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〈詩〉油彩の静物画

垂直な机の天板に固定された
果物籠とコーヒー挽き

斜めの線はまっすぐにゆがんで
前を見つめたまま後ろを気にするような
悲しげな顔をしているからか
吐く息も吸う息も
空気はみんなひどく冷たくなってしまう

貧しい色彩に籠められた感情は
頬杖をついた人の目から放射されて
閉ざされた部屋の空気の中に凍り付き
その冷たさの感触が
さっき私に手渡されたものだったらしい

吊るされた牛の枝肉の横に立っている人
レモンと花束とワインボトル
生きていることの方がよっぽど貧相だね
ささやく声が聞こえてくる
外の世界は相変わらず暑いんだろうか
夕立でも来るといいのにね

垂直な机の天板に敷かれたテーブルクロス
永遠にずり落ちて来ないながらも
あいまいな空間を必死にさりげなく
保ち続けているのはどんな力なのだろう







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