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クオリティ高すぎな無料エリア

展覧会を見に行くたび、佇まいの美しさに癒やされて帰ってくるのが豊田市美術館。ここは企画展も面白いけれど、建物や敷地内の空間も素敵だ。この11月には美術館の外観や庭を紹介する「ランドスケープツアー」が開催されたので、興味津々で参加してみた。案内役はボランティアのガイドさん。もともと豊田市美はボランティアによる作品解説に力を入れていて、毎日のようにギャラリーツアーが行われている。紅葉の季節に行われた今回のランドスケープツアーもその一環だと思われる。

もともとこの美術館の美しさについては、よく知られていて、HPには建物と庭についてこのように紹介されている。

1995年に開館した豊田市美術館は、これまで鑑賞される方一人ひとりが作品と対話し、それぞれの作品との関係をつくっていただく場となることを目指して、展示や教育普及活動を行ってきました。当館の設計は、美術館建築で名高い谷口吉生、庭園はアメリカのランドスケープ・アーキテクト、ピーター・ウォーカーによるものです。作品を鑑賞することはもちろん、建築と庭園を含めた美術館全体をお楽しみください。

ガイドツアーは、まずは美術館内に常設されている作品をサクッと紹介して…とはいうものの、建物と一体化したジョセフ・コスース《分類学(応用) No.3》(写真:上、ただし撮影したのは2013年)は大きすぎて全部鑑賞しようとすると大変だし、2階のテラスに常設展示されている、ダニエル・ビュレン《色の浮遊│3つの破裂した小屋》の作品群(写真:下)は面白すぎて、作品の周りを際限なく歩き回る羽目になる。が、それらは後で楽しむとして。

庭に出ると木立の中に置物のように設置されている作品がある。すっかり風景に馴染んでいて良い。

さらに外回りを半周しつつ美術館が建つ場所の由来を説明を聞き…(現在美術館がある童子山にはもともとお城があり、明治になって廃城になったあと小学校ができた。その小学校に場所を譲ってもらって建ったのがこの美術館)
美術館が建つ場所の由来については、2015年のコレクション展にて紹介されており、その時のブログがコレ

東側入り口より再び館内に入り、反対側の正面玄関前から外へ出る。すると前庭が目の前に広がり、そこにも作品が展示されている。古典的な彫刻ではなく、一見意味不明な現代アートばかりなのだが、存在感は強い。豊田市美美術館は現代作品のコレクションが充実していることで有名だが、その理由のひとつが比較的新しい美術館であったため、現代アートのほうが集めやすかったからだという。半分くらい納得した。

不意打ちを仕掛けるようにして、ソル・ルウィット《柱のある立方体》を相手に少し踏み込んだ対話が始まった。「これはホームセンターで手に入るブロックを使って制作された作品です。ブロック塀も同じようにブロックを使って作られますが、アート作品ではありません。ブロック塀とアート作品の違いはどこにあると思いますか?」とガイドが問いかける。自分なりの答えは持っていたが、それは内緒。幸い参加者として混じっていた小学生男子がナイスなことを言ってくれた。

続いて、茶室の紹介。ふだんから気軽にお茶が楽しめる童子苑は、紅葉に美しく彩られていて、苔むした庭と見事なコントラストを成していた。また、手水鉢の傍らには水琴窟があり、リアル水琴窟の音を初めて聞くことができた。

お茶室の次はかきつばたの花壇を通り抜けて、池の前に集合。池の向こうにはその姿を水面に映し、優美にたたずむ美術館。館内だけでなく庭も含めて敷地内すべてが見事にデザインされた空間だ。ガイドの人が最後の解説をする。ここから見る美術館の姿が何かに似ていませんかと。言われてみれば、たしかに平等院だ。うっかり彼岸に渡ってしまわないよう気をつけないとね。

ちなみに今回見学したエリアは、数々の展示作品も含めて、すべて公共のスペース=無料で入れるエリア。実際、散歩に訪れる人も多い模様。我が家みたく家の近くに野性味あふれる山道があるのも悪くないが、人のために計算された美しい庭が楽しめるのも幸いだなあと思う。

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