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シナリオ「エレンと幸福の青い鳥」

こんばんは!逢魔時レイです。

今回は声劇用に作った台本ではなく、演劇部時代に実際に上映したミュージカル台本をミュージカル要素抜きにしてリメイクしました。
青い鳥をモチーフにしたファンタジーでコメディチックな物語です。
コンクールでは舞台美術賞をいただいたり、
身に染みるダメ出しをいただいたり、ミュージカルというものは難しいんだなぁ~と思ったのも懐かしい記憶です。
リメイクするにあたって若干中二的セリフを増やしたので演じていて楽しくなれると思います(多分)
なお、昔の音源も載せておりますのでお時間ありましたら私作曲のしょぼしょぼ音源と怖井さん編曲の豪華音源を聴き比べてみてくださいね♪
所要時間は30分~40分ほど。

もし台本やセリフを使用した動画をYouTubeやTwitterにアップする際はお声がけいただけると助かります🙇‍♀️
スペースや配信等では特に許可なく使用していただいて大丈夫です👌

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【あらすじ】
気が付くとそこには見慣れぬ景色。
主人公エレンは不思議な森に迷い込んでいた。
そこで出会った魔女はエレンに使命を言い渡す。
『青い鳥を見つけておくれ』
不思議な魔法をかけられ世界を移動する能力を身に付けたエレン。
そこで様々な人物と出会っていくが……
果たして青い鳥は見つかるのだろうか。

【登場人物】
※数字が大きいほど難易度が高い。
エレン / 主人公。ちょっと頭のネジが外れた女の子。 難易度:2
魔女 / 出番最初と最後のみ。老婆口調だが見た目は若い。 難易度:2
ベアト / 名前「ベアトリーセ」 軍人の女の子。怖い。 難易度:4
天使 / 見た目がおっさんの天使。胡散臭い。 難易度:2
死神 / 名前「ロッゼ」 気が弱い。二面性。 難易度:5
鎌 / 死神の兄。もう死んでる。中二臭い。 難易度:3
ヨハン / 健全な少年。全然セリフない。 難易度:1

キャラクター

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(シーン:森)
(音楽:不思議な森)


爽やかな風が通り抜ける森の小道
鳥やきのこが歌い、主人公を森の奥へいざなっていく

エレン「ここはどこかしら?不思議な森……」
魔女「おいでおいで、こちらにおいで。」
エレン「ウフフ、私はだあれ?あなたはだあれ?
    いったい私、どうしてこんなところにいるのかしら。」
魔女「さあ近くへおいで、顔をお見せ。お前にこれから魔法をかけよう。
   この魔法はお前にしか効かない、不思議で素敵な魔法だよ。」
エレン「まあ、魔法ですって?あなたは魔女さんなの?
    わからないわ、どうして私に魔法をかけてくれるのかしら。」

音楽が次第に変化
しばらくして主人公が魔女に駆け寄る

魔女「お前に探してほしいものがあるんだよ。
   とても貴重な……珍しいものさ。」
エレン「どうして魔女さんは自分で探さないの?」
魔女「オホホホ、それは自分ではなかなか見つけられないものだからさ。
   それにね、これはお前の使命なんだ。
   その証拠にお前はこの森にいざなわれた。」
エレン「あらまぁ。いつの間にか変な所へ来ちゃったと思ったら
    そんな理由だったのね。
    ところで魔女さん、その探してほしいものってなあに?」
魔女「それはね……(間)
   青い鳥さ。青い鳥を見つけておくれ。」
エレン「青い…鳥……?」

(音楽:L'Oiseau bleu)

魔女「ロワゾ・ブルー。幸せの青い鳥だよ。
   ああ、どこに行ってしまったんだろう。
   狭い鳥かごから抜け出して、自由に世界を旅しているのかい?」
エレン「あらまぁ。それはお気の毒ね……
    でも私鳥なんて探したことないわ。どうすればいいのかしら?」
魔女「この羽根を追いかけなさい。
   そうすれば青い鳥が渡った世界にお前も飛べるのさ。
   さあお行き、青い羽根、青い羽根を追いかけるんだよ……」

