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ochiが選ぶ個人的アルバムオブザイヤー2020

今年は例の感染症で外に出られない時間が増えて、聴く音楽にも変化がかなりあり、具体的にはBPMの速い音楽をあまり聴かなくなって、遅い〜やや遅いくらいのテンポ感のものをよく聴くようになりました。

1, Tom Misch & Yussef Dayes / What Kinda Music

今年の夏に特に聴いてハマったアルバム。星野源とのコラボでも有名になったトム・ミッシュが新進気鋭のドラマー、ユセフ・デイズとの共同作品で、ダークなヒップホップのような、でもジャズの雰囲気も感じさせる不思議な音楽性。トムの前作も聴いてみたけど、家で聴くという点ではこの作品全体のBPM感とチルさが一番心地よかった。

このアルバムではトム自身がベースを弾いてる以外に、二人ベースプレイヤーが参加していて、一人はピノ・パラディーノの息子のロッコ・パラディーノ。アルバムの参加曲でいうと「Tidal Wave」とか「Lift Off」でのロッコのコードプレイは特にカッコいいし、丸みを帯びたちょっとダークなベースサウンドは完全に父親譲り。

そしてもう一人のトム・ドリースラーは、イギリスのジャズベーシストのようであんまりワールドワイドで有名な人という感じではなさそうだけど、↑の動画の曲「Nightrider」でジャコ・パストリアスライクな、ゴーストノートとハーモニクスバキバキのめちゃくちゃクールなラインを弾いてて、この曲は自分でもコピーしてみたりした。

やっぱりジャコに直接的に影響を受けているプレイヤーは好きだなあ。このNightriderは特に、ベースが曲の核を担っているのがすごく分かる曲で、そういう曲をコントロールする役割はジャコ直系ベースの真骨頂。

アルバム全体ではアーティストの名義はトムとユセフの共作で、ベースプレイヤーはゲスト的な立ち位置みたいだけど、シンセベースで弾かれている曲も含めて全体的にベースがとても重要な音楽になってる。なので個人的には2020年のベストベースプレイアルバムでもある。

2, Dirty Loops / Phoenix

スウェーデンの超絶トリオの6年ぶりの新譜もよかった。
カバー曲でYouTubeから火がついた彼らだけど、2作目のEPは全曲オリジナル。EDMっぽいシンセに、MJかスティービー・ワンダーみたいな歌が乗る音楽性もそのままながらそれがまたクオリティが一段階高くなっているようで、久々に前作と並べてよく聴いた。

ベーシストのヘンリック・リンダーのプリアンプ感強い音色での6弦ベースプレイも相変わらずだったけど、テクニックのための音楽じゃないところが好き。

今回は2トラック目と3トラック目に長尺の曲が入ってて、中間〜エンディングでフリーなジャムを披露。そして日本盤ボーナストラックに、カントリーやフュージョンの影響全開なインストを4曲入れてて、ちょっとリンダーブラザーズみたいなところがあるなあと思ったら、なんでもボーカルのジョナがソロ活動してる間にヘンリックを中心に作ってYouTubeに上げていた曲らしい。

それらも素晴らしい出来だったし自分は好きだけど、「HIT ME」のイメージから入った人達相手にはちょっとマニアックすぎるかな…。やっぱり曲の面白さはジョナの歌が入ってこそな彼らなので、歌と技巧のバランス感覚は失わないで欲しい。

3, Deftones / White Pony 20th Anniversary [The Black Stallion]

Deftonesの名盤「White Pony」の20周年記念のリバイバルアルバムで、White Ponyのオリジナル盤(聴いた感じリマスターはされてなさそう)とリミックス盤の2枚組。

Deftonesは本当に素晴らしいバンドで、カテゴリは00年代のニューメタルなんだけどその範疇に収まらない、息長く続いてるバンド。ギターのリフはゴリゴリだけど、音楽的ルーツはニューウェイブやトリップホップも含むバンドなので、リミックス盤の方はそういった影響が前面に出ていて全く違和感ない、というか元々そういう音楽だったんじゃないかというくらいのクオリティで、発売前のトレイラーを聴いた時点で個人的にツボだった。そしてDeftonesとテクノがここまで相性いいと思わなかった。

