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【名作迷作ザックザク㉝】狂気のデカ魂と,アウトローに人生を翻弄される三兄弟のマグマの如き反骨心が半世紀を経て復刻!! 刑事の妄執と冷厳な世界に生きる男達の慟哭を描くハードボイルド映画二選『人間狩り』/『みな殺しの拳銃』

 結論から言おう!!・・・・・・・・・・こんにちは。(●´ω`●)
 "エースのジョー"といえば宍戸錠さんよりオマージュ先の『勇者特急マイトガイン』、なO次郎です。

"主人公機とソックリな黒いロボット"というベタ過ぎる発想ながらワリとカッコよくて
ある意味主人公機以上に印象に残ったブラックマイトガイン。
僕が小1~2の時期の放映で、住んでいた関西地方では金曜夕方5時から本作を含めた
アニメの勇者シリーズ枠、5時半からがスーパー戦隊シリーズ枠でした。
幕間のCMは当該番組の食玩のヤツばっかりだったなぁ。(✌'w'✌)

※こういうヤツね。ちゃんとした合体変形できるオモチャは高価でなかなか買ってもらえないので、スーパーで売られてたこういう食玩タイプはねだり易くて大変有り難かった。
当然ショボさはあるんだけど、そこは想像力でカバー。幼児の生育にはそういうところ非常に重要だったはずだよね、ということで。


 今回はクラシック映画、それも邦画のモノクロのハードボイルドジャンルの秀作二本『人間狩り』(1962)『みな殺しの拳銃』(1967)です。
 きっかけは映画評論家の佐藤利明さんが上記二作品のソフト化実現で激推しされており、ポチろうかどうしようかと思っていたところにアマプラでしれっと配信されていたのでこれ幸いと干渉し、実際ちゃんと面白かったので自分なりの感想をば…という次第でございます。

https://amzn.to/3WakPt8

※両作とも今日現在で観放題対象となってました。

 ハードボイルドジャンルはとどのつまり"カッコよさ"なので、時代を経るともの凄く古臭く感じられて白けてしまうものも往々にして見受けられますが、此方の二本はなかなかどうして作品に対して正対を余儀なくされた思いです。
 それというのも、どちらの作品も一人の男が己の胸中で何よりも信奉している指針を頑なに守ろうとするゆえに窮地に陥り孤独を募らせ、そこから妥協して世間と向き合うかそれとも・・・という非常に普遍的で内省的なテーマを抱えているからこそ、たとえ演出や画が古くなろうとも確かに訴えかけるものが有るのだと思います。
 アマプラ利用してして意外に邦画のクラシック作品が充実しているもののどれを観ていいか目移り状態の方々、参考までに読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・・・"くいしん坊!万才"!!

※僕がリアルタイムで観てイメージなのは山下真司さんですが…何曜日の何時ごろに放映してたかは実にうろ覚えという。
たぶん『発掘!あるある大事典』の流れでそのままテレビつけてて観たりしたのかと。
う~ん、なんつ~かあらためて観ると消化試合というか流れ作業的な印象が強いよね。(´・ω・`)

※そしてパロディーのコチラ・・・・・・安直でどぎつかったけどそれだけに腹抱えて笑ったなぁ。(゜Д゜)



Ⅰ. 作品概要

・『人間狩り』(1962)

(あらすじ引用)
 小田切は敏腕刑事だが、非情ということで署内での評判はよくない。警察学校で同期だった桂木だけが唯一の友である。ある日、一度も尻尾をつかまれたことのない顔役田口が、十五年前の強盗事件の口を割った。「だが、もう時効になってる。それにコロシをやった房井は今どこにいるか知らねえよ」と、田口はうそぶいた。小田切が古い記録を調べるとその事件は時効までにまだ三十七時間残っていた。房井を捕えれば今度こそ田口をブチ込むことができる。小田切は品川にいた房井を求めて当てのない調べを始めた…。