徐々にフェードアウトする魔女

エレン「……なんだか変な体験をしちゃったワ。
    この羽根を追いかけるって……一体どういうことなのかしら……」

突然羽根から青い光が放たれ、エレンを包み込んでいく

エレン「キャッ、なになに?」

(シーン:瓦礫の街)
軍歌のような音楽が流れている
森とはまったく違う世界

エレン「……?ここはどこなの?なんだか怖いところだわ……」

上手から鞭を持った女(ベアトリーセ)とその部下がやってくる
行軍の最中の様だ
ベアトリーセは胸に青い羽根を付けている

エレン「あら、あの人私と同じ羽根を持ってる…!
    (呼びかけるように)あのー!すみませーん!
    その羽根見せてくれませんかー!?」

ベアトリーセ一行の歩みが止まり

ベアト「(別段驚く様子も無く)……貴様、何者だ?
    反逆者ならこの私が始末してやろう。」
エレン「反逆者…?ち、違うわ!
    私は、えーっと……不思議な森からやってきた女の子よ。」
ベアト「(部下に対して)連れていけ。」
エレン「イヤーッ!やめて、放してよ!私は敵じゃないわーっ!」

部下ともみ合っているうちにエレンの青い羽根が落ちる

ベアト「……!?(ハッとして胸の羽根を見る)
    (部下に対し)お前たち、少し離れろ。
    貴様、なぜそれを持っている…?」
エレン「この青い羽根のこと…?
    えっと、私本当に不思議な森からここへきたのよ。
    魔女さんに、この羽根を追いかければ
    青い鳥のもとへたどり着けるって言われて…………」
ベアト「にわかには信じ難いが、
    私以外にこの羽根を持っている者がいるとは……」
エレン「……?」
ベアト「……貴様とは何か妙な縁を感じる」
エレン「そうなの?
    ……あなた、よく見ると私とそんなに歳の変わらない女の子ね。
    どうしてそんな武器なんて持っているの?」
ベアト「……いいだろう、少し昔話をしてやる。」

(音楽:争いと神への言の葉は)


胸につけている羽根からほのかに青い光が放たれている

ベアト「私が生まれる前からこの国は戦争をしていた。
    隠れるように暮らしていた母と私は
    やがて敵国に見つかり囚われの身となったが、
    母はまだ小さかった私を逃がしてくれた。
    その時母に、私は王の落とし子であると打ち明けられたのだ。
    王族に受け継がれるという幸福の青い羽根を
    母は私に授けてくれた。
    もう二度と会えないと悟りながら、私は逃げた。」
エレン「そんな……」
ベアト「この国で生き延びるためには力が必要だと子供ながらに感じた。
    私はこの羽根に誓った。
    力を手に入れるならどんなことでもやってみせると。」
エレン「ごめんなさい、私は戦争なんて経験したことがないから、
    恐ろしさなんて想像もつかないのだけれど……
    きっとお母様はあなたが幸せになれるようにって
    この羽根を渡してくれたんじゃないかしら……」

鞭をしならせるベアトリーセ

ベアト「ハハハ!どれだけ幸せなんだろう、争いがない世界とは!
    私は神へ誓うことをやめた。
    神は国も母も救いはしなかった。
    だから私が救うのだ。
    恐怖によって全てを支配し、争いのない世界を作る。
    それが私の幸福だ。」
エレン「そんな悲しいこと言わないで!」

エレン、ベアトリーセを抱きしめる
青い光がどんどん強くなっていく

ベアト「……な!?貴様、離せ!」
エレン「幸せってもっと心がポカポカするものよ!
    あなたそんな辛い顔をして幸福だなんて、
    綺麗な顔が台無しだわ!」
ベアト「っ……何だと!?」
エレン「ねぇ、小さかった頃のあなたが見えるの。
    とても優しい目をしてる。
    でも今のあなたはとても怯えた目をしているわ……
    大丈夫、私があなたの幸せを見つけてあげるから……!」
ベアト「なんだこの光は、貴様何をした……!?」
エレン「わからないけど、
    きっとこれからいいことが起こるはずよ……」

青い光が2人を包み、瓦礫の街から次の世界へ移り変わる
(シーン:天国)

