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〈詩〉ほととぎす鳴いた

あしひきの 朝から雨降る山道で
右左交互に 運ぶ 足元から
ヤブカンゾウ すうっと伸びて 不意に

ほととぎす鳴いた 
石段 どこから始まった 
思い出せず 履いていた靴 いつしか破れて
緑の葉 しずくを弾いて 
歩けば 濡れていく 靴の中 
聞こえた声
意外と近くからだったように思われ 
振り返る 梢 揺れる 

ひどい仕打ちだったと言い 駆け抜けた
胸が詰まり 息が止まり
苦しくなって こらえ切れなくて 泣いた
ずーっと長いひもの 端につかまって
引かれてゆく それぞれの ストーリーの必然 

何色してたのかな 
ぬばたまの 闇の中では見えない
そもそも 色というもの
あかねさす 紫の花 
白く咲いて オレンジ色になって
それも それぞれの ストーリーの必然
人によって 違う色に見えて それでいい
だから 言い訳はいらない

山道 少し続いて やがて
尾根道に出て 力も抜けて 見おろせば
田は植えたばかりに見えて
どこかから 鳴き始める 死出の田長 
とどろく

おおげさかも知れないけれど 
とどろく

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