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弁護士のキャリアプラン(新人中堅弁護士向け)

キャリアを身につけていく発想は大別して2つあるような気がする


すなわちこういう発想です。↓

①浅いゼネラリストからスペシャリストへ
お医者さんでいえば、研修医のとき一通りいろいろこなして、その中から深掘りしたいことを決めた上で医局に入って専門医を目指すというような、キャリアを絞っていく発想。

②スペシャリストから、技能を転用してやれることを増やして複数ジャンルのスペシャリストへ(やれるジャンルが増えればスーパーゼネラリスト?)
まず狭いジャンルをやりこみ、そのジャンルがある程度できるようになってから、そこから派生していたり、似た対応ができるようになることをこなせるようになっていって、自分ができることを少しずつ広げていく発想。

私は修習生初期のときは①の発想でした。修習生当時の自己紹介でもまずは幅広く色々やりたいですと言っていました。

しかし、修習時代にいろいろな弁護士を見て、②の発想の方がいいと思い直しました。そっちの方が結局は本当のゼネラリストになれると思ったからです。

私、就職した事務所は、「保険金詐欺の疑いがある事案を調査して保険金詐欺かどうかを判断して、有責(保険会社が保険金を払う責任がある場合)なら保険金を支払い、免責の場合は支払わないという通知をし、場合によっては裁判で保険金請求を突っぱねる事件(モラルリスクと呼ばれる事件)」ばかりする事務所でした。

どうですか?
ジャンル、滅っ茶苦茶、狭くないですか?

こんなに狭いジャンルで弁護士のキャリアは広がるのか、もちろん入所前に考えました。しかし、他の事務所からも内定がありましたが断ってそこに決めました。そこ、別に給料が高かったわけでもないのですが、何というか、忙しそうな事務所だったのですぐ自分で色々やらせてもらえるだろうと思ったのですよね。

結論から言えば、この方針は大当たりでした。

風が吹けば桶屋が儲かるというわけではありませんが、その後、私のキャリアはこのような感じで増えていきました。

■パターン1
①モラルリスクばかりやる。

②交通事故を使った保険金詐欺もやる。

③普通の交通事故もできるようになる。
 ※交通事故ができるようになった結果、さらに他ジャンルでも色々役立つのですが割愛。まあ、ホント広がりました。

■パターン2
①モラルリスクばかりやる。

②反社や半グレのモラルリスクもでてくる。

③そういう案件の依頼も来るようになる。

■パターン3
①モラルリスクばかりやる。

②ちょっと疑義がある労災事故などもやるようになる。

③普通の労災事故の対応もできるようになる。損害論は交通事故類似なので交通事故からの転用も結構あった。

■パターン4
①モラルリスクばかりやる。

②細かい約款などをつつかれる案件もやる。

③約款事件に詳しくなる。約款事件が来るようになる。

■パターン5
①モラルリスクばかりやる

②ときには保険会社の見立てミスもあり、契約者は激怒。あと、代理店が激怒していたりしてそのような対応もするようになる。

③苦情対応もやるようになる。
 ※パワー系苦情、ネチネチ系苦情、嫌がらせなど。

④嫌がらせ対応や企業苦情案件の依頼が来るようになる。

⑤企業から嫌がらせや苦情処理以外の普通のトラブル案件も来るようになる。フランチャイズのトラブルなどもやるようになる。

⑥社内のクレーマー(問題社員)対応もやるようになる。

⑦普通の労働案件も来るようになる。

■パターン6
①モラルリスクばかりやる

②偽装事故案件や交通事故を意図的に起こす故意疑義案件もやる。

③工学鑑定、事故の発生機序、外傷治療がらみの知識もそこそこつく。

④そういうのが問題になるような事件の依頼が来るようになる。

・・・書いていて面倒くさくなってきたというか、疲れてきたので順序やいきさつは割愛しますが、企業から依頼を受けているうちに、気がつくと、株式がらみの相談や株主総会、企業の買収、持っている会社の特別精算、不祥事対応、SNS炎上対策、知財、不動産、請負契約、刑事弁護、企業や法人の経営(取締役や理事の就任)、相続対策、医事事件、事業承継・・・など、一体、自分は何屋さんなのかよく分からない感じであれこれやるようになりました。

で、今回、何が書きたかったのかというと、キャリアを広げられるかどうかは、結局その人次第なのかな、ってことです。

対応ジャンルが狭い事務所だから自分のキャリアは狭いままで広がらないんじゃないか、とは考えず、今自分が持っているスキルは応用すればこういうジャンルもできるんじゃないかと考えた方がいいかもね、というお話しでした。

修習生や新人中堅の同業者の皆様、是非参考にしてください。

(おわり)
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