エレン「……また随分様子が違うところね!
    とってもフワフワしててなんだかいい気持ち……」
ベアト「なんだここは……おい!貴様!」
エレン「貴様じゃないわ!私はエレンって言うの、あなたは?」
ベアト「っ……ベアトリーセだ。一体何が起こったんだ。」
エレン「青い羽根が私たちを導いてくれたのよ。
    ここがどこだかわからないけど、
    世界を移動できるってことが証明できたわね!」
ベアト「くそっ、頭が痛くなる……」

2人が話していると下手から天使が登場
音楽が流れ出し周囲が明るくなる

天使「おーおー、今日もいい天気だねぇ。
   やぁ綺麗なお嬢さん達、こんにちは。」

天使、普通に上手へ去ろうとする。2人は呆気に取られている。

天使「……(二度見して)人間がいるーーー!!!!?!?」
ベアト「うるさい!誰だ貴様、黙れ!(鞭を振るう)」
天使「うおっ!危ねえ!てかななななんで人間がいるの!?」
エレン「えっとえっと私たち瓦礫の街からきて
    その前は不思議な森から来てえっとえっとあわわ」
天使「えっ、なんもわかんないあわわわ」
ベアト「いい加減にしろ!黙れ!(2人ともビンタする)」
エレン「痛い!」
天使「痛い!ちょっと気持ちいい!」
ベアト「おい貴様、ここはどこだ?20文字以内で簡潔に説明しろ。」
天使「オレ、テンシ、ココ、カミ、スム、ニンゲン、ナンデ、イル?」
エレン「すごい!20文字ピッタリだわ!」
ベアト「天使だと?どいつもこいつもふざけやがって……
    おい、エレンとか言ったな。私をどうするつもりだ?」
エレン「どうしよう……勢いで一緒にきちゃったけど
    先のことをあんまり考えてなかったわ。
    ねぇ天使さん、私はどうすればいいの?」
天使「えっ、知りませんよそんなこと。
   大体ここは人間が来るところじゃないの。
   大天使とかに見つかったらオレが怒られちゃうから。
   ああもうどうしよ。」
エレン「あらまぁ、天使も大変なのね……あの、
    つかぬことをお伺いしますがあなた青い羽根持っています?」
天使「青い羽根?白い羽根ならいっぱいあるけど……(背中の羽根を見せる)」
ベアト「くそっ!どうしてこんなことに!(羽根を引き抜く)」
天使「いたーーい!オレの羽根!!」

こそっと舞台袖から死神が出てくる

死神「あのぉぉお~~~………」
エレン「ん?あのちょっと、今何か聞こえました?」
天使「何かって何が?」
エレン「(大袈裟に)地獄の底から響くような……死神のような声です!」
死神「すみませぇぇえ~~ん…………」
エレン「ホラ!今にも死にそうなこの声!」

上手からおどろおどろしい音楽とともに死神登場

エレン「きゃああ、死神よ!ごめんなさい!」
天使「いやああ!死神!」
ベアト「また変なヤツが…………」
死神「しっ、死神死神って、初対面から失礼じゃないですかあ!」
天使「いやこのお嬢さんが死神っていうからてっきり死神かと……」
死神「ししし、死神には違いないんですけどぉ……」
エレン「きゃー!やっぱり死神じゃない!
    あ、つかぬことをお伺いしますがあなた青い羽根持っています?」
ベアト「コイツといると疲れる……」
死神「え、青い羽根ですか?ここここれでいいなら持ってますけどぉ……」

死神、ローブの中から青い羽根を取り出す

エレン「まぁ!まさか死神さんが持っているなんて!」
天使「ち、ちょっと待ってくれ!
   つい流されてしまったけど色々と説明してもらいたい。
   なんで人間や死神がここにいるんだ!?」
エレン「そうよ、忘れてたわ!色々と説明しなくちゃ!
    これが!こうで!あれが!こうなのよ!」

