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摩耶山頂で宴からの、六甲山牧場 with アスリート



ゴールデンウィークに、超アスリートな先輩後輩と摩耶山に行き、生死の境を彷徨いながら命からがら登頂した、その後の話。


摩耶山史跡公園から少し登って、掬星台に到着。
夜景も有名な絶景スポット。
自分の足で登った高さから見下ろす景色は、やっぱり特別感がある。

景色を撮る先輩を、撮る後輩を、撮る私


さぁ、念願のお昼ご飯!

アウトドア飯に憧れはありつつ今回がほぼ初体験の後輩は、いろんな味のきゅうりなど持ってきてくれた。

前日の退勤後、「きゅうり、きゅうり・・・」と呟いていた彼女。
その後スーパーに寄り、こうして食べやすいようピンに刺してきてくれたのかと思うと、きゅうりが愛しく思えてくる。
汗をたくさんかいたので、冷たいきゅうりの瑞々しさと塩分が嬉しい。

1年以上前からずっと欲しがっていて、今回ようやく購入したメスティン。
記念すべき初調理は、アヒージョを作ってくれた。
火をつけるのさえ楽しそうで、嬉しそうに調理する姿がかなり良かった。

のどぐろの缶詰、ベビーコーン、カマンベール、プチトマト
とっても美味しかった


そして私は、先日キャンプで食べて感動した台湾風唐揚げジーパイを揚げる。

カラリと揚がった唐揚げに興奮し、後輩と「アゲ〜⭐︎と小躍りした。

新人時代、夜勤明けに変なテンションになることを「明けテン」というと教わった。
唐揚げの高揚感を「揚げテン」というんだよと、今度誰かに教えよう。

私と後輩がアゲ⭐︎アゲ⭐︎している頃、先輩は・・・


真剣に、ししゃもと対峙していた。

お取り寄せしたという、立派な子持ちししゃも。

デリケートなしゃもを、下ろしたての100均の網で焼くのは至難の業と思われたが‥

さすが先輩!完璧っす!!!

お酒に強い二人はパックの日本酒を飲んでいる


広場にいた多くの人々は、ピクニックシートを広げ、お弁当やサンドイッチなどを正しく平和に食べていた。

油をバチバチ飛ばしながら唐揚げを揚げたり、全神経を集中させてししゃもを焼いているのは、我々だけだった。

ここにいる人たちの中で、一番美味しいものを食べている!
三人で自負していたときだった。


私の背後のテーブルに、我々より少し年上かと思われる夫婦が着席した。

そして使い込まれた最小限のギアたちを机の上に並べ、メスティンで炊飯を始めた。

かと思えば、次の瞬間には鉄板で赤身肉を焼き出した。

ここが山頂とは思えないようなジュワ〜という気持ち良い音と、白い煙がもくもくと空に登っている。

その夫婦の鮮やかな一挙一動を、先輩と後輩が実況してくれた。
「今、ご飯が炊けました!!」
「うわ、今度はステーキ肉を焼き始めた!あれは・・・相当ええ肉やで・・・」

私もチラチラ振り返り、その様子を伺った。
静かに山頂焼肉を嗜む二人の周囲には、他人の視線や意見を一切介入させない強固な結界が張られているように見えた。
その姿は、紛れもなく「幸福」そのものだった。
上には上がいるもんやな・・・と思った。

「うちら、負けたな」
先輩が悔しそうに言った。

「次は、あれしましょう。いや、鰹の藁焼きにしましょう」
後輩が言った。

ふたりはやっぱり、アスリートだと思った。


食後のコーヒーを飲み終え、六甲山牧場へ向かう。

掬星台から、六甲山牧場へバスが出ている。

だがこの日はゴールデンウィーク初日で、羊の毛刈りイベントで大変混雑しているらしく、予定時刻からかなり経過しても全然バスが来ない。

先輩と後輩が牧場までの距離を検索し、この距離なら歩いた方が、結果的に早く到着するのではないかと真剣に検討をし始めた。

確かに私たちは、5時間かけて6Kmの山道を登ってきたのだ。
心臓が張り裂ける絶望の階段地獄だって、乗り越えた。
数キロのなだらかな坂道なんて、なんでもないような気がしてきた。