20年も前の作品となると、やっぱり時代の移り変わりを感じてしまうものだけど、今回のリミックス盤は今っぽすぎないし、かといって古臭くもない、あまり時代性を感じさせない音になっている。ガッチガチに電子音楽化させた「Feiticeira」や「Korea」、「Change」もあれば、元の歌を活かした「Passanger」や「Knife Prty」もあってかなりバラエティ豊かという感じ。
そしてSquarepusherが手掛けた「Pink Maggit」もグリッドバッキバキで、原曲がそうだったからというのもあるけど、アルバムのラストにふさわしい壮大さを見せていた。

あと、Deftonesはチノの変幻自在なボーカルも、ステファンのエフェクティブなギターも魅力なんだけど、それと同じくらいエイブのドラムがいい。特に「Digital Bath」のイントロ4小節の16ビートはものすごくダークで深くて気持ちよくて今でもお気に入りで、このソリッドなグルーヴを聴きたいがためにWhite Ponyを聴くことも多い。

4, BIGYUKI / 2099

NYで一番カッコいい日本人キーボーディスト、BIGYUKIは一昨年くらいからずっと大ファンで、このEPも制作中という話を聞いた時から待ち遠しくてたまらなかった。

これまでに2度観たライブでは、ヒップホップアーティストみたいなファッションで、シンセベースを左手で弾きながら、Nordやアコースティックピアノでリフを弾きまくるその姿が、ライブで観ると鍵盤を操るDJみたいでものすごくカッコよく、ochi的今一番ライブを観たいアーティストNo.1でもある。

2099というタイトルにもちゃんと意味があって、転載みたいなのがあんまり好きでないので詳しいことはここでは控えるけど(知りたい人は↓)

ライナーノーツではその辺りが彼の言葉で存分に語られていて、そうやってアルバムのコンセプトを熱っぽく語るBIGYUKIが、愛すべきオタク感と、作品に対する熱を感じられてすごく好き。

「今の世相にあった、リラックスできる音楽を」ということで作ったそうだけど、水槽の底にいるようなディープなシンセやリリカルなメロディーは相変わらずで、単なるBGMのように聴くにはなかなか濃い内容。「尖った音楽を今作っても仕方ない」と本人は言うものの、音の圧やその中にある彼の真摯な姿勢(SNSでも社会情勢や政治に対する勇気ある発言を見かける)が滲み出ているようで、サウンド的にも聴き応え十分。

彼が住んでるアメリカは今年特に大変な年だったと思うけど、5曲だけでも形にして届けてくれただけで僕は大満足です。

旧譜でよく聴いていたBEST4

mito / DAWNS
The Essencial Richie Kotzen / Richie Kotzen
a show of hands / Victor Wooten
Mateus AsatoのYouTubeチャンネル

クラムボンのミトさんのソロアルバムがあることに気づいて聴いてみたらものすごくよかった。自分のアルバムで「Sound Sphere」という作品があるんだけど、Sound Sphereでやりたかったことにかなり近くてしばらくずっと聴いていた。

あと、個人的にギターをまた弾き始めたというのがあって、そのきっかけになったのがマテウス・アサトのYouTubeを観たのと、リッチー・コッツェンが50歳記念アルバム「50 for 50」を出していて、それをきっかけに過去作で聴いていなかった曲の多く入ったベスト盤に春頃はかなりハマった。

そして、何故か冬が近づいて急にヴィクター・ウッテンのスラップテクニックにハマり出して海外から教則本とか取り寄せてみたりした。ヴィクターは以前はあんまり音が好きじゃなかったんだけど、グルーヴマスターという意味では随一だと気づいて、あの伝説的な1stソロアルバムをかなり聴いた。聴いてるうちに苦手だった音まで好きになってきて、不思議なものだと思った。

去年もそうだったけど、このアルバムオブザイヤーシリーズの記事に載るアルバムは全部自分がナチュラルに聴いていいなと思うものばかりなので、これまでの傾向から、自分の好みは、

・ニューウェーブを通過した耽美でアンビエント感のあるエレクトロニカ

・ベースが支配する(重要な位置を占める)アンサンブル=グルーヴミュージックということ?

・メタル的な音も好きだけどいわゆるメタラーからは多分理解されない

・あまり複雑にコード進行が展開するものよりはループミュージック的な方が好き(R&Bも捉え方によってはリフものだったりするし)

・でもコードのボイシングは複雑で綺麗なものが好き

・テクってるのも相変わらず好き

・ファンク、R&B、フュージョン、ヒップホップも好き

という、かなり人格崩壊してる感じだということがわかりました。

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