大きく動きを付けるエレン
しーんとする一同

死神「なるほど、つまりエレンさんは魔女さんに魔法をかけられて
   青い鳥を探す旅をしてるんですね」
天使「お前すげーな!」
エレン「私もまさか伝わるとは思ってなかったわ」
死神「なっ、なんでですかぁ!ぼぼ僕ちゃんと空気読んだのに……」
ベアト「エレン、いつまでこんなことをしているんだ!
    私を元いた世界へ返せ!」
エレン「待ってよベアトリーセ!まだあなたの幸せを見つけられてないわ!
    このままだとあなたはまた争いの中に戻ってしまうのよ?」
天使「あの……お取り込み中申し訳ないですが、
   そろそろ帰ってくれませんかね?
   オレがここに人間を入れたことがバレると追放されちゃうんで……」
死神「あ、ててて天使さん!待ってください、頼みがあるんです!
   そのためにぼほ僕ここに来て……」
天使「頼み!?死神が天使に何の頼みを……」
死神「僕を天使にしてください!」
天使「(ポカンとして)……ハァ!?」
死神「お願いです!ぼぼ、僕何でもしますから!」
エレン「天使って、どうして死神さんが天使になりたいの?」
死神「ぼ、僕死神やりたくないんです!
   うぅっ、これまでこの鎌で何人もの人を……ああっ!」
天使「別に天使にならなくてもその鎌捨てて
   普通に暮らしてりゃいいんじゃねーの……?」
死神「そそそれができたら僕だってぇ!
   ……セェイッ!!(天使を切りつける)」
天使「ギャーッ!やめろ、話せばわかる!」
死神「違うんです、体が勝手に!
   ぼぼ僕はやりたくないんです!
   うわぁん!セヤッ!(また切りつける)」
エレン「しっ、死神さん落ち着いて!」

エレン、死神のローブを掴む
フードが外れたことによって初めて死神の顔がハッキリと見える

天使「んんッ!?お前……女……?」
死神「えっ、はい……そそそうですけどぉ……一応……」

コロッと態度を変える天使
そっと死神の肩を抱きつつ

天使「そっか……困ってるんだな……
   力にはなりたいがオレは名もなき天使、
   どうすることもできねぇよ……てかまず種族?違うし(笑)」
ベアト「フン、貴様こんな胡散臭いおっさん天使に頼って何になる?
    死神や天使など空想上のものだと思っていたが、
    まさかこんな弱者共とは……」
天使「ハイハイ!意義あり!オレはまだおっさんじゃありません!」
死神「ぼぼ僕だってぇ、死神らしい死神に生まれてこれたら
   どれだけ幸せだったか……
   ……もうすぐ仕事があるんです。
   とある国の男の子で、名前はヨハン。
   孤児院で暮らしていて、まだ10歳なんです。
   今度こそ助けたいんです……!」
ベアト「ヨハン……?」

(音楽:弱虫な死神)

天使「死神が人の生死を勝手に変えていいもんなのかぁ?」
死神「寿命は変えられません。
   ただ、寿命以外の何らかの要因で死に直面した場合、
   死神が鎌さえ振るわなければその人は帰ってこれる……」
天使「どうしてもその鎌は手放せないのか?
   というか何で勝手に動くんだ?」
死神「それは……少し事情があって……ぼ、僕が天使になればこの鎌も、
   だだ大丈夫かなって、思って…………」
天使「いやぁ、君の気持ちはわかったけども、どうしたもんかなぁ……」
エレン「おっ天使さん……」
天使「ちょっと待って、今いい流れだよね?何そのおっ天使って??」
ベアト「おっさん天使か。」
エレン「そう、おっさん天使ってちょっと長いから略したのよ」
天使「もうこの子達イヤー!オレ天使人生で初めての侮辱受けてるよ今!」
エレン「おっ天使さん、死神さん助けてあげましょうよ!」
天使「助けるぅ?」
エレン「そうよ、なんて言ったって死神さんは青い羽根を持っているのよ!
    きっとこの困難を乗り越えれば青い鳥が見つかるはずよ!」
ベアト「貴様、本気で言っているのか?」
エレン「だってそれが私の使命らしいんですもの!」
死神「た、助けてくれるんですか……?ありがとうございます!
   ……ほ、ホントになんて言ったらいいか、
   う、ウワァ!!(鎌を振り回す)」
エレン「キャア!」
死神「あ、ああ、ごごごめんなさ……」
鎌「(遮るように)勝手なこと言ってくれるじゃねぇかお嬢ちゃんよォ!」