 タイトルからするとピカレスクロマンを想像してしまうのですが、時効間近の強盗殺人犯をたった一人で執念深く追い詰める刑事の暗闘を描いた追跡劇です。
 当時未だ20代後半の若き長門裕之さんが主人公の冷血漢小田切刑事を熱演しています。

ただでさえ犯罪者は許せないうえに、確信犯で証拠を残さず
決定的な罪を逃れる悪党田口(演:小沢栄太郎さん)に対しては周囲の同僚もドン引きの剣幕!!
それというのも彼自身、幼少期に強盗殺人で何の罪もない親を理不尽に奪われていたのです。

 仇敵田口をパクる突破口として15年前の殺人の下手人房井をたった一人で探し求める小田切ですが、彼の捜索劇がなんというか今の目から見ると地味でまだるっこし過ぎて些かテンポを失しているように思えます。
 房井の縁者をあたったうえ、彼が昭和二十年に千葉県の青砥に疎開していたことを聞き込んで移動、そこで房井の行方を知っているという老婆を知って熱海へ移動、そこで情報を得て最終的に房井が現在は赤羽に居ると知って東京に舞い戻る…。大前提として一人体制なうえにツールも乏しいので致し方無いのですが、なんというか二昔前のRPGの"お使い"感を感じてしまいました。その一歩一歩の捜査が刻々と迫る時効へのタイムリミットと相俟って盛り上げはするのですが、それにしても廻り道が過ぎる。

喩えるならこういう、ね。
まぁさすがに捜査途中でトラップのナイフが
飛んでくるようなことは無かったけども…。

 その一方で彼の捜査と並行して描かれる彼を巡る人間模様はなかなかどうしてヒロイックに展開され、俄然惹き付けられます。
 
 彼には小料理屋に勤める恋人の志満(演:渡辺美佐子さん)が居るのですが、彼女はあくまで犯罪者を憎みその逮捕に血道を上げる彼に相容れないものを感じ、独りで大阪へ行こうと考えていたのです。

彼女は元は小田切が絞首台に送った殺人犯の情婦でした。
"刑事と訳アリの女"というプロットは今も昔もよくありますが、
長門さんよりも年上で醒めた雰囲気のある渡辺美佐子さんとの画は何とも言えず。
彼女は言います。"犯罪を憎むあの人を見ていると自分が糾弾されてるような苦しさを感じる"と。

 小田切にとって彼女の存在こそが社会悪への復讐に捉われた己が人生の安らぎなのですが、同時に一緒に居ることで彼女の過去の罪の意識を苛んでしまっているのです。
 そして悪を憎んで苛烈な手法で捕えれば捕えるほど、後戻り出来ずに自分自身を復讐の虜に追い込んでしまっているわけで。

 とうとう時効目前に居所を突き止められた房井(演:伊藤孝雄さん)は今は靴直しで細々と生計を立てており、長患いの妻を抱えながらも健気に支える姿は近所でも大層評判が良く、その妻の連れ子である大学を出させてもらった長男の浩一は一流会社に勤め、娘の京子も気立ての良い娘。房井のここ十数年の猛省と悔恨が彼の今のささやかながら幸せな家庭に顕れているようです。
 あとわずか数時間で時効が成立という矢先、小田切の張り込みに気付いた房井が逃走し、あれよという間に今の家族に彼の過去が知れて子どもたちは未来や世間体を憂いて衝突…。
 それでも初志貫徹とばかりに房井を捕らえようとする小田切に対し、志満を連れた同僚刑事の桂木が諭します。「房井を上げたところで何がのこる。家族が不幸になるだけだ」。

 そして日付が変わって時効成立する深夜十二時少し前、房井を京成町屋駅に追いつめた小田切の足に、義父を助けたい一心で京子がしがみつく。
 「私です……私が……」と房井が十五年も抱き続けた思いを吐き出したとき、小田切の手から手錠がポトリと落ちた。
 小田切は結果として時効の成立を許し、房井の過去の罪とそれに連なる憎き田口への突破口を失いましたが、同時に幼少の砌からの己が身をも蝕む憎悪から解放されもしたのでした。

