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【名作迷作ザックザク⑥】最近観たユーロクライム映画5本がいろいろとブッ飛んでた、という話。

 結論から言おう‼・・・・・・こんにちは。( *¯ ꒳¯*)
 小学生の頃、学校主催の古紙回収の日に興味本位で心霊写真の特集本を拾って帰ったら怖がりな兄姉にメチャクチャ怒られたことがある、O次郎で
す。

「奇跡体験!アンビリバボー」でも夏休み企画でよく特集放送してましたよね。
かっぱえびせん以上にやめられないとまらない。(´・ω・`)

 結末の後味が悪い映画は俗に”胸クソ映画”とか言われますよね。よく引き合いに出されるところでいうと、『ファニーゲーム』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、『ミスト』あたりでしょうか。
 自分はわりとそのへん怖いもの見たさというか、あとで後悔する可能性が有ると解っててもついつい観てしまうんですが、イタリア映画、それも”ユーロクライム”と称されるものにもそれが多いのに気付きました。
 ラストはもとより、それに連なる展開だったり一部の描写だったりがブッ飛んでて、漏れなく胸クソにはなるんですが不思議な中毒性が有ります。
 今回はそんなわたくしが直近で観たユーロクライム映画5本を、その突き抜け部分を重点的に掻い摘んでご紹介してみようと思います。
 日本では洋画というと未だにどうしてもハリウッド映画や韓国映画の公開数が多く、ヨーロッパ系で特に古いものは触れる機会が少ないかと思いますので、その端緒として読んでみていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・レッツ・フライ・イントゥ・ザ・スカイ!!

↑ 2006年夏ごろの「奇跡体験!アンビリバボー」のエンディング曲でした。
 追記:と思ったら違った、「最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学」の方のED曲だったんだ。失礼いたしました…。



Ⅰ. ”ユーロクライム”とはなんぞや?


 ・・・特にきちんと統一された定義は無いっぽいですね。トップ画像に従って”70年代イタリア犯罪アクション映画”ということにしましょう。
 今回言及する5本観て感じた共通点としては、

〇主人公がカッコよくない!(中年のオジさんで、正義感より面子で行動するし、決めつけで行動してよくミスる)
〇爽快感ゼロ!(敵側の組織があまりに強大過ぎて根絶出来ない)
〇アクションにハッタリが無い!(一対多数はまず勝ち目が無く、多数が少数を蹂躙する)
〇人死ににタブーが無い!(主人公の友人や恋人、または幼い子供までも…。しかも自分自身が死ぬケースも有り)
〇警察は必ず腐敗している(個人レベルじゃないので主犯を捕まえてもどうしようもない)
〇ストーリーが入り組み過ぎている(特に現在と過去、そして妄想のシーンを何の前置きも無く織り交ぜるので観ていて混乱)
〇クライマックスがクライマックスでない(唐突に終わるだけでなく、その前の盛り上がりすら無い場合も)

 
 ということで、まるで”アクション映画”として存立するために守るべきお約束事のすべてを逆張りしているかのような構成。本国の視聴者たちはこれでカタルシスを得られたのかと思うと感性の違いを思わざるを得ない。
 とはいえ、だからこそ新鮮且つ強烈に見えるのもまた事実。「警察」「マフィア」「企業」という組織同士の対立が常な展開は非常にファシスティックで、早口でまくしたてられるイタリア語の圧も相俟ってとにかく”濃い”のである。
 そのそれぞれの”濃さ”が以下の通り。


Ⅱ. ユーロクライム各々

・一本目 『警視の告白』(1971)