一同驚く

エレン「か、鎌が喋っ……た……?」
鎌「喋って悪いかァ?ハッハ、全くお前には呆れたもんだぜ。」
死神「に、兄さ……お前、どうして急に!」
鎌「もうすぐ仕事なんだろォ?楽しみでよォ~!
  で、話聞いてりゃお前を助けるだのなんだの……
  アッハッハ!無理に決まってんだろ、俺様がついてんだからなァ!」
天使「どういうことだ……?」
死神「これはっ、その…………(間)
   この鎌、実は僕のものじゃないんです。
   僕は、兄の代わりなんです……」
天使「兄ってまさかそいつか……?」
鎌「クハハ、まァそうらしいぜ~」
死神「こいつは兄さんの鎌……
   兄さんは地獄の禁忌を犯して死刑になりました。」
ベアト「ほう……地獄でも罪を犯したものは裁かれるのか。」
死神「あ、兄は必要以上に人を殺しすぎた……!
   だから罰を下されたんです。
   でも、死ぬ間際この鎌に呪いをかけた……
   僕、本当は死神じゃない、この呪いで
   鎌を振るわずにはいられない、それだけなんです……!」
鎌「僕はそんな仕事やりたくない!だったかァ?
  ックク、思わず笑っちまったよ。
  この名誉ある仕事をやりたくないなんて、兄貴としては悲しいねェ……
  だから言ってやったんだ、
  お前は俺様を手にするだけでいいってなァ。」
死神「や、やめ……ッ」

しばらく死神の様子がおかしくなる
苦しそうにしたあと、一旦鎌を手放す

エレン「死神さん……?どうしたの?」
死神「……ククク、こういうことだよ(鎌を持ち直す)」
ベアト「……様子が変わったぞ。」
天使「魂が入り込んだ……とでもいうか、
   あいつはさっきまでの死神じゃねぇ……」
死神「こいつメンタルげきよわだから入り込むのはチョー簡単。
   俺様が本物の死神だァ、よろしくなァ!
   罰だかなんだが知らねェが、俺ンとこのお偉いさんは
   目玉が四つもあるくせになーんもわかっちゃいねェ。
   死神が人を殺して何が悪ィ?
   これで地獄も賑わうってもんよ、ハハハ!」
エレン「何て人なの、それじゃただの人殺しと変わらないわ!
    死神さんはそんなことやりたくないって言ってたのよ!」
死神「やりたくねェってんだから
   俺様がこうやって出てきてやってんだろォ?
   じゃあ手始めにお前も連れてくとするかァ……」
エレン「い、いや……!」

死神がエレンに近づく寸前ベアトリーセが鞭を振るう

ベアト「チッ、下衆な野郎め。気に食わん……!」

死神に対し鞭を振るうが寸前で避けられる

死神「おっとォ!おっかない女だなァ、ハハハ!
   遊びはこれくらいにしてやるよ、仕事が待ってるからなァ!
   俺様ってば真面目だねェ〜」

死神、笑いながら上手へ消えてゆく

エレン「し、死神さん行っちゃった!どうしよう!」
天使「あの野郎〜!」
ベアト「落ち着けエレン!あいつの行き先はわかっているだろう。
    お前の力は使えないのか?」
エレン「そうだわベアトリーセ!死神さんは羽根を持っているから、
    追いかけられるかもしれない!」
ベアト「それに、ヨハンという少年の名前に心当たりがある……」
エレン「なんですって?」
天使「なぁお嬢さん、君にあいつを追う力があるのか?」
エレン「え、ええ、この羽根ならきっと導いてくれると思うわ。」

(音楽:天使の存在意義とは)


天使「よければオレも、連れていってくれないか……?
   せっかくオレを頼って来てくれたか弱い女の子を
   見過ごすわけにはいかねぇよ。
   それに、あーんなクソ野郎をほっとくなんて
   天使のイメージ的にもどうよって感じじゃん?」
エレン「天使さん……私たちを助けてくれるのね……!」
天使「いや、まあただ名もなき天使のオレにはそんな大した力はないぜ?
   なんとかできる限りやってみるが……」
エレン「あら!名前ならあるわ!おっ天使さんよ!」
ベアト「フフ……ん、ゴホン(思わず笑うが咳払いする)」
天使「え、笑えたんだ君……」
エレン「ベアトリーセが笑ってくれたわー!」
ベアト「笑ってない」
天使「そうか……名前か……そんな名前だが
   オレの存在意義になるかもしれんな……
   オレ達天使はな、誰かの信じる心がないと消えちまうんだ。」
エレン「そんな、おっ天使さんはここにいるわ!
    私たちが証明してあげる!」
天使「ありがとう……天使人生で初めて生まれた意味を実感してるよ。
   あと黙ってたけどこれ……」

