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美術展めぐり

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実際に足を運んで見に行った美術展の感想を書き留めています。
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#愛知県陶磁美術館

ウィリアムス・モリスって、タバコの銘柄ぽいなと思っていた

年明け最初の展覧会は、愛知県陶磁美術館にて「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」展。 これは告知ポスターを見たときから楽しみにしていた。なにしろ素敵なデザインの数々。工芸品というくくりでまとめることで、陶磁器専門の美術館がデザインの特別展を開いてしまうことも面白くていいなと思っていた。 展示会場に入ると、たちまち植物柄のファブリックデザインに囲まれた。そう、主役は植物や動物や昆虫などなど自然の生き物なのだ。室内にいながらにして庭にいるかのように感じられるデザイン。「心豊かな

最古の素材で前衛を

国際芸術祭あいち2022の開催にともない、県内では関連する展覧会いくつか行われている。愛知県陶磁美術館も、芸術祭の会場にこそならなかったが、連携企画事業として大変ユニークな展示をしている。それが「ホモ・ファーベルの断片 ―人とものづくりの未来―」だ。 8月の終わりがけに開催された「ナイトミュージアム」に参加した際、この企画展のチケットをお土産としてもらっていたので、ラッキー!とばかりに出かけた。「工芸品」のイメージが強い陶芸の分野で、どこまで尖った作品が並ぶのだろうと期待し

暗やみの展示室探検

いかにも何か出そうなタイトルだけども、実際に出てきたのは光のマジックなのでご安心を。 夏休み最後の週末、愛知県陶磁美術館にて「ナイトミュージアム」というイベントが行われるとの情報を見つけた。普段は見ることのできない夜の美術館をめぐるガイドツアーだという。「夜の美術館」と聞くだけで、魅惑的なイメージがわきあがる。 具体的にはどんなイベントかというと、 いかにも夏の夜っぽさが漂う内容ではありませんか。日にち限定の予約制だったので、その日のうちに申し込んだ(当日払いの有料イベン

テーブルウェアから世相が見える

今年最初の美術館は、愛知県陶磁美術館。「昭和レトロモダン~洋食器とデザイン画」に足を運んだ。 戦後の日本を代表する洋食器メーカーといえばノリタケが有名だけれども、戦後から高度経済成長期にかけては中小規模の製陶所も活躍した。この美術展では、愛知を拠点に活躍した鳴海製陶や三郷陶器、岐阜のヤマカ製陶所などが手掛けた独自のデザインを特集しており、昭和30~40年代の洋食器が紹介されている。 洋食器といえば、もともとは欧米向けの輸出品として生産されてきた歴史があり、デザインも欧米で

眺めるほどに味わい深い

新型コロナによる自粛期間が終わり、美術館がぼちぼちと再開されてきた。まだ、人の集まるイベントはできないが、他人との距離を充分に取りつつ、静かに鑑賞するのはOK。 出かけたい美術館はいくつもあるが、手始めに愛知県陶磁美術館へ。折しも〈異才 辻晉堂の陶彫「陶芸であらざる」の造形から〉という面白そうな展覧会が開催中。 コロナ禍の真っ最中に↑のポスターを見かけ、ずっと気になっていた。確かに素材は焼き物だけども、造形はまさに現代彫刻。陶器といえばまず茶碗とか壺、あるいは煉瓦など非常に