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日本史論述ポイント集・中世⑦

今回は中世の社会・経済についてですが、キーワードは〈自立〉です。

自立した農民らが惣村を結成して自治を行う。座に属する商工業者が本所の庇護のもとで自立的に経済活動を行う。自立的な国人らが守護の領国に支配に抵抗して国人一揆を形成する。

このような〈自立〉的な存在が現れた背景としては、①経済的な成長と②強力な支配者の不在という2点が指摘できるでしょう。

上から抑えつける力がなかったがゆえに、経済力をつけた農民らが〈自立〉的な組織を形成していったのです。

〈自立〉をキーワードに見ると、中世という時代がより深く理解できるはずです。


中世⑦・中世の社会・経済

Q1 惣村はどのような組織か?また、その成立にはどのような背景があったか?

A1

①農耕儀礼や共同作業を通じて結びついた、名主層を中心とする農民らの地縁的な自治組織を惣村という。

②惣村は、惣百姓が参加した寄合の決定に基づいて自治が行われ、秩序の維持のため警察権を行使する地下検断や、年貢を領主に一括納入する地下請などを通じて、支配者から自立していった。

③惣村の成立の背景には、農業生産力の向上による農民の成長と、戦乱に対する自衛の必要性があった。名主層の中には、守護と主従関係を結んで侍身分を獲得する者(地侍)もいて、これも惣村が支配者から自立する要因となった。


Q2 土一揆がおもに畿内で起こったのはなぜか?

A2

①農業の発達に伴い自立した農民らが惣村を結成し、領主の違いを超えて広く連帯していた(惣荘・惣郷)。

②流通の中心であった京都の周辺にある畿内の農村には、金融資本が深く浸透し、土倉や酒屋に対する借金に苦しむ者が多かった。(→私徳政の展開)

③支配者の交替によって社会のさまざまな関係が改められるという社会観念があり、天皇や将軍の交替時に「代始めの徳政」を求めて蜂起した。


Q3 座はどのような組織か?

A3

①中世の商工業者によって結成された同業者の組合のこと。

②院政期に、寺社などに所属して産物の貢納や労役奉仕を行う集団として成立した。

③室町時代には、座衆が座役を納める見返りに、関銭の免除や販売の独占を認められる営業座として発達し、荘園を侵略された本所にとって新たな収入源となった。


Q4 撰銭令が出された背景と、内容・効果について説明せよ。

A4

①室町時代には、輸入中国銭が利用されていたことから、粗悪な銭や私鋳銭も出回り、民衆はそれらを嫌って撰銭を行ったため、円滑な流通が阻害された。

②そこで、幕府や大名は、悪銭の使用禁止や精銭との交換比率を定めた撰銭令を発して、貨幣流通の健全化を図った。

③しかし、一元的な支配者が銭を発行したわけでかったため効果は薄く、撰銭行為は依然として行われた。


Q5 守護(大名)と戦国大名は、土地や農民の支配においてどのように異なったか?

A5

①幕府から与えられた職権に基づいて領国を支配していた守護(大名)は、守護請などを通じて荘園に依存する存在であり、農民に対しても荘園を通じて間接的な支配しか及ばなかった。

②一方、自力支配を貫徹した戦国大名は、家臣となった国人や名主に年貢高を自己申告させる指出検地を行うことで、荘園を否定して土地・農民に対する直接支配を強化した。

Q6 戦国大名が分国法として発した喧嘩両成敗法の目的は?

A6

○家臣相互の自力での紛争の解決を否定し、大名に委ねさせることで、裁判権を確立し、領国の平和を実現する。





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