天使、そっと青い羽根を差し出す

エレン「まぁ、青い羽根!おっ天使さんも持っていたのね!」
天使「あぁ……黙っててごめん。
   君達がくる2日前にオレの翼に生えてたんだ……
   変な病気かと思って隠してた……」
エレン「あらまぁ…………(間)
    ありがとう、これでこの世界にきた理由もわかった気がするわ!」

エレン、青い羽根を掲げる

エレン「お願い、私たちを死神さんのところへ連れていって!」

すると青い羽根から光が放たれ、3人を包み込む
(シーン:瓦礫の街・孤児院倉庫)

エレン「ウーーン……ハッ、ここは?
    暗くて何も見えないわ!みんなー!」
天使「いてて、ホントに急に世界が変わるんだな……
   ん?何か柔らかいものが……」
ベアト「どこを触っている!!」

響く鞭の音と共に倉庫の扉が開く

天使「いたーい!違う、今のは不可抗力なんだ……!」
ベアト「いい度胸だ、その翼ズタズタにしてやる……!」
エレン「ちょっと、いきなり仲間割れはやめてよ!」

3人が騒いでいると上手からヨハンが登場する

ヨハン「何してるの……?」
ベアト「ヨハン!やはり……」
ヨハン「ベアトお姉ちゃん!
    こんなところで何してたの?その人たちは?」
天使「いやぁ少年、これにはワケがあってだね……」
ヨハン「わあ!すごい、絵画の天使様みたい!」
天使「えっ、いやぁ……(照れる)」
ベアト「やめろヨハン、汚いものを見るんじゃない。
    そんなことより、お前の元に誰か尋ねてこなかったか?」
ヨハン「ううん、誰もきてないよ?」
エレン「おかしいわね……死神さんよりはやくついちゃったのかしら?
    それとも人違い?」

下手から死神が現れる

死神「あ゛ーーーーー?!
   テメェらどうやって来やがった?
   クソッやっぱりあの女狩っとくべきだったかァ……」
ヨハン「ヒッ……だ、誰……?」
エレン「死神さん!」
ベアト「ヨハン、あの天使の元へ行け」

言われた通り天使の後ろに隠れるヨハン

ベアト「死神、鎌を振るいたいのであれば私が受けてたとう」
エレン「ベアトリーセ!?」
死神「なんだ、相手してくれンのか女王様ァ?
   だが生憎俺様は仕事中なんでなァ、
   その坊主狩ったあとでならいくらでもっ……とォ……」

死神が喋っていてもお構いなしに鞭を振るうベアトリーセ

ベアト「まったく、クソ野郎で反吐が出るな。
    お前のような奴にはこの鞭がよく似合う、……ぶちのめす。」
死神「聞く気はないらしいなァ~!」

死神、鎌を構える
2人の間には緊迫した空気が流れる

エレン「ベアトリーセ、戦うつもりなの!?それじゃあ死神さんが……」
ベアト「アイツを鎌から離す」
エレン「どういうこと……?」
ベアト「アイツの本体は鎌なんだろう?
    死神と鎌を引き離せば死神の魂が元に戻るかもしれない」
エレン「なるほど、試してみるしかないわね。
    でも、ベアトリーセ……」
ベアト「私を誰だと思っている、いずれこの国を統べる者だ。」

戦闘モードに入るベアトリーセと死神

死神「ッ……格好つけやがるなァ、女のくせに!
   ア?今は俺様も女か……まぁいいや。
   お前も地獄に連れていってやるよォ!ヒャハハ!」
ベアト「ぐ……ッ」
ヨハン「お姉ちゃーん!」
天使「あっ、おい前に出るな!エレン!」
エレン「ヨハンくん、こっちにいらっしゃい!」

