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キャンプ日記 * 灯油ストーブと、おでん


2023年11月末、母とキャンプへ行った。

実家へ母を迎えに行くと、おにぎりをこしらえてくれていた。

海苔が横に巻かれているのが鮭で、縦がたらこだと説明してくれた。

おにぎりって、お腹と心を満たしてくれる、完全栄養食だと思う。


今回のキャンプ場は、奈良県の曽爾村にある垰(tawa)キャンプ場。

ススキが有名な曽爾高原の近くにあり、温泉なんちゃらランキングで総合1位の「おかめの湯」へ歩いて行ける場所にある。

この日は、とても気持ち良い秋晴れ。
道中はうっすら雪が残っていたけど、日中は太陽の優しいあたたかさが届いていた。

黄金の木々に囲まれたデッキサイトにした。

デッキサイトって、テントは汚れないし、地面からの冷気は感じないし、かなり良いことを知った。

親子でキャンプを始めて、3年目。
灯油ストーブを導入して、2年目。

去年は全て母に任せていたけど、今年は灯油ストーブの使い方を伝授してもらう。

ガソリンスタンドで灯油を入れるのも、この赤いやつをシュポシュポするのも、ストーブを点火するのも、全てが新鮮。

3年目にもなると、だいぶこなれ感が出せるようになる。

普段から使っているテーブルに、ホットカーペットと寝袋を組み合わせ、こたつを作る。

隣のサイトの人に「こたつ、めっちゃかわいいですね〜」と褒められたりする。

1年目の頃はブルーシートの上にごちゃごちゃ統一感のないギアを並べて喜んでいた我々が、羨望の眼差し(?)を向けられる日が来るとは。

好きこそ、もののなんちゃらだ。

キャンプを始めるために購入した愛車も、3年目。

ハスラーなので、「はっちゃん」と呼んでいる。

そそり立つような坂道でも、ものすごい気合いのこもったエンジン音を轟かせながら登ってくれるし、どんな風景にも馴染むビジュアル。

かわいい顔して根性もある、頼もしい相棒。

設営が終わり、至福の乾杯。

そのお供の定番になりつつある、冷凍の枝豆とたこ焼き。

今夜のメインは、おでん。

この日のために、メルカリでストウブ鍋を買った。

何年も前から欲しくて迷っていたんだけど、ダッチオーブンとしても使えるし、先日売れたズームレンズの売上金があるので、ついに買った。

20㎝の円形のものを買ったのに、23㎝の楕円形のものが届いた。

出品者のミスなのでいちゃもんをつけてやろうかと思ったけど、楕円形の方がスッキリ収納できるし、何より、ちくわや牛串などおでんの具が入れやすいことに気づいたので、とても気に入りそのまま購入した。


今回のおでんには、かなり情熱が込められている。

1ヶ月前に能勢の道の駅で、「おでん大根」という大根を見つけた。見た目は普通の大根だが、味が染み込みやすいらしい。皮を剥いて面取りをし、冷凍庫で眠らせておいた。

前日に牛すじの下処理をし、油揚げの中に餅とカマンベールチーズを詰め込み、茹で卵を量産した。

煮込んで、冷まし、また煮込むという行程を重ねるごとに、おでんは美味しくなる。

「おでん、はよ作り始めななあかんで」

のんびりたこ焼きをつまむ私を、そわそわした母が急かす。

ストーブの上に放置するだけで、ほんとにおでんができるのか?と思っていたけど、あっという間に沸騰し、汁が吹きこぼれた。

一旦熱源から避難させ、冷めたとろに、またじっくり火を通す。

楽なようで、手がかかる。

でも、手間暇かける価値があるのが、冬のキャンプで食べるおでん。

ゆっくりと日が沈み、気温もぐんぐん下がってくる。

曽爾村の夕焼けが、あまりにも美しかった。

母は夕日に手を振って、感謝の言葉を伝えていた。

天気が良いこと、美味しいおでんを食べられること、平和な一日を過ごせること。

当たり前のことに感謝を忘れない心って、大事だよね。


ついに、おでんが完成。

牛すじの脂と練り物の旨みが溶け出した出汁が、とても美味しい。

氷のように冷たい空気の中で、はふはふとおでんを食べて、体の芯からぽかぽかとあたたまっていく幸福感が、たまらない。

キャンプを始めて、冬が好きになった。

お腹が満たされお酒もまわり、心地よい睡魔に誘われるまま、こたつで眠る。

むくりと起きて、またおでんをつつく。

キャンプの時間とおでんのじゃがいもは、あっという間に溶けてなくなる。


夜中の気温は0℃近くなるので、湯たんぽは欠かせない。

灯油ストーブの上であたためると、何でも絵になる。

夜中は3回くらい、トイレに起きた。

ストーブが、この上なくありがたい。

清潔で、オアシスのようなトイレだった。


眠気が吹っ飛ぶほどの星空に、圧倒された。

私のカメラと技術ではこの美しさを残すことができないと思ったので、諦めた。


が、母がスマホで撮影していた。

母もスマホも星たちも、すごい。



キャンプの朝は、コーヒーから始まる。

静かな朝の爽やかな空気に、ふんわり漂うコーヒーの香りがたまらない。

すこしあたためたパンにバターを塗って、コーヒーと一緒に食べる。



ここで、重大な問題が発生。

おでんが、大量に残っている。

しかも、大根、卵、餅巾着など、ボリューミーな具材ばかり。

張り切って作りすぎ、胃のキャパを超えてしまった。

持って帰ることも、捨てることもできない。

気合いをいれて食べるしか、ない。

色白だった卵と大根が、日サロに通って別人になったみたいに、茶色くなっている。

寒い一夜を乗り越えた具材たちは、濃縮された出汁を、全身に染み込ませている。

これを関西では、「よぉしゅんでるわ〜」と言う。

絶対に食べきれないと諦めていたのに、ぺろりと食べてしまった。

美味しかった。




チェックアウトをし、温泉に入った。

とてもいい湯だった。

平日の朝なのに、続々と人が来ていた。



数時間前にパンとおでんを食べたのに、温泉に入ると、すべてがリセットされる。

毎回のことなんだけど、キャンプにくると、普段の3倍くらいは食べれてしまう。

奈良といえば、天理スタミナラーメン。

ここのキムチチャーハンも、大好物。




灯油ストーブの使い方をマスターしたので、この冬は自宅でも使うことにした。

火事と一酸化炭素中毒に気をつけながら、厳しい冬の寒さを、幸せに乗り切りたい。


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