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滝口寺伝承

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「横笛」:横笛は平安末期のお話(エピソード0) 「火宅の女(ひと」:は現在執筆中の鎌倉~南北朝時代のお話です。 同じ滝口寺であった二つの物語です。
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#匂当内侍

【滝口寺伝承(2)火宅の女⑤】

【滝口寺伝承(2)火宅の女⑤】

二心都を出立した官軍新田党は南西へ進路を取り、一路男山(岩清水)八幡宮へ向かいました。高祖八幡太郎義家が元服した源氏縁の社であります。

『南無八幡大菩薩』
此度の戦は必勝なくば必死。神、仏、先つ祖(おや)、何でも縋(すが)りたい、何としてでも、再びこの地を踏むのだと、義貞は一心不乱に念仏を唱えます。

時折、美しい麗子の顔が義貞の頭を過(よぎ)り、寂寞の想いにかられます。

足利と新田は倶(と

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【滝口寺伝承(2)火宅の女③】

【滝口寺伝承(2)火宅の女③】

真実(まこと)「帝は、近ごろ新しい女御に心染めているそうです。更衣になられたその某(なにがし)の君はまだ齢十五です。内裏の花の色は移ろいゆきます。私もまた旧き(ふるき)もの。」

「後宮には帝ひとり。帝にかしづく女御は廉子様はじめ二十数人おります。私の知らない間にいなくなられた女御もいらっしゃいます。帝の御寵を競いあう情念の炎と炎のぶつかり合いは、互いを焼き尽くすまで続きます。

『帝の寵幸をうけ

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