署長自身も親友をマフィアに殺されているが、
すでに彼自身警察官としてモラルを失っており…。

 イタリアの社会機構に深く根付いたマフィアの大物の魔手。その魔力に骨抜きにされた警察権力の中で虎視眈々と復讐を誓う中年警察署長と若き検事補との友情と正義の敗北をハードに描く。
 とにかく、話が複雑なのに説明がほぼ無くて、気を付けて観てないと話が二転三転してしまう。冒頭、警察署長が囚人を解き放って、その囚人がマフィアに挑んで殺される。どうやら、”マフィアに妹を陵辱された恨みを持つ精神疾患の殺し屋を署長が自らの手で檻から解き放ち、そのマフィアを襲撃するよう差し向けた”ということだったのだが、登場人物説明もないうえに署長がそれだけの違法行為の暴挙に出るだけの過去の経緯も描かれずにいきなりドンパチ…観客を置き去りにも程があるだろうて。
 しかもながら見世物根性というか娯楽性も決して置き去りにはされておらず、特に中盤で羊飼いの少年が件のマフィアの凶行の証人となるのを防ぐために配下の男たちに崖から突き落とされるシーンの衝撃度は、『ゴッドファーザー Part.Ⅰ』の例の馬の生首のそれにも劣らない衝撃度である。
 そして敵の奸計で職を失った八方塞がりの署長は遂には捨て身の実力行使に及ぶ...。
 かくして獄中で元署長は何者かに暗殺され、若き検事補は全てが己の上司の権謀術数の結果であり、彼の掌の上で踊らされていた事実に静かな怒りを燃やしつつ宣戦布告したところで何の余韻も無しに唐突に物語が幕を閉じる
 まさに「俺たちの戦いはこれからだ!」というか、アンチクライマックス、という具合。


・二本目 『黒い警察』(1972)

”冒頭にTV番組のインタビューを受けていたタカ派の論客が主犯”
というプロットで、『特捜最前線』の第186話「東京、殺人ゲーム地図!」を思い出しました。
長坂先生、もしかしたら参考にされたのかも。

 元警察官たちで組織されたファシスト的思想を持つ“黒い警察”と呼ばれる暗黒組織に挑む一警部の戦いを描く。 
 ”警察権力による私的制裁”ということで、翌年公開の『ダーティハリー2』にプロットがよく似ているが、本作は最終的に主人公も敵の手で葬り去られてしまう…。『警視の告白』同様、ラストで彼の仲間がその遺志を引き継ぐ描写はあるんだけども。
 本作はとにかく”黒い警察”の処刑が強烈で、

・宝石強盗殺人を犯し逃亡中の犯人 → 目隠しされ後手に縛られて一斉に拳銃で撃たれる"ムッソリーニ式死刑法"で始末
・警備員殺人を犯しながら裁判の結果無罪になった犯人 → 高電圧の鉄塔に縛り付けてのショック死刑法
・売春婦、同性愛者、大学の過激派委員長 → 扼殺、あるいはチェーンや木材による全身殴打の扼殺
・“黒い警察”を恐れるあまり自首してきた、警察の眼を逃れていた犯罪者たち → 食事に毒を混ぜられて毒殺

 という極度に保守的かつ潔癖なターゲッティングと処刑スタイルが恐ろしすぎる
 主人公の警部には新聞記者の恋人が居たが、彼女は犠牲にならず、上述のように検察の仲間がその遺志を引き継いだのでそこがまだ救いではある。


・三本目 『死神の骨をしゃぶれ』(1973)

彼の近親者が狙われるのは判ってたんだから警護をつけるなりなんなり、と思うんですが、
それをやらずにあっさりと悲劇を見せてしまうのがイタリア流、なのかな?

