オーボラ

40男が、人生の折り返しに来ていることに気がつき、 これまでの半生を回顧していく、普通…

オーボラ

40男が、人生の折り返しに来ていることに気がつき、 これまでの半生を回顧していく、普通の人の人生の断片です。 せっかく書くので、出来るだけたくさんの人に読んでもらいたいとは思っています。 面白いと思ったらなるべく拡散してもらえると嬉しいです。毎週月曜更新していきます。

最近の記事

オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の8

大型案件の企画打ち合わせ第2回目の当日の朝。 私は徹夜でボロボロになった体で、打ち合わせ前の最後の映像資料チェックのため、金田が出勤するのを待ち構えていた。 徹夜作業というのは、なんて言うか妙な高揚感が伴う。 終電が過ぎてからの銀座の街は昼間の喧騒が嘘のように静かな街に変わる。 時折、窓外から飲んだ帰りであろう、バカ騒ぎの声が聞こえてくるが オフィス内はしんとした音のない空間で、熱帯魚の水槽のコポコポ空気を流す音だけが聞こえるだけだ。 私は金田に褒められようと、これまでの時

    • オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の7

      ウイイレとは説明するまでもないと思うが、プレイステーションで出ている大人気サッカーゲームの「ウイニングイレブン」のことである。このウイイレの対戦モードでお金を賭けて勝負するのだ。 私がそこそこ、このゲームをやれるということがわかった3人は夜な夜な私を誘った。たまに、永谷や林も参加したがあまり上手くなく、金をむしり取られるのを恐れて、逃げ回っていた。 私はこのゲームをある時期かなりやり込んでいたため、腕には自信があった。ただ、悪魔のような先輩3人とお金を賭けて勝負するというプ

      • オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の6

        コンビニCMの撮影のヘルプを終えた直後、私は、ひょっとこ社長との面接時にお願いしていた結婚式と、新婚旅行のため、インスパイアを1週間ほど休んだ。新人としては異例だろうが、金田をはじめ、あまり陰湿な嫌がらせなどなかったように思う。 私は、結婚式を無事終え、3泊4日の国内の新婚旅行を楽しみ、 リフレッシュした気持ちで再び銀座の雑居ビルに出社した。 久方ぶりといっても1週間だが、会社に入ると金田が珍しく午前中から来て 私を見るなり、新しい仕事にメインPM(プロダクションマネーシャ

        • オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の5

          私は結局それから10日ほど、出社してshotsをただひたすら観る日々を過ごした。初日に会わなかったその他の社員、全員にも会えたが、かなり退屈な日々だった。 そんな日常にかなり嫌気がさしてきたある日、金田に今度の日曜の撮影のヘルプに言って欲しいと言われた。大手コンビニのCM撮影とのこと。 ついに、CM撮影の現場が見れる。二つ返事でOKし、少し気持ちが高まった。詳しいことはメインの制作の永谷(初日ソファーで寝ていた男)に聞いてとのことで、奥にいた永谷に話を聞きに言った。 永谷は

        オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の8

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の4

          出社初日の昼休み。 私は、金田というプロデューサーが来るまでやることがないので 仕方なく近くのラーメン屋でじゃんがらラーメンをすすりながら、 大丈夫かこの会社という不安でいっぱいだった。 が、こうしている間にも金田は会社に来ているかもしれないと思い直し、いそいそと食べた。 昼飯を終えた私が会社に戻ると、まだ金田は来ていなかった。 そして、ぼーっと時間を過ごしていると、 見るからに卑屈そうで、胡散臭い感じの長髪の男がだらだらとやってきた。金田だった。 金田は、周りの人たちとた

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の4

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の3

          入社初日。 私は、会社に向かう電車の中で、かなり憂鬱な気持ちになっていた。 映画監督になるという夢を諦めたわけではなかったが、 誰に言われたわけでもなく、自分で就職という道を選んだことが自分自身を失望させていた。 脚本が書けなくなったことに対する逃げであることは間違いなく、 あれだけバカにしていた就職をあっさりと決めてしまったことに、ほとほと嫌な気分になっていた。 そんな鬱屈とした気持ちでインスパイアの入り口の扉を開けると、 ソファーに寝ている男を発見し、狼狽えた。 面接時

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の3

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の2

          その会社は、インスパイアフィルム(仮称)という名前で、銀座のはずれにあった。私はインスパイアフィルムを良くある求人サイトで知り、経験者優遇、中途正社員募集という告知を見て、応募した。 そして面接当日。 私は銀座にある雑居ビルの中に入っていった。 エレベーターを降りると、すぐにドアがあった。 ドアの横には少しだけ気の利いた書体で、インスパイフィルムと書かれてある。ドアを開けないと中が見れないタイプの入り口なので、中の様子が全くわからない。だが、入り口が小さいことで、想像より小

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の2

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の1

          私は27の時、はじめて就職をした。 それまでは、自主制作映画作りをやりながら、フリーランスの映像系なんでも屋と、Vシネマやドラマ、VP(企業ビデオ)の助監督や制作助手と、短期派遣社員と、短期アルバイトなどをやっていた。 大学を卒業して、5年くらいその期間があった。 ひとつき働いては、ひとつき休む。金がなくなると働くような暮らしだった。 なぜはじめての就職になったかを簡単に。 私が在学していた日芸(日本大学芸術学部/またの名を無職専門学校)映画学科の4年の時、周りで就職活動を

          オーボラの人生回顧録 -銀座ダクション死闘篇-其の1

          オーボラの人生回顧録-まずはじめに-

          私は、40才の会社員である。妻と犬と猫がいる。子供はいない。 全く実感はないが、客観的にみて人生の折り返し地点に来ているのは間違いないだろう。そう考えた時、唐突に猛烈に、これまでの人生を振り返り、記録に残しておきたいという衝動に駆られた。 私は何者でもなく、ただの普通の人だ。 だが、だからこそ、時代の記録として、市井の一人の人間の生きた記録として、意味があるのではないか。いや、、、ちょっと違うか。そういった大袈裟なことでなく、私が思い出を忘れてしまう前に、私の半生で起こった

          オーボラの人生回顧録-まずはじめに-