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「文化庁メディア芸術祭の終了宣言についての意見書」

以下、内容証明郵便にてお送りしました(2022/10/23)。

文部科学大臣 永岡 桂子 殿  文化庁長官 都倉 俊一 殿

「文化庁メディア芸術祭の終了宣言についての意見書」
主旨:「文化庁メディア芸術祭」の継続を真剣に検討し、本当に終了するのであればその理由や経緯をエビデンスデータとともに究明し、今後の25年に資するべく、解釈を国民に周知してほしい。

「文化庁メディア芸術祭」の終了宣言についての意見まとめを実施しました
https://note.com/o_ob/n/n1ff87acbef51 短縮URL https://bit.ly/ma221023
意見収集フォーム https://ivtv.page.link/ma921 (Google Form)

【結果の要約】

文化庁メディア芸術祭の終了に対して、多くの反対意見をいただき、集約した。
・映画、マンガ、アニメ、ゲームとは別に「メディアアート」という分野がきちんと存在している
・社会への影響、特に専業アーティストだけでなく、新たな産業や製品、サービスなどを作る人々が存在
・コンピューターアート、テクノロジーアートや未開の分野に(文化庁のいうデータベース事業などにも関連して)メディア芸術祭は貢献している
・単に作品褒賞だけでなく、作家同士の育成や交流にも効果がある

【経緯】

文化庁メディア芸術祭のWebサイトに以下の掲示が掲出されました。
・令和4年度文化庁メディア芸術祭について(2022.8.24) https://j-mediaarts.jp/news/r4/
第25回の受賞作品展は9月16日(金)~9月26日(月)に日本科学未来館他で開催します。なお、令和4年度については、作品の募集は行わないこととなりました。
・朝日新聞他メディアにおいて、報道がされているが、明確な原因や説明がされていない。
・本件に関連して、令和5年度概算要求にメディア芸術祭関連予算が申請されていない。

【調査者について】

調査者は「作家としての白井暁彦」。1973年生まれ。1995年ごろから工学と芸術の融合分野の国際的研究活動を草原真知子らと行ってきた。博士(工学)。現在はメタバース関係企業における研究所ディレクター、デジタルコンテンツマネジメント修士を育成する大学院客員教授、欧州地方都市のVRフェスティバル「Laval Virtual」の評議員、芸術科学に関連する学会の副会長などを担当している。著書「AIとコラボして神絵師になる」、「白井博士の未来のゲームデザイン」他。日本科学未来館での科学コミュニケーター育成事業などの経験もあり、メディア芸術という分野を直接・間接で支えてきたつもりのプレイヤーである。この活動は現在の所属組織や学会等とは直接関係なく、個人の信念に基づく興味と関心として実施している。日本が25年間、国を挙げて世界に向けて育ててきたメディア芸術が、今後どのような変遷を辿るのか、事後になって調査する方法がないため。個人として活動するのは、特定分野に利益を求める目的ではないため。

【意見収集の方法と結果URL】

アンケートはGoogle Formを用いて2022/9/21-30の10日間実施した。メディア芸術祭受賞作品展の開催期間に合わせている。こちらのショートリンク ( https://ivtv.page.link/ma921 ) を使い、主にTwitter・Facebookを使用して個人的に拡散した。2022年10月22日時点でクリック回数は1272件、回答は上記の10日間を中心に全体で38件の有効回答を得た。回答にはEmail認証付きGoogle Formを使用しているため重複投稿は許されていない。不明瞭な回答や不明瞭な回答については、実施者がメールにより確認を取って修正したが、できるだけ回答者の多様な意見を事実や経験に基づき、偏見や誤解なく収集する事につとめた。
結果:「文化庁メディア芸術祭」の終了宣言についての意見まとめを実施しました
https://note.com/o_ob/n/n1ff87acbef51 短縮URL https://bit.ly/ma221023