エレン、ヨハンを連れてその場から離れる

死神「!?おいコラァ!逃げんじゃねーぞ!」

死神が一瞬天使達の方へ目を逸らす
その隙に鞭で鎌を振り落とす

天使「もらったぁぁぁ!!」

スライディングで死神が落とした鎌を拾う天使

死神「チッ、このくそアマが……!」
ベアト「おい死神、聞こえているか?
    お前は弱い、だから自我を封じられる。
    目を覚ませ!!」

死神に思いっきり頭突きするベアトリーセ
鈍い音が響く

死神「ぅオァ……!?」
天使「えーっ!頭突きって!
   ベアトちゃんもっと自分の体大切にしてくれー!」
死神「クソっ……ァ……い、いてててて…………じじじんじんするぅ……」
ベアト「フン……目を覚ましたかこの石頭」
死神「いぅぅ……あれ……あなたは……ぼぼ僕は…………」
ベアト「いいかよく聞け、お前がこれから死神を続けたくないならな!
    お前が鎌を手放せないのは呪いのせいなんかじゃない、
    お前自身の弱さのせいだ。
    自分の意思をハッキリと持て、自我を見失うんじゃない!」
死神「ぼ、僕は……」
天使「お前はお前だ!俺が俺であるように、
   お前だって自由に生きられる、自分の力を信じろ!」
死神「ぼ、僕は……!兄さんの代わりなんかじゃない……!!」
天使「うんうん、可愛い女の子に死神は似合わない。
   オレはお前に協力するぜ。
   だから、オレのことを信じて欲しい。
   それだけで呪いを浄化する力も湧いてくるってもんよ!」
死神「天使さん……うぅ……僕、やります!」

遠くから駆け寄ってくるエレン達

エレン「ハァハァ……ベアトリーセ、死神さん、大丈夫なの……?」
ベアト「ヨハン……無事でよかった……」
エレン「ちょっとベアトリーセ、血が出てるじゃない!」
ベアト「大した傷じゃない」
ヨハン「お姉ちゃーん!うわーん」

ヨハンを抱きしめるベアトリーセ

エレン「おっ天使さん、死神さんはどうなったの……?」
天使「今からこの鎌の呪いを浄化する」

死神、鎌を持ち上げる

鎌「クッソ〜最悪な気分だぜ……」
死神「兄さん。」
鎌「ア?お前か……チッ、目の前の獲物に手を出さねェとは
  まだまだ甘ちゃんだなァ……」
死神「兄さん、僕はもうあなたの言いなりにはなりません。」
鎌「ククク、減らず口を叩けるようになったのかァ?兄貴は嬉しいよ。
  じゃあまたオネンネしときな、あとは俺様がやっといてやるよ。」
死神「オネンネするのは兄さんです!」
天使「そうだぞ〜、眠くなるように
   オレがやさしーく浄化マッサージしてやるよ。
   天使の浄化マッサージだぞ〜」
鎌「なんだァ!?さわんじゃねェ!気色悪い!ぐわわ」
天使「ん〜お客さん凝ってますねぇ〜」
鎌「ゆ、ゆるさねェ、絶対殺す……俺様は消えないからな
  ……お前の隙をついて入り込んで、今度は絶対
  元に戻らないようにしてやる……ハハ、ハハハ!」
死神「地獄の長よ、我が兄の魂を捧げます。
   兄さん、どうか安らかな眠りを……」
鎌「ふざけんな……チクショウ……チクショ………ア゛…」

静かになる鎌

エレン「終わったの……?」
死神「……はい!これでもうこの鎌は普通の鎌です!」
天使「普通の鎌でも危ないから振り回しちゃダメだからね。」
死神「天使さん、ありがとうございます!あなたの力がなければ僕は……」
天使「いや、これは君自身の力だよ。」
死神「えへへ…………」
エレン「ねぇ、そういえば死神さんはお名前なんて言うの?」
死神「な、名前ですか?
   あの……恥ずかしいんですが、ロッゼっていいます……」
ベアト「いい名前じゃないか、お前の髪の色のようだ。」
死神「そ、そんな、初めて言われました……!」
エレン「ベアトリーセ!そんなこと言えるようになったのね!」
天使「うんうん、ベアトちゃんも女の子だからな……」

