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〈詩〉真昼の駅

階段を降りきろうとしたところで
目の前をかすめてはらりと落ちたのは
鳩の羽根だったか

最後の一段を軽やかに踏みきったところで
ドアを閉じて去った電車は各駅停車だったが
別段くやしくもない、と感じる

そう言えば、見たこともない駅のホームで
目覚めた夜があった
根拠のない確信を持って歩き出した帰り道が
どんなに歩いても見知らぬ光景の連続で
一足ごとに怪しさがふくらんで行った

真昼の駅のホームにはもうだれもおらず
ただ夏の陽射しだけが照りつけている
陽炎の向こうに浮かぶ不機嫌な顔は
あれは不機嫌な顔のだろうか





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