距離と時間と自分たちの体力への感覚が、完全にバグっている。

そのことに、この時はまだ誰も気づいていなかった。

もう少し待ってバスが来なければ歩き始めようというところで、臨時バスが動き出した。助かった。


六甲山牧場は、人間と動物たちが共存するピースフルな空間だった。

小さなヤギ。昔親戚の家にいた犬にそっくりで、懐かしい気持ちになる。
ランボルギーニのランボちゃん
奈良の鹿のように、ナチュラルに羊がいる
人の数より多いのではないかというくらい、羊がいる
牧羊犬が、怯えた目で震えていた
野太い声の、長老ヤギ


のどかな牧場で、二人のアスリート感はかなり色濃く目立っていた。

楽しみにしていたソフトクリーム売り場には、ギョッとするくらい長蛇の列ができていた。

15分ほど並んでありつけたソフトクリームは、濃厚すぎないフレッシュさにチーズのコクが合わさって、美味しかった。


最後に牛を見た。
並んだ牛のお尻に、とっても惹かれるものがあった。
毛がふわふわで、鼻がピンクの子牛もいた。
牛を見ていると、なんだか心が落ち着く私がいた。

健やかに、大きくなるのだよ


六甲ケーブル行きのバス停は、牧場を堪能した人たちでごった返していた。

後輩が、六甲ケーブル駅まで歩ける距離だと言った。
先輩も、延々とバスを待つより歩いた方が賢明だと判断した。
「愛川さん、歩けそう?」
と聞かれて
「全然余裕です!」
と即答した私は、アスリートと1日を共にしたことで、変な自信に満ち溢れていた。

しかしそれは愚かすぎる勘違いだった。
亀と牛を愛する鈍間な私が、フルマラソンランナーで山をも走ろうとするアスリートたちに、1日で追いつけるわけがない。
というか、一生かけても無理。
なのに、歩き始めてしまった。
二人となら、大丈夫な気がして。



しかし歩き始めて15分くらい経った頃、全然変わらない山の景色に、嫌な予感がした。
そもそもここ、車道じゃね?
後ろから何台もの車が、一列になって歩く私たちを慎重に追い抜かしていく。
めっちゃ気まずい。

ようやく歩道に出た頃、山の斜面に沈みかける夕陽が眩しく反射していた。
さっきまで暑かったのに、確実に気温が下がってきた。

このまま歩き続けて、本当に大丈夫なのか?

とてつもなく大きな間違いを犯しているような気がする。

正常な人間の時間と距離と体力の感覚が、じわじわと蘇ってくる。

どうやら私たちは、狂っていたようだ。

そう自覚せざるを得ない、なんとも言えない気まずい空気が漂い始めた時。

先輩が、「三文字しりとりしよう!」と言った。

私たちは、かなり本気で三文字しりとりをしながら歩いた。
淡々と事務的に、三文字の単語を順番に言いながら、歩き続けた。

40分くらい歩いた頃、バス停が見えた。
私たちは夢中で走って、バス停の時刻表を見た。
数分後に、六甲ケーブル駅へのバスが来る!
しかもこれが最終!
奇跡!!
助かった!!!!


やってきたバスを、撮らずにはいられなかった。
幡野さんの「心が動いた時に撮る」という教えに、今日一番忠実だった気がする。

六甲ケーブル駅まで、バスでもかなり距離があるように感じた。

誰やねん、歩ける距離とか言うたんは。
全然余裕!とか言うたんは。
三文字しりとりしよう!とか言うたんは。

全員、どうかしてる!!!


六甲ケーブルからの景色は、かなり良かった。
次に六甲山牧場に行くときは、ケーブルカーで行こう。絶対に。



数日後。

先輩は、Amazonで鉄板を検索していた。
後輩は、自宅でもメスティンでアヒージョを作って食べていた。
私は写真を現像し、こうして記事を書いている。

総じて、かなり楽しかった。

次は、どこで何をしでかすだろう。
高みを目指して、たくさん失敗していこう。


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