12月24日 金

僕にとってのクリスマスソングは浜田省吾の「ひとりぼっちのクリスマスイブ」という曲で、この曲が収録されているレコードを聴きながら、大掃除ついでに部屋の模様替えをした。模様替えといっても、ベッドの向きを変えただけ。かれこれ3年もこのベッドを使っており、ベッドの背もたれにもたれかかる姿勢で本を読んだり、映画を観たり、日記を書いたりしていると、徐々に背もたれがガタついてくる。バキッと折れてしまう前に手を打とうというわけだ。これまではベッドの側面が壁に沿うように縦向きで(つまり、長方形の部屋をそのまま縮小した向きで長方形のベッドを)置いていて、長座の姿勢で座ると頭半分くらいまでが隠れるほどの高さの背もたれの裏は掃除機やギターケースなどを置く物置にしていた。そのベッドを90度回転して、背もたれを壁にくっつけたわけである。部屋に入るとベッドは横向きに鎮座している様子。こうしたおかげで、少し大きいテーブルが置けるようになった。今までは置くためのスペースがなかったので、来客用テーブルにしており、けれど来客の機会なんて滅多にないので、ずっと物置スペースで眠っていたが、3年の時を経てようやくレギュラーメンバーになった。ものやスペースをこれまでよりも有効活用できている気がする。
ベッドの向きひとつで部屋の印象はガラッと変わる。これまでは、入り口からベランダまで広く開かれたスペースがあったが、今はそれがベッドによって遮られている。部屋の奥行き感や開放感が削がれている。そして、プロジェクターを置く場所がなくなった。僕の部屋の中で唯一、投影することができる壁に対するプロジェクターポイントがベッドの上なのである。ベッドの上にプロジェクターなんか置けるわけがない。画面が歪んで、映像も歪んで、ついにはまっとうな僕の根性や性格もひん曲がってしまう恐れがある。それはまずい。ということで、突っ張り棒などを駆使して、天井からぶら下げるという計画を進めている。この模様替えでクリスマスイブの午前中が終わってしまった。

おかんと妹からクリスマスプレゼントが送られてきたため、僕もお返しを送ろうと思い、一乗寺の恵文社へ。本から雑貨から衣服まで扱うこのお店は、プレゼント選びには最適のお店である。一乗寺は大好きな街で、毎日でも行きたいし、なんなら住んでもみたい。そんな大好きな街でも、僕の家からは少しアクセスが悪く、自転車で30分弱ほどかかる。別に行くのに億劫な距離でもないけれど、気軽に行くことができる距離でもない。考えてみれば、前回一乗寺にきたのは半年も前のことだった。もっと頻繁に足を運ばねばと思った。おかんと妹と自分に数点ものを買い、1回家に戻ってそれらを置き、もう1度、今度は出町柳の方へ向かう。ずっと気になっていた喫茶店”ウッディタウン”でピザトーストとホットコーヒーを注文し、たばこを吸って、スズキナオさんの『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』を読む。大阪に住むお酒が大好きなライターさんのエッセイで、僕はスズキナオさんのエッセイ本が大好きだ。読んでいると酒が飲みたくなる。関西を中心に美味しいお酒の飲み方の教えを乞うこともできる。そして、この人の本を読んでいると、身近な生活の中の幸せに気がつく。近所を散歩して、知らないお店に入って、ご飯を食べて酒を飲む。多くのお金を持って、大きな家を建て、外国車に乗り回し、円満な家庭を作ることだけが幸せではなく、自分ひとりが気持ちよくて面白い生活をしたいと思う自分が肯定されている気がする。

そうこうしているうちに外は暗くなり、時刻は6時。誠光社に向かう。本屋さんで映画を観るというイベントだ。以前出町座で特集されていたが僕は見逃していたミア・ハンセン=ラブという監督の『すべてが許される』という映画を観て、そのあと下鴨のほうへ打ち上げに行く。誠光社に集まる不思議で文化的な人たちの中に僕がいることが一番の不思議だった。誠光社の店主堀部さん、大学時代、ジョナス・メカスに会いに行ってインタビューまでされている今回の上映会の企画者の方、フリーでライターをやられている方、イラストレーターでZINEもを作られている方、仕事をやめて大学で映画を学ぼうとされている方、何をされているのかは謎な方、みんな自分のしたいことをしたいようにしながら生きているという感じで、何よりも楽しそうだった。僕がいちばん望む生き方をされている人たちだった。こんな人たちと酒を飲みながら話していると、そんなに無理して将来のことを考える必要はないと思えてくる。僕は未来のことはあまり考えられなくて、就活のこととか卒業後のことよりも、今日なんの映画を観ようかとか、明日どこへ行こうかとか、そんなことばかり考えているので、合理的に生きられるような人間ではないし、そんな不確定な未来のことに不安を感じながら飲むお酒はきっとおいしくないと思う。

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