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日本史論述ポイント集・文化②

前回は、論述における文化史問われ方について説明しましたので、今回はよりレンジを広げて、文化史の学習方法についてお話ししたいと思います。

文化史の勉強のしかたは、図説で作品を見る、これに尽きます。

作品名を字面だけ追っていても、覚えられるものではありません。現物を見る、そして、大まかな特徴をつかんでほしいのです。

たとえば、今回扱う浄土教に関係する空也上人像は、教科書などでもおなじみですね。

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口から何か吹いていますね。六体の阿弥陀仏です。なぜ六体なのか分かりますか?空也が唱えた念仏が、「南」「無」「阿」「弥」「陀」「仏」と1文字ずつ阿弥陀仏となったのです。

浄土教が、南無阿弥陀仏と念仏を唱えれば、阿弥陀仏の力で極楽浄土に往生できると説く教えであることが、確認できますね。

また、杖を持ち鉦(かね)を鳴らしながら歩くその姿勢からも、市中で民衆に布教を行い「市聖」と呼ばれたことがうかがえます。

このようにして、その時代の文化の特徴や、その特徴が生み出された背景について、理解を確かなものにしてほしいのです。

このような内容は、図説で解説が書いてありますので、しっかりと読むようにしてください。

作品を見る際には、次の3点を必ず押さえてください。

1-いつの時代の作品か?

2-作者は誰か?

3-どこに所蔵されているか?

空也上人像で言うと、1-鎌倉時代、2-康勝(運慶の子です)、3-六波羅蜜寺(京都にある、空也が開いた道場に由来します)です。知らなかった事項は用語集などで調べれば、知識の肉付けができます。

以上が文化史の学習方法ですが、初めから覚えようという気持ちでいると、分量が多すぎて嫌になってしまうと思います。ですから、まずは図説とお友達になってください。時間を見つけて図説をながめる。そして、自然と覚えているというのがベストです。

それでは、今回は前回から引き続き、古代後期の文化です。担い手と背景に留意して、特徴をつかんでください。


文化②・古代後期の文化

Q1 平安初期の仏教(天台宗・真言宗)の特徴は?

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①仏教の政治介入を嫌った桓武天皇が平安京への寺院の移転を認めなかったことから、山岳仏教として発達し、在来の山岳信仰とも結びついた。(修験道)

②従来の南都六宗に代わって鎮護国家の役割を果たした。

③加持祈祷によって現世利益をかなえる密教が、皇族・貴族の支持を集めた。


Q2 弘仁・貞観文化の性格は?

①学問(儒教)や文芸などの教養が国家の隆盛の礎になるとする文章経国思想が貴族の間に浸透し、漢詩文の作成がさかんになった。

②そうした中で、嵯峨天皇は唐風の宮廷儀式を取り入れたり、漢詩文集を勅撰したりするなど、唐風化政策を推進して国家の威厳を飾ろうとした。

③一木造の仏像や、密教の世界観を表した曼陀羅など、神秘的な密教芸術が発展した。


Q3 浄土教の特徴は?

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①南無阿弥陀仏と念仏を唱えれば、阿弥陀仏の力で極楽浄土に往生できると説かれた。

②疫病・火災などが度重なり、社会不安が増大するなか、末法思想によって信仰が強められ、空也・源信ら聖の市中での布教によって民衆にも広まった。


Q4 国風文化が成立した要因は?

A4

①それまで受容してきた中国の文化が消化・吸収され、その上に日本の風土や日本人の嗜好に合った文化が洗練された。

②そうした中で、漢字からかな文字が成立し、日本人の心情や日本的な自然を細やかに表現することが可能となった。


Q5 院政期の文化の特徴は?

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①武士の成長や聖の布教を背景に、都の浄土教文化が地方にも波及した。

②民衆の間で生まれた今様、田楽・猿楽などの芸能が、貴族にも好まれた。(後白河法皇撰『梁塵秘抄』など)

③時代の転換期であったことから、歴史物語や軍記物語が多く著された。

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