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日本史論述ポイント集・古代④

教科書は、何気なく書かれているところに重要な内容が述べられていることがよくあります。

例えば、今回扱う墾田永年私財法について、山川の詳説日本史には「この法は、政府の掌握する田地を増加させることにより土地支配の強化をはかる積極的な政策であったが」と説明があります。

「土地支配の強化をはかる」とはどういうことか?

朝廷が導入した班田制は、手本とした唐の均田制にはあった、開墾地を受田額に組み込むという決まりがありませんでした。そのために、開墾地を朝廷が掌握する方法がなく、また、良民男子に2段、良民女子に1段120歩と満額に一律支給せざるをえなくなって、たちまち口分田が不足してしまったのです。

そこで、墾田永年私財法では開墾者(貴族や大寺院)に開墾地の報告を義務づけました。こうして、開墾地の掌握が可能となり、「土地支配の強化」がはかられたのです。

それは、班田制の不備を補ったとも言えるでしょう。教科書の見出しが「あたらしい土地政策」となっているのはそういう意味です。

〈墾田永年私財法=土地の私有を容認〉というステレオタイプな見方に囚われていると、教科書の記述の意味が捉えられません。何気ない記述に込められた意味を読み取るために、この「ポイント集」を活用していただけたらと思います。

それでは今回は奈良時代です。

古代④・律令国家の完成と奈良時代

Q1 国司と郡司はどのような関係にあったか?

A1

①国司は都から中下級貴族が派遣され、任期があった。

②一方、郡司は在地の豪族が世襲的に任命され、終身官であった。

③郡司は国司の監督下にあったが、その在地支配力をもって国司に協力し、造籍・徴税など律令国家の末端実務を担当した。

④これを裏返せば、郡司の在地支配力があって初めて律令国家の中央集権的な支配は可能になったと言える。


Q2 班田収授法の目的は?

A2 

①土地・民衆を律令国家が直接掌握し、豪族による私有化を防ぐ。

②民衆(班田農民)の所在を明らかにして、徴税の対象として確保する。


Q3 奈良時代に新しい土地政策がとられたのはなぜか?

A3 

①税負担の過重から浮浪・逃亡する班田農民が相次ぎ、庸調の品質低下や兵士の弱体化、荒廃口分田の増加といった問題が目立ち始めた。

②また、人口増加による口分田の増加、墾田の未掌握、造籍・校田の困難など、班田制の制度自体の不備が顕在化した。

③そこで、開墾を奨励するとともに墾田の掌握を図り、税収の増加を目指した。


Q4 墾田永年私財法の意義は?

A4

①登録された田地を増加させることで、律令国家は土地支配を強化した。

②一方で、貴族や寺院による私有地拡大の動きを刺激して、初期荘園の発達を促した。


Q5 初期荘園の経営方法は?また、9世紀には姿を消したのはなぜか?

A5

①初期荘園は、貴族・寺院・地方豪族などが自ら資本・技術を投入し、班田農民や浮浪者を労働力として挑発して、独占的に山林原野を開発した。

②しかし、それは国司や郡司の協力に支えられていたものであり、また、律令の強制力を拠り所としていたため、律令の衰退し郡司の支配力の低下とともに姿を消した。




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