そっとベアトリーセの傷に触れようとする天使

ベアト「触るんじゃない!!(ビンタ)」
天使「いたーい!傷を治そうとしただけなのに!
   でもやっぱりちょっと気持ちいい!」

おずおずとベアトリーセの側にやってくるヨハン

ヨハン「ベ、ベアトお姉ちゃん……」
ベアト「ヨハン……すまなかった、怖い思いをさせてしまった。」
ヨハン「ううん、エレンお姉ちゃんから聞いたよ、
    僕のこと守ってくれようとしたんだよね。
    みんなベアトお姉ちゃんのこと怖いって言うけど、
    僕お姉ちゃんが本当はすごく優しいって知ってるよ。
    さっきも、戦ってるお姉ちゃんすごくかっこよかったよ!」
ベアト「…………」

そっと抱きしめるベアトリーセ
すこし泣いているようにも見える

エレン「ベアトリーセ……よかった……」
天使「うんうん、初めて年頃の女の子らしい顔してるな……」

シーン暗転

エレン「でも結局、青い鳥は見つからなかったわ……」

(シーン:瓦礫の街)

崩れた建物跡に腰掛けるエレン
あとからベアトリーセもやってくる

エレン「ロワゾ・ブルー、あなたは一体どこを旅しているのかしら?」
ベアト「お前は自分の使命とやらを果たす気なのか。」
エレン「そうねぇ。実は私って記憶がないのよ。
    どこで生まれたか、どんな風に過ごしていたのか。」
ベアト「それでよくもまぁ素直に魔女とやらの言うことを聞いたもんだ……
    お前はなかなか変わっているよ。」
エレン「そうなのかもしれないわ。
    でも、ここに来れてよかったと思うの。」
ベアト「何……?」
エレン「ベアトリーセ、最初にあなたの顔を見た時、
    とっても悲しい気持ちでいっぱいになったわ。
    でも今は違う、なんだか清々しい顔をしているもの。」
ベアト「初めてだよ、同年代の女とこうやって語り合ったのは。
    争いの毎日を過ごす中で、私の世界は色を失っていた。
    守りたいもののために戦うことなど、考えたこともなかった……
    今日、久しく見ていなかった青空が見れた気がしたんだ。」
エレン「あなたにとっての幸福、見つけられたのね……」

しばらく間があり、何か考え込んでいる様子のエレン
そして急に立ち上がり

エレン「そうだったんだわ!」
ベアト「なんだ、急に……?」
エレン「おっ天使さんやロッゼにも聞かなきゃ、幸せになれたかどうか!」
ベアト「?」

天使と死神の元にかけていくエレン

エレン「おっ天使さーん、ロッゼー!」
天使「な、なんだ?」
死神「どうしたんですか?」
エレン「ねぇ、今幸せ!?」
天使「新手の宗教勧誘か?俺改宗NGなんだよな。」
エレン「もう、違うわ!私と会えて幸せだったか聞きたいのよ!」
天使「おいおい藪から棒だな、まぁ、楽しかったぜ。
   俺の名前もつけてくれたしな。
   君が俺のことを証明してくれたから、俺も幸せってもんよ。」
死神「ぼ、僕、人生で初めて自由を手に入れられたんです!
   すっごく幸せです。」
エレン「ウフフ、よかった、嬉しいわ……!」
ベアト「……よくわからんが、見つけられたのか。」
エレン「ええ、とっても近くにいたみたい!」

シーン暗転
(シーン:森)

エレン「寂しくなるけれど
    私が住む世界とは違うから、
    あのあとみんなとお別れしたわ。
    でもみんな、青い羽根を持つ"お友達"ですもの。
    いつかまたきっと会えるわ……」

魔女「おや、おかえり。」
エレン「魔女さんったらずるいわ、どうして教えてくれなかったの?」
魔女「おや、何をだい?」
エレン「私が青い鳥だってことよ!」
魔女「オホホホ、気づいたんだねぇ。」
エレン「どうして私に使命を与えたの?」

しばらく間

魔女「幸せを探してみたくなったからかねぇ?」
エレン「もう!いじわるね。
    ウフフ、でも幸せって
    案外近くにあっても気づかないものなのね。」
魔女「オホホ、お前はなかなか面白い子だね。
   そうだ、家で美味しいクッキーを焼いているんだ。
   お前も食べに来るかい?」
エレン「ええ!行かせてもらうわ!」

音楽が流れ、ライトが次第に暗くなり、暗転。
エンディング