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カネコフレシノ【先攻:キッドフレシノ】

僕はキッドフレシノの曲をひとつも知らぬ。もとい。カネコアヤノと一緒に製作した「cats&dogs」だけは知っている。が、それはカネコアヤノが歌っているから知っているようなものなので、フレシノの曲は知らぬのと同じようなものだ。ただフレシノという存在は知っている。坊主でかわいらしい笑顔の持ち主で、カネコアヤノとヨギボー(人をダメにするクッション)でゴロゴロしながらトーク動画は愛らしくて何回も見た。一方で、楽曲に合わせて言葉をまくし立てるその姿は勇ましくて格好良い。フレシノについてそれくらいは知っている。

6月某日、Zepp Nanbaで行われた催しに足を運んだ。行われた催しとはキッドフレシノとカネコアヤノのツーマンライブだ。数ヶ月前に今はなきスタジオコーストで行われたものの大阪バージョンだ。スタジオコーストの大きな大きなミラーボールの前でツーショット写真を撮っていたカネコアヤノとフレシノがなんともかわいらしくて、必ずやこの2人を見てみたいと思っていたところにちょうど大阪へやってきたのでチケットをとった。

開演時刻ぴったりに場内が暗くなり、フレシノの音楽が流れてきた。そこへフレシノが単騎でステージの真ん中へ登場し、言葉をまくし立て、語り始める。僕はライブに頻繁に行く方だと思うけれど、今まで見たバンドの多くはサポートのバンドメンバーがゾロゾロと登場し、セッションで雰囲気を作ったところにフロントマンであるボーカルが登場する。しかし、フレシノはひとりで登場し、語り始める。僕はフレシノの曲をひとつも知らぬのでなにを歌った曲なのかはさっぱりわからぬが、その佇まいはソフィスティケートされたスマートな男そのものでなんとも心地がよかった。

そして頃合いの良い頃にバンドメンバーがゾロゾロとやってくるのだけれど、その中に見たことのある顔がある。いや、光の具合で人はシルエットでしか認識ができないので、正確にいうならば、見たことのあるアフロ頭がある。それも3ヶ月前に同じ場所でみたアフロ頭。そう、ペトロールズのジャンボこと三浦淳吾だ。他に藤原ヒロシのベースを弾いていたり、みゆなのベースを弾いていたり、よく見るとジャンボはいろんなところでサポートとしてベースを弾いているのだなあとしみじみと思う。

僕はフレシノの曲はひとつも知らぬので今なにを歌っていて、周りがなぜイントロに湧き立っているのかがわからぬ。けれど、ひとつ変拍子の曲があって、それを聞いたときにとあるものを思い出して。ギターやドラムや打ち込みの音が変拍子でけたたましくなりながらベースは落ち着いたメロディーをなぞり、フレシノの語りが乗せられる。作曲者がほどよく魅力的に狂っていて、尚且つバンドのレベルが高くなければなすことのできない所業。そう、ZAZEN BOYSを彷彿とさせる曲だ。ZAZEN BOYSから臭みを取り除いて爽やかさを振りかけたようでスマートに格好良いのがフレシノである。

それにしてもフレシノはよく動く。マイクを手にステージを歩き回り、手を広げたりあっちを向いたりこっちを向いたり。それでいて息継ぎのタイミングも見当たらないほど捲し立てられる語りの調子は狂わない。きっとフレシノは8つくらい肺を持っているのだろう。僕はフレシノの曲をひとつも知らぬけれど。

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