 マルセイユ=ジェノヴァ間の麻薬ルートを追って、主人公である刑事が捜査を開始した。一人の麻薬運び人を逮捕したのもつかの間、組織の手によって、証人は消されてしまう。そしてその魔手は、刑事の身辺にまでも及んでいくのだった……。
 ということでなんとしてもルートを根絶したい中年刑事が敵方の忠告を無視して邁進した結果、彼の先妻との間の幼い娘と今現在の恋人が犠牲になってしまいます。
 大企業を隠れ蓑に巨利を貪っていたエリート連中を根絶やしには出来たのですが、自分と一緒に暮らしたいと叫んでいた亡き娘の姿がフラッシュバックする主人公の目は虚ろで・・・という幕切れです。

・四本目 『ローマ麻薬ルート大追跡』(1977)

日本版ポスター画像がヒットしないってことは日本では劇場未公開?
話の筋はかなり分かりやすくてアクションも多いのに…。

 麻薬密輸ルートを暴くため、売人になりすました若手捜査官は本物の売人と間違われて投獄されてしまう。彼は獄中で出会った青年と共謀して脱獄を図り、麻薬組織内部に潜入しようとするが……。
 ということで、例によって若手捜査官が売人に成りすましていることがきちんと描かれずに物語がいそいそと展開されるので混乱します。
 しかしながらその後の展開は彼の麻薬組織への潜入と脱出劇、彼をサポートする上司の協力が交互にテンポ良く展開し、ラストに組織と若手捜査官との派手なアクションも有るのでかなり観易かったです。
 そして何より序盤に描かれる市井の人々の麻薬の浸透の様子がかなりえげつないです。無気力な様子から急に禁断症状で喚き、元締めに金を持って来いとリンチされる…。
 若き日のアル=パチーノがヘロイン中毒者を強烈に演じた『哀しみの街かど』を想起させられます。


・五本目 『殺人捜査』(1970)

殺された娼婦役のフロリンダ=ボルガンは
ジャッロ映画の『マッキラー』(1972)で有名ですね。
主演俳優さんはカルロス=ゴーンさんにめっちゃ似てたなぁ。

 ある殺人課長が犯した殺人によって、警察内部に湧き起ったさまざまな波紋を描いて権力機構の愚かしさをシニカルに描く。
 主人公である殺人課長は己のつまらないプライドと嫉妬から付き合いのある娼婦を殺すが、敢えて証拠を残していく。警察が自分に辿り着くのも時間の問題かと思われたが、警察のそれも幹部である自分は端から除外視されており、遂には自分が犯人であると上層部に宣言するのだが…。
 とにかく面子と組織維持が唯一にして至上命題の警察組織を極限にまで皮肉った作品。しかしながらなんの切り替え合図も無しに、娼婦を殺した後の捜査と娼婦を殺す前の彼女と主人公との逢瀬の場面が繰り返され、果ては今現在にまで娼婦の幻影が侵食してくるので頭が混乱する。このへんの手法は『ゴッドファーザー PART II』にも出てくるが、それ以上のややこしさ。
アカデミー賞はじめ、国際映画祭で受賞するほど芸術性が評価されてるというのがなんともかんとも。
 世にも奇妙な物語』のエピソードの中に「マニュアル警察」(一九九九年9月27日放送、玉置浩二さん主演)が有りましたが、あのエピソードをより悲劇的かつ幻想的にしたようなテイストでしょうか。

原作は『ガリレオシリーズ』でお馴染み東野圭吾の短編小説。
妻を殺害してしまった男性が警察に自首してきたのだが、
いつの間にやら警察の対応がすべてマニュアル化されており、対応がたらい回しに…
という落語みたいな話


Ⅲ. おわりに

 というわけで5本を振り返りましたが、内容の複雑さと後味の悪さと恋しさとせつなさと心強さで頭がクラクラしそうです…。
 ともあれ、この徹底的に視聴者を突き放したアンチユーザーライクな作品作りは人によってはクセになります。
 同じユーロクライムカテゴリで、未見ながら『非情の標的』(1973)という作品が非常に面白いらしいので、観られた暁にはまた感想書いてみる所存でございます。他にも皆さんのおススメのユーロクライム作品有りましたら是非ともコメントくださいませませ。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。


全然関係無いけどロバート秋山さんのベルルスコーニ首相の身体モノマネ、
メチャクチャ笑ったなぁ・・・。



 
 


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