【調査を通して、何を問題と感じたのか】

・事業の主体者である文化庁が「やめたい」という事に反対しているのではない。予算や環境の変化、目的や方法についての修正が必要なのであれば、よりオープンな形でリノベーションが図れるはずではないか。
・これまで25年以上にわたって積み上げてきた「文化庁メディア芸術祭」および「メディア芸術」を明確な理由や説明なきまま「作品募集を行わない」という形で暗黙のうちにメディア芸術祭を終了させる事は、文化芸術基本法第9条「メディア芸術の振興」に反する行為ではないか。
・受賞者や貢献者だけでなく、25年つみあげてきた「文化庁」のブランドと信頼を破壊する行為になる。
・メディア芸術祭の中止をソフトランディングさせないことが、新規の施策にネガティブな影響を与える可能性がある。例えば、今後計画されている国立美術館アート・リサーチセンターやデータベース事業、国際発信事業、育成事業への影響も想定できる(「展示したい」と思える場所がなくなる)。
・アートを通したリサーチやコミュニケーション、そしてその作り手の育成や産業としての価値を真剣に考えるのであれば、ごく一部の担当者の判断によって今後の方針を暗黙の了解で決めるのではなく、エビデンスデータに基づくリサーチやコミュニケーションを十分にとった活動を行うべきではないか。
・助成金など利害関係のない一般の「メディア芸術祭のファン」こそが文化の支え手であり、他の文化庁の施策との連携を考えても、今回の「突然の終了」には解釈できない要素が多く残る。
・応募作の減少などは、ごく一部の審査員や委員、担当官の意見や偏見によって曲がった方向に解釈されている可能性がある。特にメディア芸術を現代美術のキュレーション手法に寄せすぎた解釈が事態をオープンにディスカッションできない状態にしているようにも見える。
・複製芸術や商業芸術以外にも、ネットワークゲーム、動画文化、NFTのような新しい権利や流通形態、コンピュータ以外のテクノロジーアート、リサーチやコミュニケーション手法などのプロフェッショナルの手法取り入れ、我が国がこの分野での可能性を発揮する必要がある。メディア芸術祭のリノベーション策について、明確な方向性を早急に打ち出し、公募展の再開や次年度以降のメディア芸術祭、国際発信計画(もしくはその公募方法、企画委員の募集)などを実施する必要がある。

【文化庁に求める】

①    「メディア芸術祭」のリノベーション計画を示す。突然の終了ではなく、移行期間を設ける。
②    「メディア芸術祭に代わるメディア芸術分野の振興案」のロードマップを示し、委員等を募集する。
③    「メディア芸術祭公募展」に代わる、作り手、国民、海外との文化交流・対話方法を提案する。
【文部科学省に求める】
④    「メディア芸術祭の終了」についての経緯を公開する。特にこれまでの来場者アンケートなどを公開し、エビデンスに基づく判断であることを国民およびメディアに周知する。
⑤    「メディア芸術」の定義や解釈、これまでの文化庁による投資と歴史を教育・研究を通して醸成させる。
⑥    文化庁単体での閉じた議論や関わる委員に対する問題がないか、文化・科学技術・研究発信・人材育成の視点で再度調査を実施する。

【本件の対話として適切なコミュニティ】

文化庁メディア芸術祭とこれからを考える会 https://www.facebook.com/groups/1777130165965781
【意見者の連絡先】白井暁彦(SHIRAI Akihiko)・メールアドレス
・Twitter @o_ob

📝補足:文化庁だけでなく、文科省?

なぜ、文化庁長官だけでなく、文科大臣あてに出しているのか?

主旨:「文化庁メディア芸術祭」の継続を真剣に検討し、本当に終了するのであればその理由や経緯をエビデンスデータとともに究明し、今後の25年に資するべく、解釈を国民に周知してほしい。

2001年1月6日 - 中央省庁再編により、文化庁は文部科学省の外局となっています。25年の歴史の最初のほうに、文科省は関わっていますし、メディア芸術祭の贈呈式に永岡大臣は出席し、以下のように述べています。

9月15日、永岡大臣は、第25回文化庁メディア芸術祭賞贈呈式に出席するとともに、内覧会で受賞作品を鑑賞しました。贈呈式の冒頭で挨拶をした永岡大臣は、文化庁メディア芸術祭が開催されてから25年の間に多様な芸術表現が集うフェスティバルに大きく成長したこと、令和5年度に向けた作品募集は行わないことを発表したことに触れ、「これまでの25年間の成果や実績を生かし、人材育成やアーカイブ等の取組を進めるとともに、我が国メディア芸術を世界に向けてより一層発信していくため、頂いた御意見等も踏まえながら、新たに国際的な祭典に向けた準備を進め、そのさらなる振興と発展を図ってまいりたいと考えています。」と述べました。

文部科学省「第25回文化庁メディア芸術祭賞贈呈式に永岡大臣が出席し挨拶」より

永岡大臣は「メディア芸術祭を中止する」とは言っておらず「生かす」とおっしゃっています。
今回の内容証明郵便(あわせて文部科学省へのWebご意見を投書)については、「中止に反対」という反骨精神によるものではなく、文化庁だけでなく、文部科学省も巻き込みながらも、建設的に、誰も傷つかない、傷つけない、そして今後25年を考えた、アートコミュニケーションなりリサーチなりにうまくバトンを渡したつもりです。担当官および関係の皆様におかれましては、何卒建設的な方向に向かいますことを切にお祈り申し上げます。拝

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