日本史論述チャレンジ課題・文化

今回は、文化史のチャレンジ課題です。

これまで再三述べておりますが、この課題は、私が出講している高校の課外講座で、毎回の授業の終わりに取り組ませているものです。完璧な答案を仕上げるというよりも、教科書の該当箇所を読み、自分でまとめ直すことに力点を置いています。

なお、授業用の課題という都合上、問いとして練り切れていなかったり、解釈が多様に考えられたりするものもあります。これも上記の目的を優先したものとご理解ください。

皆さんもぜひ教科書を片手に挑戦していただけたらと思います。

これで「ポイント集」に続いて「チャレンジ課題」も完結です。

優れた問いは優れた思考を引き出すーー私も東大や一橋大の入試問題に魅せられ、あれこれ考えているうちに、ずいぶんと遠くまでたどり着きました。

生徒の学びを引き出すのは、問いであると思います。「ポイント集」と「チャレンジ課題」が、少しでもそのお役に立てれば幸いです。


〈問題〉
1.
8世紀初めの朝廷で、『日本書紀』『古事記』が編纂された目的を説明しなさい。

2.
聖武天皇が大仏造立を発願したのはなぜか、理由を説明しなさい。

3.
密教と浄土教の違いを、教えの内容と受容した階層を中心に説明しなさい。

4.
10~11世紀に国風文化が成立した背景を説明しなさい。

5.
鎌倉仏教が武士や民衆の間で流行したのはなぜか、理由を説明しなさい。

6.
銀閣の特徴を説明しなさい。

7.
古学とはどのような学派か、説明しなさい。

8.
元禄文化と化政文化の違いを、担い手に着目して説明しなさい。

9.

1908年に戊申詔書が発せられた背景を説明しなさい。

10.

河上肇『貧乏物語』が多くの読者を獲得したのはなぜか、社会的な背景を考えなさい。


〈解答例〉
1.
律令に基づく中央集権国家が完成したことを受け、唐にならって国史を編纂し、この国の由来を記すことで天皇による支配の正統性を示そうとした。

2.
藤原氏と皇親勢力との政争が繰り広げられ、疫病もたびたび発生する中で、仏教の力で社会不安を鎮める鎮護国家思想に頼り、聖武天皇は大仏造立を発願した。

3.
密教が秘密の呪法を用いて現世利益をかなえ、貴族の間で流行したのに対し、念仏を称えることで極楽に往生できると説いた浄土教は、聖の布教により民衆にも浸透した。

4.
貴族社会の成立を背景に、それまで摂取してきた中国文化の消化・吸収の上に立ち、日本的な風土や日本人の心情に合致した優雅で洗練された文化が形成された。

5.
戦乱が相次ぐ中で内面的な救いを求める武士や民衆に対して、鎌倉仏教の僧侶は日常で実践できる平易な教えを説き、市場などで積極的に布教したことで支持を獲得した。

6.
銀閣の下層には現代和風建築の起源である書院造が用いられており、公家・武家・禅宗などの諸文化が融合して日常生活の中に昇華された東山文化の特色を示している。

7.
朱子学や陽明学を後世の解釈であると批判し、原典の実証的解釈に即して孔子・孟子の真意を汲み取るべきことを説いた日本独自の学派で、実践を重視した点に特徴があった。

8.
元禄文化は経済的成長を遂げた上方町人を担い手とする文化で、現実を肯定する精神に彩られた。一方、化政文化は江戸に流入した下層民を担い手とする文化で、享楽的・退廃的な傾向が見られた。

9.
日露戦争に勝利すると、列強の一員になるという国家目標が達成されたことから、国民の間に国家主義に対する疑問が生じた。こうした中で、戊申詔書を発して国民道徳の強化を図った。

10.
大戦景気により都市で働く労働者は増加したが、賃金の上昇に物価の上昇が追いつかなかったため生活は苦しく、一握りの財閥や成金が富を独占して経済的な格差が広がる現状を痛感していたから。


いつもありがとうございます。日々の投稿の励みになります。