警察で桂木刑事が志満に「小田切にはあなたが必要なのだ」と慰撫する姿。
演じる梅野泰靖さんがその妄執ぶりで署内で煙たがられる主人公の
唯一の理解者として実に良い味を出しています。

 本作では主人公は犯人を逃がしますが、それは房井の今の人となりとその家族を鑑みてのことであり、もし彼が相も変わらず悪辣な人生を送っていれば判断は変わったでしょう。
 "相手の人間性に鑑みて手心を加える"と考えるといかにもな超法規的措置でそれこそ法の番人としてはあるまじき行為ですが、同時に"法を順守することによって誰も救われない"という矛盾点も見過ごせないところです。
 ただ、改心した房井をも逮捕したとすればその後の小田切はタガの外れた犯罪者へまっしぐらだったとも思われ、だとすると一連の事件は小田切が敵を愛し赦す洗礼の物語のようにも思えました。

解説で佐藤利明さんは「本作の小田切刑事は後の『特捜最前線』での
蒲生警視の若い頃のようにも捉えられる」ということでなるほど。
悪を憎みつつも人情たっぷりな蒲生はまさしくそのような過去が有りそうです。
ちなみに僕が『特捜最前線』に初めて触れたのは関西の実家で大学入学のため浪人していた2004年
神戸のローカル局サンテレビで再放送されていた蒲生警視登場エピソードの
第162話「窓際警視の靴が泣く!」でした。



・『みな殺しの拳銃』(1967)

(あらすじ抜粋)
赤沢興業の幹部・黒田竜一は会長・赤沢に殺しの仕事を命令される。相手は竜一に惚れて赤沢のもとから逃げてきた赤沢の女だった。竜一は同じ幹部仲間・白坂立会いのもと一発で女を射殺する。そのことを知った竜一の弟でクラブを経営する英次と末弟でボクサーの三郎は、兄へのむごい仕打ちに憤然とするのだった。たまりかねた三郎は赤沢と喧嘩を引き起こし、彼のボクシングジムをさっさと辞めてしまう。だが赤沢も黙ってはいなかった。三郎は帰り際を襲われ、両手を無残に潰されて二度とリングに立てなくなってしまう。さすがの竜一も三郎の変わり果てた姿を見た途端、赤沢興業から足を洗う決心を固める。「お前との仲もこれが最後だ!」無二の親友だった竜一と白坂も明日からは敵味方に分かれて対決する運命をたどっていた。翌日になると赤沢の嫌がらせが始まり、弟・英次のクラブは殴り込みをかけられてめちゃくちゃにされてしまう。竜一、英次、三郎の黒田3兄弟の腹の虫は収まらず、赤沢一派に反撃を開始する。数日後、竜一の台頭に手を焼いた会長・赤沢が和解を提案してきた。しかし用心深い竜一はあっさり断ってしまう。今度は赤沢も黙ってはいなかった。たちまち逆襲に転じ、赤沢一派の仕返しは日を増すごとに激しさを増していく…。

 ヤクザもの同士が互いのメンツのために小競り合いをエスカレートさせ、やがて総力戦に行きついてしまうピカレスクロマンです。

主人公の長兄の黒田竜一(演:宍戸錠さん)に
次兄の英次(演:藤竜也さん)、そして末弟の三郎(演:岡崎二朗さん)。
作中深くは語られていませんがおそらくは幼少期に親を亡くして
生活苦から竜一と英次はアウトローに堕ち、末弟の三郎だけはなんとか
堅気の道を歩ませようと苦悩していたバックグラウンドが仄見えます。

