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美術展めぐり

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実際に足を運んで見に行った美術展の感想を書き留めています。
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#国際芸術祭あいち2022

四次元ダンジョンの街―常滑

国際芸術祭あいち2022の郊外会場のなかで、最後に訪れた会場が常滑。焼き物の町として、「朱泥」と呼ばれる独特の赤い陶土を生かした急須のほか、土管や植木鉢など生活に欠かせない陶器を生産してきた町だ。 展示が繰り広げられたのは、「やきもの散歩道」と言われる細い道沿いに古い窯や製陶所が入り組んだ一帯で、廃業した施設が多いものの、それらをリノベして新しく店が入っていたりして、なかなか味わい深い観光地となっている。道を歩くだけで興奮MAXになってしまい、作品の印象が薄れてしまったのは

一番初めは…というけれど

国際芸術祭あいちの郊外会場、有松の次は一宮を訪れた。ここは奈良美智や塩田千春など、大物作家による作品があるので、期待と緊張が入り混じっての訪問になった。 まず一宮がなぜ「一宮」と呼ばれるのかというと、 というわけで、一宮では「繊維の町」を意識した展示作品が多かったが、それだけではなく「STILL ALIVE」の本質に迫る作品もまた多く、収穫だった。 会場は旧一宮市立中央看護専門学校やオリナス一宮、市役所などが集まる真清田神社周辺部と、やや離れた尾西エリアに分かれており、今

今年はあいトリと呼ばないで(その2)

国際芸術祭あいち2022のメイン会場、愛知県美術館の10F、有松会場に続けて、次は県美術館の8Fを紹介する。これがまた質・量ともに大変なことになっており、全体的な印象としては、10Fが顔だとしたら、8Fは心臓(ハート)にあたるのでは、と思っている。 8Fは映像を活用したインスタレーションや複数のパーツで成り立つ作品が多く、濃い作品が多い一方で、写真で「コレ!」とわかりやすく提示するのが難しい。文章でイメージが伝われば幸いである。 ローリー・アンダーソン & 黄心健(ホアン

伝統とご新規さんと

まだまだ探訪途中の「国際芸術祭あいち2022」、本丸の愛知県美術館の次はどこへ行こうかと少し考えて、有松会場を訪れてみた。場所は名鉄有松駅のすぐ前、かつて東海道が通っていた一帯だ。江戸時代から茶屋集落として栄えただけでなく「有松絞り」という絞り染めの産地としても有名だ。現在は「重要伝統的建造物群保存地区」の指定に続いて日本遺産の認定を受けており、観光に力を入れるようになって久しい。 今回のあいトリ……もとい国際芸術祭では、このようにがっつり歴史のある街を会場に選んでいる。有

今年は「あいトリ」と呼ばないで( その1)

あいちトリエンナーレあらため、「国際芸術祭あいち」として再出発した芸術祭は、夏の暑い真っ盛り、7月30日に開幕。会場は本拠地となる愛知県美術館をはじめ、一宮市、常滑市、有松(名古屋市内)など郊外の街に3箇所。今回のテイストはどんな味付けになるかとドキドキしながら、まずは本丸の愛知県美術館へ乗り込んだ。 さすがは本丸、展示のボリュームが半端ない。一度に見きれないので、10階フロアと8階フロア、別々の日に見に行った。今回はまず玄関口ともいえる10階の展示の紹介&感想から。 1