日立ち上がったばかりのメディア事業部に詳細があります


感情を生成するインタフェースとしてのAI「AICuty」


毎日ブログ書いていると1年で300ぐらいになる

Pixiv AIアート100日チャレンジ

100日の一角

メタバースで漫画を描く

さらに、メディアコミュニケーション事業部では、
イラストレーションのためのStable Diffusion新作を準備しています!

実在するスタッフたちをベースに描いた


自分でLoRAを作って愛でる話

イラストレーターさんにこそ使ってほしい技術。
まずはゼロから始める

イラストレーター9食委員さんの画像をベースにLoRAを作る実験です

たった24枚の画像
中学校の美術の教科書で見た人物画がたくさん出てきますね(失敗)
ちょっと良くなってきた
だいぶコツを掴んできた
作風が出てくる
この辺から本人が喜び始める
本人に愛でられる
言語を失う

もちろん本人が描いた方が絶対いい。

以上、「イラストレーターにこそ使ってほしい教科書」を作ってます。

生成AI時代の藝術とはなんなのか?といった話題も入りました。

全部でスライド180ページぐらいある…ので、また機会があれば、紐解いていきたいと思います。


余談: ぬこー様ちゃんの画像生成AIに対するお気持ち表明漫画、素晴らしいね・・・。

2-3ページ目の方で、かなり具体的にAI画像生成やその応用について検討されていることがわかります。

そうなんですよね…将棋みたいな世界。

ぬこー様ちゃんの漫画は画風的に白が多いし、描線が荒いから同じものにはならない、LoRAでできそうではあるけど…。

でも実際クリエイター側で感じたことと、作風として「思ったけどコストが上がるので遠慮しておきます」という姿勢。
こういう形で生成AIとのスタンスをはっきりさせていくマンガを描くしかない。もちろんその前の段階でしっかり触って評価はしている。あとの段階でも評価して学ぼうとしている、でも「not for me」を作品で表現してなんぼ、なんだと思います。
ちゃんと作業した人への礼節もあるので、社会との関係の作り方としては悪くない、さすが。

まとめ:AI画像生成は全ての人に平らにチャンスを与えてくれます。

でも肉体も精神も学習する時間もあって、大学で美術や芸術を極めることができるみなさんは尊いし、「Not for me」であるかどうかは一度触ってみてからがいいと思います。自作LoRAおすすめ。世の中にはそのスキルや時間を極めるよりも、遅筆なまま、他の才能を生かして活躍している人々もたくさんいます。生成AIはそのような人々を、より活躍させる。四肢の障害や精神的なつらみ、様々なディフィカルティを持っている方々が、むしろ「別の世界」からこの世界を見ていて、表現者としては進化している可能性すらあります。

そんな話をしたら、八谷先生が
「VTuberにも似たところあるよね!」
そうなんです!!若干時間オーバーしつつ、拍手で講義を閉じました。

質問から

質問もなかなか面白かったのですが、
分量の多い質問もあったので、もっと事前に欲しかったな…
(告知はしていた)

Q: LLMは人類のような知能を持つのか?

(八谷先生も解説されましたが)現在のChatGPTのような単体の言語モデルが知能とか知性とか、大いなる意思とか、自我とかを持つ・・・というのは「幻想」かもしれません。そう見えたとしてもハルシネーション(幻覚)であったり、それをみた人間の思い込みである可能性はあります。

技術的な解説ですが、現在のLLM単体では難しいと思います。推論だけではできないことが多いからです。
我々はLangChainのような問い合わせ技術や、長期記憶の実装などを研究しています(論文がそろそろ出ます)。一方で「そもそもインテリジェンスとは何なのか」についても社会に問うています。

窓の杜の連載「生成AIストリーム」の「インテリジェンスの明日」という回で多少解説しているのですが、今後変わりゆくインテリジェンスの意味について。

 「AI」という言葉は便利なので、つい使ってしまいますが、もともとは「Artificial Intelligence」つまり「人工的なインテリジェンス」の略です。長年この分野に関わってきた研究者ほど、「人工知能」とか「知能」といった安易な捉え方をする行為には慎重であると感じます。

 インテリジェンスとは、定義としては〔高度に発達した〕「知能、知性、知力」であり、日本語でも世界の言語でも多様な意味を持っています。知識(knowledge)はGoogle検索の時代にネットに接続され、個人が知識を溜め込むことの意味を見直す機会になりました。認識(recognition)は機械学習により、画像やセンサーからの理解や感覚、知覚そして認知として車の自動運転やカメラ、医療などにも使われてきています。

 しかし、知力(Intelligence、インテリジェンス)、つまり知性や知能といった、知を使いこなす能力や、知識の性質、社会との関係については、「社会」を巻き込んで変化していきます。これは「マキャベリ的知性仮説」――イタリアの哲学者であり政治家でもあったニッコロ・マキャベリにちなんだ進化心理学における概念で、個体が複雑でしばしば競争の激しい社会環境を乗り切るために進化してきたという考え方――でディスカッションされています。人間の持つ高度な知的能力は、複雑な社会的環境への適応として進化した、という仮説です。脳神経科学では「社会脳」といった研究で説明されています。

 みなさんそろそろ「ChatGPTはすごい」という話には飽き始めていると思います。インフルエンサーやGPTが生成する結果に驚いているだけでなく、驚きを超えて活用し、ChatGPTの利用料を超える価値を生み出していくことが必要です。日々更新されるこのLLM周りの知識を更新し続け、それを継続することはとても難しいことも感じ始めていると思います。このままでは人類はChatGPTの進化や意味すらも理解の範疇を超えてしまい、社会脳としての総合的なインテリジェンスを失っていくのかもしれません。パラメータ数やベンチマークの成果だけで良し悪しを測ることが全てではないことはわかっていただけたと思います。使い手である皆さんが「動的に変化する、今後のインテリジェンスとは何か」について、主体的に手を動かして、今一度考えてみる機会が必要だと思います。


上野の芸大生へのリスペクトを最後に添えて。

ぜんぜん余談ですが、上野駅でやばい1点もの駅貼りポスターを見かけました・・・作者さんにありがとうを言いたい・・・尊い・・・。

こんな精緻なポスターカラー作品を作ってくれてありがとうございます

最後に、勉強会をご提案いただいた八谷和彦先生、セットアップいただいた芸大AMCの松浦知也先生、その他、ご聴講いただいた皆様、ありがとうございました。
ご感想はこちらまで!

他の講演も楽しみです(聴講したい)

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