 兄弟の中で唯一真っ当な道を歩めそうだった三郎の未来を穢した赤沢興業と縁を切ろうと啖呵を切ったことによる"落とし前"の連鎖。
 もしこれが任侠映画であれば、巨大な敵組織を向こうにして先方からの苛烈な嫌がらせに黙々と耐え抜いてフラストレーションを溜めるも遂に掛け替えの無い仲間の犠牲が出てしまい、とうとう最後に捨て身の斬り込みへ…という流れなのですが、本作では彼我の戦力差はあれど序盤から結構な応酬が展開されます。
 三兄弟が経営するナイトクラブが赤沢興業の若い衆にメチャクチャに荒らされるもなんとか元通りにして営業に漕ぎ着け、その報復に赤沢の経営するボクシングジムに殴り込んで即座に乗っ取り・・・といった具合で、特に英次が敵の姦計でホテルで銃撃された際に咄嗟に連れのコールガールを盾にして難を逃れる場面などはなんともドライな世界観を象徴しています。

死体を入れた棺桶を送り付けられてしかもその中にはダイナマイトが…
という感じで一気に対立がエスカレートしていく。
絵面的に笑ってしまいそうですが、俳優陣の一様にダーティーなビジュアルのお陰で
クサい展開も演出も自然と受け容れられてしまうのはさすが。

 そして本作の最大の見どころが、主人公竜一と彼と浅からぬ仲の白坂(演:二谷英明さん)との愛憎相食む邂逅です。
 かつては赤沢興業のヒットマン二枚看板として鎬を削ってきた仲であり、今は白坂と連れ添っている紫乃(演:沢たまきさん)を奪い合った仲でもあります。
 彼女がママを勤めるバーで酒を酌み交わし昔を思い出しつつも、一方で赤沢の幹部としてなんとか竜一の矛を納めさせようとする白坂と、その一方であくまで己の面子を貫いて袂を分かつ決意を口にする竜一…。

 「次に会う時は敵同士だ」と実にキザでベタなセリフのやり取りがこれまたサマになっており、古式ゆかしいBL様式美ここにあり、という感じです。

 最終的に業を煮やした赤沢(演:神田隆さん)の暴挙により三郎とその恋人藍子(演:山本陽子さん)が誘拐されたことで全面対決へと至ってしまいます。
 組員に取り囲まれた窮地を連携で脱する英次と竜一のコンビネーションは小気味良いですが、最後まで全面衝突を避けようとした白坂が覚悟を決め、紫乃に「俺に何かあったら黒田を頼れ」と遺言を残すシーンは渋い哀感たっぷりです。
 で、ラストのハイウェイでの総力戦。敵一味が拳銃装備の中を竜一がライフル装備なのは面食らいますが、まぁ戦力差を考えれば宜なるかな、というところで。
 今の目線からすると銃撃戦の迫力は見劣りするかもしれませんが、瞬く間に皆殺しの双方全滅に行きついてしまう呆気無さは一周廻ったリアリティーがあり、アウトローの潔さと空しさの同居する荒涼とした幕切れが余韻を残さず世界そのものを消し飛ばしてしまうデウスエクスマキナといった具合。

二谷さんは個人的にはロマンスグレーのいぶし銀中年となった上述の『特捜最前線』イメージで、
本作の翌年の『マイティジャック』あたりは未視聴なので、
彼の若かりし頃のハードボイルドスタンスのフィルモグラフィーとして美味しく頂けました。



Ⅱ. おしまいに

 というわけで今回は邦画のフィルムノワールの傑作二作品『人間狩り』『みな殺しの拳銃』について書いてみました。
 この時期の邦画というと、エンタメとしてグイグイ盛り上がっていくテレビの娯楽性との差別化を企図してか、それまでの粗製濫造感の見え隠れするツッコミ上等な小品に比べて重厚な逸品が盛り返した印象を個人的に持っておりますが、本作もそうした気概が覗えます。
 話運びのスピード感については緩慢さは否めず、そのへんは時代の流れは感じてしまいますが、割りを食って尺を短くされたことで凝縮された余情はクラシック映画ならではの味わいかともあらためて思いましたのでございます。
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




※公演がいよいよ来週末に迫っておりまして・・・もしよろしければ。

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